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左右非対称の攻防【清水エスパルス vs サガン鳥栖】マッチレビュー J1 第28節 11.September.21

お久しぶりです!Gran El Equipoです。
今回は、J1 第28節 サガン鳥栖戦を振り返ります。

前節、上位の名古屋相手に良い内容でアウェイで勝ち点を持ち帰ったエスパルス。
中断期間を経て迎えた今節も、左右それぞれで特徴的な立ち位置による非常に整備された戦いを見せ、強力な相手である鳥栖を苦しめました。
厳しい判定ながら、スーパーなフリーキックに沈み、悔しい敗戦となりましたが、更なる積み上げが見られた試合であったと思います。

1.スタメン

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今節のサプライズは、なんと言っても山原君の先発起用
序盤こそ寄せが遅れてクロスを上げられる場面はありましたが、クレバーなプレーで左サイドに落ち着きをもたらしてくれました。
大学との兼ね合いがあるみたいですが、ついに左サイドバックのピースがはまった、といっても過言ではない選手だと感じました。
対する鳥栖は3-5-2の形。鳥栖の中ではWBではなく、ウイングハーフと呼ばれているように両翼が積極的に高い位置を取るのが特徴です。
古巣対戦となった白崎やソッコもチームの中心的存在でしたね。

2.前に出る3枚と要所を消す藤本の背中

GKも使いながら、後方からボールを繋ぎ、サイドを経由して相手守備陣を崩す強力な攻撃力をもった鳥栖。
これに対して、エスパルスはボールの中継点となるキーマンの仙頭と樋口を消しながら前に出ていくという特徴的かつ合理的な守備を敷きました。

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鳥栖の攻撃も左右非対称で、左CBの大畑がSBのように左サイドに張り、高い位置を取り、WBの中野がこれにより押し上げられ、中間ポジションを取ってきます。
両サイドが高く張り出した中で、ソッコとエドゥアルド、GKの最後方には樋口や仙頭が顔を出し、ボールの中継点となり、攻撃を展開する狙いです。

これに対して、エスパルスは鳥栖の狙うサイドに人を置きつつ、中継点を消す守備配置を取りました。
相手が人数をかける右サイドでは片山と原がきちんとスペースを埋める一方で、左サイドではコロリが外側からソッコにアプローチする形を取ります。

また、中継点としての樋口、仙頭は、チアゴが中央へ、藤本が少し右にずれて消しにかかります。
特に仙頭はボールを受けるべく、ポジションを微調整するのですが、藤本も細かく首を振り、仙頭の位置を確認しパスを入れさせませんでした。

さらに、エドゥアルドにボールが入れば、背中で仙頭へのパスコースを消しながらプレスに出ていき、鳥栖の最終ラインにも圧力をかけており、鳥栖の自由を奪う狙いが見られました。
後半にはエドゥアルドにプレスに出た足そのままに、朴一圭にも出ていく場面もあり、守備面でも賢さと献身的な働きを継続して見せてくれました。
藤本が前に飛び出した後には松岡が連動して押し上げていた点も良かったと思います。

3.飲水タイムを使った抜かりない修正

対する鳥栖もさすがの金監督といった修正を見せました。
エスパルスの効果的な守備により、ビルドアップに少しぎこちなさを感じたのか、中盤の立ち位置に変化を加えました。

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これまで左側で中継点を作ろうとしていた仙頭が中央よりに立つようになり、樋口はソッコの脇に下りる形を取り、エスパルスのプレスをずらす策を講じていました。
仙頭が立っていたエリアにはWBの中野が下り、樋口がビルドアップに加わることで、白崎はより高い位置を取るようになりました。
左で作る形を右に持ってきたようになり、右側で押し込む形も増えたように感じました。
対するエスパルスも意図的かは分かりませんが、藤本がチアゴと入れ替わり、ポジションを動かすようになった樋口のケアに回るなど、柔軟な対応を見せていました。
相手の形が変わっても守備陣形は引き続きコンパクトで、大きなチャンスを作らせなかった点は良かったと思います。

4.右の縦関係で押し込む

エスパルスの攻撃はサイドハーフに配置された片山のパワーを一つのポイントに右サイドから押し込んでいこうとする意図が見られました。

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鳥栖は守備の局面では、5-3-2の形を取っていましたが、ツートップが最終ラインをけん制しつつ、サイドバックにボールが渡れば、WBがグッと押し上げプレスに加わります。
対するエスパルスは片山がトップと同じくらいの高さを取り、開いてボールを受けようとする場面が多かったです。これには、鳥栖の左CB 大畑をサイドにつり出す狙いがあったものと思います。

大畑をつり出すことで、最終ラインはエドゥアルド、ソッコ、飯野とチアゴ、藤本、コロリの同数となり、どこかで相手を剥がせれば数的優位でゴールに向かうことが出来ます。
実際に原から片山へボールが渡った後、藤本や内側に入った原とのコンビネーションで上手く相手をつり出すような場面もありました。

鳥栖も大畑のところで相手に自由にさせないという考えを強く持ち、片山のところに強くアタックしていており、この部分は重要なポイントになっていました。

また、この試合では下図のようにゴールキックを片山に蹴りこむ場面が多く、片山と中野のミスマッチを利用して片山に競り勝たせ、こぼれを拾って前進するという狙いが見られました。

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片山の競った後のこぼれ球を中々うまくつなぐことが出来ませんでしたが、相手チームとのかみ合わせの中で有利なポジションを見極め、突いていくという意図のある右サイドの構築でした。

5.左サイドの構図と山原君のデビュー戦

エスパルスは左サイドでもコロリに高い位置を取らせました。こちらでは鳥栖が右サイドと異なる形で守備を行ったことで、山原君を経由したクリーンな前進が出来ていました。

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左サイドでは、高い位置を取るコロリをWBの飯野が見る場面が多く、サイドバックには中盤から白崎がプレスに出てくることが多かったです。

鳥栖は守備の局面で樋口や仙頭があまり大きく動かなかったため、白崎が飛び出した背後でホナウドがフリーになる場面が頻繁にありました。

また、中盤からサイドバックに出てくるプレスは走る距離も長くなり、山原はボールを受けた後に少し時間を与えられる構図になりました。
山原自身もボールの扱いに長け、且つ相手を見て冷静に判断することが出来たため、白崎のプレスにはほとんど捕まることなくプレーしていました。

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上図の場面でも、内側から出てきた白崎をドリブルで外し、樋口の脇に入った藤本に斜めのパスを入れました。
山原は、右利きですが、縦にもボールを運ぶことが出来、相手に捕まらず効果的なボールを供給しており、これからの試合でも見たいと感じたデビュー戦でした。

6.足りないのは得点と勝ち点

両チームともに左右それぞれで特徴的な位置取りを設定し、拮抗した攻防を繰り広げましたが、最後に得点を多く奪ったのは鳥栖。
どんな形でも勝利を手繰り寄せられる力強さが上位にいるチームということなのかも知れません。
ただ、チアゴの同点弾もチームの狙いを選手が体現した中でチアゴにシュートを振りぬく時間が与えられたわけですし、それ以外にもあと一つのパスが通れば決定的な場面になっていたと言える崩しもありました。


(こちらは本レビューで振り返った左サイドの構造から右での崩しのおさらいのようなシーン)

前回の勝利から長い長い時間が経っていますが、そろそろ勝つ土壌は出来てきている。そう信じた中で、次節は超重要な仙台戦。

残留争いのライバルから勝ち点をもぎ取り、来年J1で上位にのし上がるためにも必ず勝ち切ってほしいです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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