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デザインの妙【清水エスパルス vs アビスパ福岡】マッチレビュー J1 第31節 2.October.21

こんにちは、El Gran Equipoです。
遅今回は、J1 第31節 アビスパ福岡戦を振り返ります。

前回対戦は終了間際の失点により勝ち星を取りこぼした福岡のホームに乗り込んだ一戦。

攻守両面で準備してきた形を出すことが出来たのに加え、選手個人の切り替えや戦う姿勢が示され、アウェイで素晴らしい勝利となりました。
残留を争うライバルが軒並み勝ち点を積み上げたため、非常に重要な勝ち点3になったと思います。

1.スタメン

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前節からの変更は2人。前節契約の都合で出場が出来なかった藤本が復帰。そしてカルリーニョスが先発に戻ってきました。
カルリーニョスは、攻撃への顔の出し方だけでなく、トランジションや守備でも積極的な動きを見せてくれました。
対する福岡は普段通りの4-4-2。コンパクトな守備陣形に加え、中央に人を集めて、密集から鋭く前に出る攻撃やそこからのサイドへの展開が特徴です。

2.相手を引き出して裏をつく

非保持の局面では中央を固めつつ、積極的にプレスをかけ、ボール奪取からのカウンターを一つの狙いとしていたであろう福岡。
これに対して、エスパルスは相手のプレスを空転させる仕組みを作ってきました。

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特に右サイドで明確な形が作られており、ビルドアップの局面で、いつもは高い位置を取る原が、あえて低めの位置を取っていました。
(ホナウドが左に落ちる場合には、フラットな4バックのような形に)

これに合わせて、西澤も幅を取りながら、少し低めの位置でボールを受けに行く姿勢を取ります。

ここでの狙いは、これにより引っ張り出される福岡左SB 志知の背後。

このスぺースを常に藤本が狙っており、「誘い出して背後」の形で相手プレスに捕まることを回避し、一気に前にボールを運ぶ場面を作れました。

藤本を警戒し志知が前に出られない状況では、西澤が相手ボランチ脇に立ち、中間ポジションでボールを受ける等、エスパルスは右サイドで上手く優位を作ることが出来ました。

3.きっかけを作る井林の球出し

右サイドでプレス回避の仕組みを作ることで攻撃のリズムを作り、うまく試合に入ることが出来たエスパルス。
一方で、福岡は中央のコンパクトさをきちんと保っており、エスパルスは上手く相手を広げながら、危険なエリアへの侵入をしたいところでした。

その起点としての井林がすごく良かったと感じました。

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エスパルスは、ホナウドか松岡が最終ラインに加わり、後方3枚でボールを持つことが多く、上図の場面では松岡が中央に下りてきました。

左CBの位置に立つ井林には、福岡左SH 金森が外側を切りながらプレスに出てきます。
右サイドと異なり、左サイドではSBの片山が幅と高さを取る役割を与えられており、井林は右足でボールを巻きながらパスを届けました。

幅を取った片山にボールが入ると、すかさず相手ボランチ脇をカルリーニョスが突き、相手最終ラインの手前でボールを受ける場面が何度かあり、チームとしてデザインされたよい組み立てだったと感じました。

相手が消そうとするサイドに敢えてボールを入れる形でしたが、片山が金森の背中に隠れないようなポジションを取れていたことに加え、井林の冷静な配給が光った場面でした。

福岡 サロモンソンが片山を警戒して前に出れば、その背後へボールを流し込みチアゴを走らせるなど、井林は後方でのボール保持に落ち着きをもたらしつつ、機を見た効果的なロングボールを供給していました。

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上図のようにサイドを変えるロングボールを使い相手の陣形を広げようとするプレーも見られました。この時の形を見ると、配給もさることながら、各選手が良い立ち位置を取れたいたことも良かったと思います。

4.サイドの立ち位置の変遷

一方で、福岡の攻撃は序盤から終盤にかけて徐々に前への重心が高まっていくような変遷に。
ただ、いずれも最終的な狙いは、両SHを絞らせ中央を厚くしつつ、相手を密集させたところで逆サイドへ展開するものだったように見えました。
(中央から縦、縦に仕掛ける場面もありました)

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序盤は攻撃⇒守備のリスク管理のためか、サイドバックがそれほど高い位置を取らず、ビルドアップでも志知を含めた3枚でボールを保持しようとしていました。
起点は左サイドで、ボランチの重廣も中間のレーンを上下動し、ボールを引き出す動きを繰り返しました。
ただ、この重廣の動きに対しては松岡がきちんと前にでて対応することが出来ていたと思います。

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そこから、福岡はボランチが最終ラインをサポートすることで、徐々に両サイドバックを押し上げるような方法へと変化させていきます。

この状況でも、エスパルスはツートップのいずれかで福岡 前をマークしつつ、もう片方がCBへ、そして、西澤やカルリーニョスが前に出ることで、相手最終ラインにきちんとプレスをかけて行きました。

ビルドアップを試みる福岡でしたが、エスパルスがコンパクトな陣形を保ちパスコースを消しつつ前に出てくるため、うまく前進することが出来ず、GKまでボールを下げる場面が徐々に増えていきました。

GKに下げた後は、繋ぎ直すことはほとんどなく、中央に密集した選手にロングボールを入れる場面が多かったです。
相手がボールを下げた瞬間に、エスパルスはラインを押し上げ、相手攻撃陣を押し返すとともに、最終ラインと中盤の間を狭くすることで、ボールを拾う、もしくは自陣守備組織の外側に跳ね返すことが出来ていました。

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後半は、序盤に追加点が取れたことが大きな要因だったと思いますが、選手交代も交えながら攻撃的な姿勢を強めた福岡に対して、エスパルスはそれほど前に出ることもなく、きちんと4-4のラインを作りました。

クロスに特徴のある選手が並んだ福岡の右サイドは脅威でしたが、最終的に相手が目指すのは中央であるため、そこをきちんと締めることを徹底した対応が続きました。

5.ボールの集まる場所を埋める

福岡の攻撃時の立ち位置は徐々に変わっていきましたが、サイドから斜めのボールをいれることで、相手守備陣形を崩す狙いは継続してみられました。

ただ、この試合では中央で松岡やホナウドががっちりと相手を潰す場面が多く、福岡の狙った形にきちんと対策が出来ていたように感じました。

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この試合ではボランチの片方は相手ビルドアップの中継点となる中盤の選手をきちんと捕まえつつ、もう片方が中央にどっしりと構え、CBと共に中央を締める対応が目立ちました。

福岡がサイドから斜めのボールを狙うのですが、パスの受け手には常にホナウドが立っており、身体をぶつけてボールを奪ったり、自分の脇にボールを通された場合でもすかさずプレスバックすることで攻撃の芽を摘むことが出来ていました。

福岡の攻撃も特徴的ではありましたが、CBと中盤で中央を締めて、危険なエリアでプレーさせない形がこれからも出来ていけば、強固な守備が磨かれていくだろうと感じました。

6.再び中断期間を迎え、最終盤へ

好調な福岡が最後にはかなり前がかりになり、攻撃を仕掛けてきたこともあり、5バッグで試合をクローズ。とても貴重な勝ち点3を奪いました。
(ジョンマリ、強かった・・)

日増しに一試合の重要性は高まっていますが、この試合でも選手の強い気持ちが見られ、熱い戦いになったと思います。
藤本やカルリーニョスの守備から攻撃、攻撃から守備の切り替えは非常に早く、1点目の藤本には攻守のつなぎ目のない滑らかさを感じました。

この試合のメンバーはすごく良い戦いを見せてくれましたが、中断期間にチーム内でどのような競争が生まれるかも楽しみです(練習見学も始まるのですね!)。

これからも落とせない試合が続きますが、中位の相手が中心ということもあり、勝てば上に近づけるというポジティブな気持ちで見ていきたいです。
(そのためには早く勝ち点40が欲しい。。)

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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