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レコード工場を見てきた

11月11日、川崎は鶴見にある東洋化成株式会社の敷地内で行われた工場開放イベント「OPEN FACTORY」へ行ってきました。東洋化成さんはいわゆる音楽用アナログレコードの製造を1959年から担ってきた会社で、この鶴見工場は一時は日本最後、アジア唯一とも言われた大規模なレコード工場でした。近頃は、レコード人気再興を受けて若手の社員さんが「レコードの日」イベントなどとともに業界を盛り上げていて、NHKの工場見学番組『探検ファクトリー』など、メディアへの露出も多くなっているそう。初めての開催となる今回のオープンファクトリーイベントも、そうした広報活動の一環であるようです。わたしは少し前に東洋化成さんの特設サイトで知り、楽しみにしていました。

イベントは、工場敷地内に各地のレコード店などを招いた青空即売会、DJブースとちょっとした出店、それに先着順のレコードプレス工場見学ツアーからなるとのこと。何と言っても工場見学に参加したかったので、当日はオープンの11時には間に合うように出かけました。工場へはJR鶴見駅で埋め立て地をゆく鶴見線へ乗り換えて、鶴見小野駅で下車。駅からは遊歩道づたいに行くんだけど、歩道の半ばからもう入場待機列ができている!

オープン後はスムースに会場内の工場見学の待機列に並ぶことができたものの、おそらく予想以上の人出にスタッフの社員さんも驚いている様子でした。客層はもろレコード世代のおじさまおばさまから若い音楽ファンまで様々で、まさに老若男女といったところ。あいにくの曇り空でこの時期にしては風も冷たいなか、工場の物珍しさと人の熱気とで寒さも耐えられた。

レコード即売会エリア
左奥が工場入口にあたる玄関
かっこいいパンフレット

見学エリアはごく一部のため、小グループに分けての案内になっていました。40分ほど待ったあと、最初に通されたのはエントランス脇に作られた展示エリア。よほどのレコードファンでも普通はまずお目にかかることのない「ラッカー盤」や「マスター」「マザー」「スタンパー」の現物を見る。

まず初めに、何も刻まれていないラッカー盤、要するにブランクのレコードにカッティング職人が溝を刻んでゆき、それをもとに幾度も凹凸を繰り返して最終的なプレス用の型が出来上がる。展示エリアの周囲には、製造プロセスを分かりやすく示したパネルが展示してありました。

次いで案内されたのがいよいよプレス工場。細い通路を歩いて薄暗い建物の奥へと入っていくと、ほどなく無骨なプレス機がいくつも鎮座する空間へ。機材はライトアップされていて、撮影もOKとのことでした。

レコードの原料の展示も。奥の洗面器に入っているプラスチックの粒を熱してやわらかく塊状にしたものを、紙のラベルで挟んで上下から大質量でギュッとプレスする。はみ出したフチの部分を円形にカットして、1枚ずつ出来上がっていく。動画も撮りました。

今回作っていたのは小さい7インチのレコード。折角なら見慣れた12インチのプレス機も見たかったなという思いはありつつも、だいたい同じ要領なのだろうというイメージはできました。機械の音もそんなに爆音というほどでもなく、社員さんの説明の声がふつうに聞き取れるレベルでした。

プレス機ルームの見学はこの部分だけで、5分ほどの短い時間ではありましたが、貴重な体験。12時前に見学を終えて外に出ると、なおも続々とお客さんが入場してきていて、特に出店エリアは賑わっていました。ディスクユニオンやHMVといった大手レコ屋が各店から集めてきた中古盤から、小さい出展者さんの自作レコードやグッズなど。松武秀樹さんのLogic Systemなども出店されていましたね。

テクニクスが出していたDJ車!

ひとしきり見て回って、満足。レコードというメディアに親しむようになって個人的には20年以上になりますが、まさか工場に入れる機会があるとは思わなかった。東洋化成の社員さんと出展者さん、そしてレコードファンによる手作りのお祭りという感じで、とてもいい雰囲気でした。人が集まり過ぎてしまって午後の見学が一部人数制限で打ち切りになったりと、なかなか大変そうではありましたが、来年以降もまた続いてほしいなと思います。次回があればレコード好きそうな友達も連れて行きたい。

レコード、敷居が高そうな趣味と思われているかもしれないけれど全然そんなことはなく、音楽配信が主流になってしまったいま、かえって入門のハードルの高さはCDと変わらなくなったと思います。プレイヤーは数千円から1万円台で買えるようなもので十分だし、そこそこ音のいいスピーカーやBluetooth機能がついていたりもするし。レコード自体だって、新譜も中古も買えるところはたくさんあるし、なんならブックオフとかも最近やたら中古レコードの棚を用意している店舗が増えてきたし。レコードならではの音はもちろん、物理的な存在感、とりわけ大好きな音楽を質量のあるモノとして所有している感覚は唯一無二のものがありますね。

レコードに関する話は、過去にも何度か書きました。


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