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感情を科学する「共感(力)」

今回は、感情を科学するEQ理論から「共感(力)」についてお届けします。

よく「共感しよう」とか「共感力を高めよう」とか言われますが、共感(力)とは何か、共感(力)のしくみなどを具体的に教えてもらうこともなく漠然と「共感(力)」を捉えている方も多いと思います。

EQの活用として「共感(力)」の活用は具体的に感情が役立つことを感じさせてくれます。そのため、Self Science でも重要な要素と考えていますので、共感(力)について論理的なアプローチを試みたいと思います。

「共感(力)」とは

共感(力)と一言で言っても心理学の研究ではときに分類して考えることがあります。

身体的共感情動的共感認知的共感

の3つがあると考えられています。

身体的共感は、例えば、スマホをしながら歩いてるいる人が柱に激しくぶつかる瞬間をあなたが目撃したときに「うわ、痛い!」と言葉が走るといったような経験をしたことはないでしょうか。
このように、人の身体的な「痛み」がわかったり、自分の経験と重なって痛みを感じるといったことです。

情動的共感は、情動的非影響性とも言われ、簡単に言ってしまえば、感情移入のしやすさです。対象となる誰かと感情が同化するようなことで、辛い経験をしている人の話を聞いていると自分のことのように感じ取り、自分も辛くなり一緒に泣いたりする。といったことです。そっと寄り添ったり、一緒に笑ったり、一緒に泣いたりといった行動に現れます。

認知的共感は、共感的理解とも言われ、客観的に他者視点で想像力を働かせて理解しようとしたり、感情を推察することです。自分の感情とは切り離し他者の気持ちを客観的に理解すると言い換えられます。客観的に事実と感情を分けて捉え問題解決を図る場合などに役立ちます。

これら3つの共感(力)は、誰にでも備わっていると考えられていますが、その働きには個人差があると考えられています。

例えば、情動的共感が強いと感情移入しやすいために、客観的に感情を察する認知的共感が働きにくかったり、逆に、客観的に感情を察する認知的共感が強いと客観性が伴うことが多いために、感情移入はあまりせず情動的共感が弱い傾向にあるといったことが考えられます。

どちらが良い悪いではなく、いずれもメリットとデメリットがあります。例えば、
身体的共感や情動的共感が働き過ぎると他者の感情に左右され自分が意図せず感情が大きく揺さぶられたりするために、共感疲労が生じます。
認知的共感が働き過ぎると客観的かつ分析的に他者の感情を推察しようとするために、一歩引いたような印象を与え、寄り添ってくれない冷たい人という印象を与えることがあります。

私たち人間は、共感(力)を使うことで他者の経験を疑似体験することができ、自分が直接経験していないことも経験したかのように学習することができます。共感(力)があることで、他者と繋がり、社会を形成し、世界と繋がることができます。

「共感」のしくみ

共感(力)が、どのようにして働くのか?脳科学がその疑問を解き明かしています。共感(力)のしくみを解き明かす上で最も貢献したのが「ミラーニューロン」の発見です。

ミラーニューロンは、モノマネ脳細胞とも言われ、例えば、私が右手を上げるとそれを見ている皆さんの脳内では、右手を上げる筋肉を動かす脳細胞(ニューロン)が活性します。また同様に、私が眉間に皺を寄せるとそれを見ている皆さんの脳内では眉間に皺を寄せる筋肉を動かす脳細胞が活性します。このように、実際に右手を動かさなくても眉間に皺を寄せなくても脳細胞は活動することが解明されています。私たちはこの能力を使って他者の表情や仕草、行動を認知することで共感(力)が働かせています。

ミラーニューロンによる共感(力)は、私たちが意識するか否かに関わらず常に働いている非認知領域の能力です。他者の感情を認知する力を高めるためには、自分を科学する「自己認識」でお伝えしたように、自分の感情に目を向け、自分の感情の自己認識力を高めることが重要です。

感じとったものをどう解釈して活かすかは、感情の自己認識力、想像力(イマジネーション)、内省によって経験を智慧にする力が問われます。
内省に関しても自分を科学する「自己認識」で触れているので参考にしてみてください。

ちなみに、「共感力がある(ない)」という表現よりは「全ての人に共感力はある。ただし活用できているか、そうでないかは個人差がある」と言った方が適切かもしれません。

「共感(力)」が働く「場の力」

ここでは、結婚式を例にとってお話したいと思います。
親しい友人や知人の結婚式に参列者として呼ばれたとします。ちょっと冷静に考えると結婚式は主役の新郎新婦の幸せ振りを見るために、ご祝儀という出費を伴い、場合によって遠方であれば交通費もかかります。ほぼ1日の時間を費やします。ロジカルに考えれば呼ばれた側にとっては別に幸せなことではありません(笑)

ですが、いざ結婚式が始まると・・・

幸せに満ち溢れた新郎新婦を中心に、喜ばしくもあり、どこか寂しい気持ちを伴うご両親を超えて幸せが会場いっぱいに広がります。
これは、新郎新婦から参列者へミラーニューロンを介して幸せな感情が伝播する共感(力)場の力を示す代表的な例だと思います。

結婚式の場合は「結婚式は幸せな場である」という文化的な概念や、新郎新婦という場に最も影響を与える主役が幸せ感情に満たされている相乗効果があるため際立った特別なケースであることを付け加えておきます。

場の力は、科学的に見ればミラーニューロンによる共感(力)によって感情が伝播することで生じます。そして場の力を変化させる波紋の中心は、その場に最も影響力を持つ人ということになります。

そして、「共感」のしくみで触れたように私たちは、ミラーニューロンを通じて他者の感情を伴う経験や体験を自分のことのように感じることができます。ストーリーテリングに代表されるようにむかし話のような物語を通じて倫理観や私たちにとって本当に大切なことは何かを学ぶことができるのも共感(力)の働きによるものです。

11月17日(水)19:30 からショートセミナーを開催予定です。こちらの記事の内容を含めて参加者と理解を深めます。
https://www.thdesignjp.com/events/eq-sel-school

記 TH design 代表 Chief Well-being Officer 三森朋宏
シックスセカンズ アドバンスEQファシリテーター
シックスセカンズジャパン データ分析センターフェロー

セルフサイエンスを広める活動のサポートをお願いします。サポートは、セルフサイエンスプログラムを日本全国に広める活動費として使わせていただきます。