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ピースおおさか~大阪城から見る日本の戦争~

ピースおおさかに行ってきた。内容が重すぎて写真を撮る気にならなかったので鳩の画像をお借りした。平和の象徴。


ピースおおさかとは、正式名称を大阪国際平和センターという。平和についての博物館である。
平和と言うとぼんやりしているが、もっと言えば第二次世界大戦次に大阪を襲った「大阪大空襲」にまつわる博物館である。
ここでは大阪大空襲が起こるまでの日本の歴史、銃後の暮らし、そして悲惨な大阪大空襲の実情を紹介している。
大阪城近くに博物館はあるが、なぜここに戦争博物館が建っているかというと、大阪城近辺がもっとも激しく焼夷弾を落とされた場所だからだ。
その理由は後述する。

スロープから入り、展示を見始めるとまず大空襲が起こるまでの日本の歴史が紹介されている。前日譚は日清戦争までさかのぼる。
同時に当時の日本が海外とどんな関係だったのかも図と文章、動画で説明されている。
興味深いのは軍事技術の進歩も平行して語られているところである。日清戦争以後、世界の軍事技術の発展が加速している。歩兵がえっちらおっちら戦っていた時代から、軍艦、戦車などの大型の軍事用の乗り物が開発される。
そして戦闘機も登場する。よく考えれば、戦闘機が生まれなければ大阪大空襲は起こらなかったのだ。政治・外交の視点だけではなく、空襲を可能にする軍事技術が登場してしまったというのも大事な部分かもしれない。
この辺は展示が淡々としていて、得に美化されないのがよかった。

さらに進むと、戦争中の銃後の人々を描いた展示になってくる。銃後とは、前線で戦う人に対して後方支援を行う人々のことだ。しかし総力戦の元、国民のほぼすべてが戦争のために働くことになる。
男性だけではなく女性や学生も戦争に動員され、軍事工場で働いたり、金属を供出したりしていた。
戦況がきな臭くなってくるにつれどんどん掲げられるプロパガンダもおかしくなっていく。当時の市民はこれを当たり前のものとして受け止めたのだろうか。
物資や食料も不足していき、徴兵を伝える赤紙ですら物資の不足でピンク色になったらしい。
それでも日本国民は皇軍としての誇りを保とうとし、作文や日常の手紙のやりとりの中で国粋的な言葉を繰り返す。異様である。
今、ロシアとウクライナの戦争で、ロシアを擁護するロシア人をばかにする向きもあるが、日本の世界大戦時のことを思うと全くばかにする権利はないと思う。
とはいえ当時の人々が愚かというわけでもなく、戦争という極限状態の中で、寝て食べて働いてと生活をしようとすると、過剰に状況に適応してしまうのはわかる気がする。

そしてついに大阪大空襲が発生する。
大阪には大阪砲兵工廠という軍事工場があり、そこがもっとも空襲されたそうだ。そして砲兵工廠は、大阪城のすぐそばにあった。
壁には大空襲を生き延びた人たちが描いた、空襲の
絵がある。美術の訓練を受けた人の作品ではないので、上手くない絵がほとんどだ。しかし被害を受けた当事者だから描ける凄みがある。
展示室内では語り部のビデオが流しっぱなしになっていて、おばあさんのとつとつとした話し声を聞いていると苦しくなってくる。
また、防空壕を再現して中に入ることのできる展示や、プロジェクトマッピングで空襲当時を再現する展示もある。
かなり臨場感のある展示で、このあたりのゾーンは怖くて流し見してしまった。精神的に元気な日とにはもっとじっくり見てほしい。

しかし戦争の話を聞くと、どうしても今のウクライナ戦争を思い出してしまうなあ。
日本は侵略する立場だったが、空襲で大量の民間人が死んでしまい、降伏させるためにそこまでやる必要があったのかとは正直思う。
あと総力戦はやっぱり怖くて、日常の全てが戦争関連のものになるのは嫌だなあと思う。
戦争を回避するために個人に何ができるのかはよくわからないけれど、何はともあれよその国に突然戦争をふっかけるような為政者が出てこないようにすることだろうか。

余談だけど、ピースおおさかはがっつり英語キャプションを用意していて、戦時中の手紙にすら丁寧に英語訳を用意しているのに、外国人の客が少ないのが気になった。ここは大阪城の隣、そして大阪城はインバウンド客だらけである。
侵略された側の国の人は来づらいかもしれないけど……いい展示だと思うのでよその人にも見てほしいな。

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