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両監督の綱引きと対話【清水エスパルス vs 大分トリニータ】マッチレビュー J1 第21節 4.July.21

こんにちは、El Gran Equipoです。
今回は第21節大分トリニータ戦を振り返りたいと思います。

下位グループ相手とは言え、アウェー2連戦で勝ち点4を持ち帰ったエスパルス。29年目のバースデーに花を添えるだけでなく、今後の浮上に向けてもきっちり叩いておきたい試合でした。
対する大分にとっても、悪い流れを断ち切るためアウェーでも勝ち点が欲しいところ。欠場選手も多く、前回の対戦時と少し戦い方が変わったようにも見えましたが、片野坂監督率いるチームは一筋縄ではいかない相手でした。

1.スタメン

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エスパルスは4-4-2で試合に入りました。3-4-2-1との併用が徐々に板についてきた感があります。中山、ディサロに代わり、奥井とカルリーニョスが入りました。
個人的には奥井が先発すると4-4-2になる可能性が高いのかなと感じます(すぐにそんなことはなかったという例が出てきそうですが)。
対する大分は、小出、ペレイラ、出場停止の三竿に代わり、井上、上夷、下田が先発。ボールの扱いに長けた下田は前線と最終ラインのリンクマンになりました。

2.中はスカスカでも大丈夫

前回対戦で、大分最終ラインから中盤を飛ばしたロングボールに苦しめられた経緯からか、エスパルスは大分最終ラインへのプレスをかける態勢を整えてきました。

【前回対戦のおさらい】


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試合が始まってみると、大分はプレス回避の方法として長沢へのロングボールを時々使うものの、基本的には最終ラインからボールを繋ぐ戦いを選択してきました(最終ラインの人選が変わったことも影響しているかもしれません)。

大分はボールを持つとボランチが一枚(ここでは長谷川)が最終ラインのに下りることで、上夷をサイドバックのような位置に押し上げます。
これにより、ウイングバックの香川を前線へ押し上げ、エスパルスの右サイドを押し込む意図があったように思います。

対するエスパルスはツートップとカルリーニョスで、大分のビルドアップ隊3枚へプレスをかけつつ、上夷の位置に合わせて、片山がポジションを取るという対応を敷きました。

奥井は大分ウイングバックの井上にピン止めされ、それほど前に出られないので、カルリーニョスは自分の左側へのパスを消しながらプレスをかけるのが特徴的でした。

片山は上夷を基準として位置を取る、カルリーニョスは前に出る。ということで、中盤は竹内と宮本2人が懸命にスライドしてカバーするという状態に。しかし、大分 下田はチアゴが消し、大分 町田はサイドに流れることもあり、大分が中央を経由しての攻撃を行わなかったため、中盤が2枚であっても中央を割られるというのは1,2回と数える程度でした。

今節までの戦いでは、中盤4枚がロープで繋がれるがごとく均一な距離感を保ち、スペースを埋める守備を行ってきましたが、今節はサイドを中心とした大分の攻撃に合わせて、人を置いたロティーナさんの新たな引き出しが見れたように思います。

3.後半に見せたロティーナさんと片野坂さんの戦い

①ハーフタイムでの片野坂監督の修正
前半は上述のように守備で相手の良さを消すことが出来ていたエスパルスでしたが、後半は策士 片野坂監督が修正を施してきました。
後半からボランチを下ろしたビルドアップをやめて、薄かった中盤に厚みを持たせてきた
のです。

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エスパルスの前線3枚からすれば、プレスをかける相手は3枚と変わりないのですが、背中で消さないといけない相手ボランチの枚数が1枚から2枚に増えることになります。
そこで、カルリーニョス、チアゴ、 唯人の3枚が近づいて背中で相手ボランチ2枚を消すのですが、これによりカルリーニョスが刀根にプレッシャーをかける際の角度が変わってしまったように思います。

前半のように外側を消しながらプレスをかけるのが難しくなり、大分 刀根と井上の間に下りてくる町田にパスを通されてしまうようになりました。

下りた町田には竹内が出ていくこともありましたが、あまり長い距離を飛び出していくわけにもいかず、カルリーニョスが町田も追いかけないといけない状況が続き、守備面での負担は徐々に大きくなったように思います。

②エスパルス得点後の片野坂監督の修正

後半も辛抱強く試合を進めていた両者でしたが、エスパルスの念願の得点により、片野坂監督が再び動きます。4-4-2へと布陣を変更し、サイドバックで大外のレーンを取り、サイドハーフがその内側のレーンでギャップを突くという狙いを取ってきました。

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エスパルスは4-4-2でのブロック形成へと守り方を修正するのですが、片山の立ち位置がそれまでの時間帯と同様に、幅を取ったを香川を意識した場所になっていました。
4-4-2でのブロック形成であれば、左サイドにボールがある際に、逆サイドの片山は宮本の右脇のスペースを消す必要がありますが、ここが埋めきれていない状態となっていました。

たった一回のピンチでしたが、上図のようにそのスペースを相手ボランチとサイドハーフに使われて、シュートまで持っていかれました。
試合終盤という時間帯もあったと思いますが、危険な位置に侵入されたこの場面を受けて、今度はロティーナさんが一手を施します。

③ロティーナさんの試合を終わらせる修正

エスパルスは、ボランチの脇に生じていたスペースを閉じるために中盤を3枚に変更、幅と高さを取ってくる相手サイドバックに蓋をし、クロス対応を厚くするために最終ラインを5枚に変更しました。

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中盤を4枚にし、5-4-1で守りに舵を切るという選択もあったと思いますが、ツートップを維持し、相手へのプレスとカウンターの一刺しを残したところには、ただ守るだけでないという心意気が感じられました。大分からしても攻撃に全振りしにくくなるというけん制になっていたと思います。
(最終盤のコーナーもゴールを狙いに行けと指示していましたね)

試合を通じて、主導権を握るための両監督の綱引き、戦術のぶつけ合いが見られた面白い戦いになりました。

4.一歩踏み出すかの方針と選択

これまで大分の攻撃とそれに対するエスパルスの対応を紹介しましたが、エスパルスの攻撃はどうだったのでしょうか。

①立田のロングフィードで磨きのかかる右サイドの攻撃
この試合でも、唯人、片山、原で構成される右サイドを中心に攻撃が展開されました。

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右サイドで高い位置を取る片山へ、正確なロングボールを供給する立田も素晴らしく、片山にボールが渡れば、原が的確なオーバーラップでサポートし、鋭いクロスを供給していました。
縦に走りながら、ボールを縦にこすり上げるようにして、強く回転をかけたボールを蹴れる原からのクロスによる攻撃は強力な武器になっていますね。
(市川の面影を見ました。小さい頃、真似して練習していたなあ…)

②左サイドにも厚みをもたらし、押し込みたい
一方で、左サイドはカルリーニョスの個人の能力に依存した攻撃になっていたように感じました。
この試合では、ビルドアップで奥井は立田やヴァウドと同じ高さを取っていました。右サイドで原が高い位置を取るので、バランスを取るという目的であれば問題ないことだと思います。
一方で、これに合わせてボランチが2枚とも最終ラインに近い位置でボールを受けようとしていたのが気になりました。

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カルリーニョスは常に大分 下田の脇に立っていたのですが、奥井にボールが入ると、大分ウイングバックの井上が前に出てくるので、井上の背後に流れて上手くボールを引き出していました。

ここでボールを受けることで、大分 センターバックの刀根を引き出すことが出来ていたのですが、その後のサポートが少し物足りなく、右サイドのようにコンビネーションで相手を崩すという場面がありませんでした。

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大分は町田が少し前にでてプレスをかける場面もありましたが、基本的に5-4-1を作り、構える守備を敷いていたように思います。これによりボールを持てば、エスパルスが押し込む場面も作れていました。

しかし、ボランチ2枚が相手守備組織の手前で、最終ラインからボールを受けて、ボールを返す場面が多かったのは気になりました。
ボールを奪われた際のリスク管理はもちろん必要ですが、上図のように竹内が相手ボランチ脇の位置へ一つ押し上げるような、一歩踏み出す攻撃的な立ち位置が欲しかったと思います(ここは考え方が分かれそうなところですが)。

実際に、試合開始早々は竹内が上図のような位置に立っており、カルリーニョスを一つ前のポジションに押し上げることが出来ていました。

この試合も竹内、宮本の非保持でのスペースを消す位置取り、攻撃⇒守備の切り替え時の対応等、守備面での貢献は素晴らしかったと思います。
一方で、今後さらに高みを目指すにあたっては攻撃面での迫力に期待したいと思います。

5.一歩先を目指せる位置には来れた。

この3試合でシステム変更等を通じて、相手に対応した戦い方を徐々に身に着け、着実に勝ち点を積み上げることが出来ました。

攻撃では、原がエウシーニョとはまた違う色を見せ、唯人もチームの推進力となり欠かせない存在となっており、楽しみが増しています。
最終ラインの跳ね返す力やスペースの埋め方も柔軟かつ強固なものになってきていると思います。

前回対戦ではホームで3失点を喫し完敗した相手である徳島。
苦しんでいるチームながら、難しい相手であることに変わりありません。

しかし、同じく苦しみながらも成長してきたエスパルスが、思い出の地、ポカリスエットスタジアムで勝ち切るところを見たいです!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

レビューを書き始めてから1年が経ったみたいです。拙い文章にお付き合いいただき、いつもありがとうございます!


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