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自由と緻密さ【清水エスパルス vs ヴィッセル神戸】マッチレビュー J1 第30節 24.September.21

こんにちは、El Gran Equipoです。
遅くなりましたが、今回は、J1 第30節 ヴィッセル神戸戦を振り返ります。

再び今シーズン初の連勝に再び挑んだエスパルス。
特に前半はボールを保持される時間が長いものの、高い個人能力を武器に攻める神戸に決定的な機会をほとんど与えることはありませんでした。
しかし、一つのチャンスで失点すると、個人個人の力強さで築かれた神戸の牙城を崩すことは出来ず、競り負け。

何かと話題の多い神戸ですが、結果が出ているだけの能力とチーム力はあり、簡単な相手ではなかったと感じました。

1.スタメン

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契約上出場が出来ない藤本に代わりに唯人がチアゴの隣に。左サイドハーフにはコロリが復帰しました。
対する神戸は大迫、武藤、イニエスタと強力な個性を持つ選手が前線に並びました。

2.左にかける流動性

前半、エスパルスは神戸にボールを保持される展開が続きました。
神戸は特に左サイドに人数を多く配置することで、イニエスタや大崎を中心に球離れよくボールを繋ぎ、エスパルスのプレスを回避しました。

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神戸はビルドアップの場面で、サンペールを中央に置きつつ、大崎が左に流れることでエスパルス チアゴ、唯人に対して数的優位を作りました。

左サイドには、トップ下のイニエスタも流れてきて、松岡の脇だけでなく、西澤に近い位置でもボールに関わる場面が見られました。

神戸 中坂もそれに合わせてポジションを取り、高い流動性を見せるとともに、フェルマーレンや大崎のパススピードも速かったため、エスパルスは中々ボールを自陣の網で絡めとることが出来ませんでした。

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そのような序盤の流れの中で、前に出たチアゴのプレスをその脇に立っていた大崎で剥がされると、ドリブルに規制のかからないまま、運ばれてしまいます。

ここでも左に落ちたイニエスタと初瀬を経由し、再び西澤と原の間に入ってきた大崎にボールが入ると、原の背後に流れた大迫へ。

エスパルスからすれば、左に人数をかけられても、きちんとゾーンを敷いて中央でやらせないという意図があったと思いますが、一つ一つの対応が後手になってしまった場面でした。

序盤に得点出来たことで、神戸はサイドに人をかけて前進も無理にクロスを挙げずに、ボールを保持することを優先するようになり、エスパルスにとっては難しい失点になってしまいました。

3.下りてくることの弊害

神戸に先制されたものの、時間はたっぷりと残されており、前節のように選手それぞれが相手の脇を取りながらチャンスを作り出したいところでした。
ただ、序盤は中央の選手が中々高い位置を取れずに、相手守備組織の手前でのボール保持に終始していたと感じました。


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エスパルスの攻撃時の良い形では、相手ツートップのプレスに対して、井林、ヴァウド、ホナウド、松岡で3-1の形を作れていたのですが、序盤にはホナウド、松岡の両方が下がり4枚になってしまう場面が見られました。

中央に人が足りないことや、下がって受けたがるタイプであることから、トップ下の唯人も下がってボールを受けに来てしまうため、相手にはめられてしまう形になってしまいました。

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この場面でも唯人が相手中盤手前に下がってしまう動きが気になりました。

チーム全体で上手く立ち位置を取り、エスパルスの後方3枚に制限をかけようと、前に出てきた神戸 武藤の脇に縦パスを入れることに成功しました。
片山が武藤の背後で高い位置を取れたため、コロリを経由してサイドを突破。しかし、中央で構えるのはチアゴのみになってしまい、クロスの中に入る迫力が足りなくなっていたように感じました。

唯人はボールを触りながらリズムを作るタイプだと思うので、下がって受けることが多いのかもしれませんが、より狭く危険なエリアでも個人技で相手を剥がせる力を持っているので、もったいないと感じた場面でした。

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ただ、後半になると上手く大崎の後ろに隠れながら、タイミングを見て間に顔を出し、良い場所でボールを受ける場面が増えたので、今後に期待したいです。

4.固いけどバランスは崩れやすい?

序盤の重さから、徐々に自分たちの形を作れるようになるとエスパルスもサイドを使いながら決定機を作ることが出来ていました。

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神戸はエスパルスのビルドアップに対して、サイドの選手の判断でプレスをかけようとしているように見えました。
上図のように、武藤が出れば、酒井がスライドし、これに合わせて菊池もかなりサイドまで飛び出して守備対応を行います。

一方で、ボランチの2枚、特にサンペールは守備時にカバーリングのポジションを取ることが多くなく、エスパルスからすれば、CBが飛び出した背後のスペースを狙いたいところでした。

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こちらは先ほどと逆サイドでの展開ですが、エスパルスは後方でボールを保持するとホナウドから一気にサイドを変え、逆サイドの原へ。

神戸は中盤の帰陣がそれほど早くなく、原に初瀬、西澤にフェルマーレンがスライドして対応を試みます。
神戸とすれば、フェルマーレンの守備能力できちんと潰すことが想定されているのでしょうが、ここを外したエスパルスは数的同数となった中へグラウンダーのクロス。

完璧な形でしたが、左利きのチアゴには少し難しいシュートだったのかもしれません(これは試合を左右した決定機だったと思いますが)。

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上図はエスパルスがルーズボールを回収し、左サイドからクロスを上げた場面です。ここでも大崎が飛び出した中央をサンペールが埋めきれておらず、唯人にフェルマーレンが飛び出す少しちぐはぐな構図が生まれていました。

初瀬に対して、チアゴと西澤がクロスに入り込む状況になっており、シュートに結び付けたいところでした。

神戸は、あえてルールを設けなすぎないことで選手個人の能力と連動を引き出した攻撃があった一方で、守備組織についても個人の能力に少し偏った場面も見られ、エスパルスは上手くそこを突いて得点したかったところです。

5.簡単に失点しないこと

エスパルスはこれまで積み上げられた守備と、前節うまく行った攻撃の形をきちんと表現しながら戦い、相手より多いシュートを放ちましたが、連勝を飾ることは出来ませんでした。

神戸 三浦監督は、選手にあまり多くのルールを与えず、自由にプレーさせることで、選手個人の能力を引き出そうとしているように感じました。
一方で、守備構築の場面では結構リスクのある対応もあり、そこを上手く突きたかったところでしたが、少しの綻びは個人の力で帳消しにする力のあるチームだったと思います。

エスパルスも選手が揃ってきた中で、こういったチームを組織で上回るところを見せてほしいのですが、まずは残留に目を向けなければなりません。

ただ、この状況でロティーナさんが、べた引きからのカウンターのような形を採用するとは想像できません。
あくまで論理的に、これまで作り上げた土台を日々、ブラッシュアップし、それぞれの対戦相手に対して対策を講じる。

次節の福岡は最近、最も調子のよいチームの一つかもしれません。なんとオリンピック中断空けの8試合で失点が3。複数失点はありません。
逆転勝利が本当に少ない今シーズンのエスパルス。勝ち点を持ち帰るには、相手に先制を許さないことが必須です。

中々ヒリヒリする日々が続きますが、アウェイで勝ち点をもぎ取ってほしいです!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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