グローバルで議論するジェンダー平等。 エプソンが参加したニューヨーク国連本部の会議で学んだこと。
2023年3月15日、ニューヨークの国連本部でジェンダー平等円卓会議が開催されました。
世界各国から主にサステナビリティやダイバーシティ担当の上級管理職が53名集まり「女性のエンパワーメント原則(WEPs)浸透に果たす男性アライの役割に関する実務家円卓会議」と題し、議論が行われました。日本からは4社(*1)より4名が参加しています。
今回、セイコーエプソンを代表して参加したDE&I戦略推進部 部長 根村絵美子が、参加の経緯や会議で得られたことなどを語ります。
世界がジェンダー平等に向かう中で、
エプソンも積極的な姿勢を示す
清水:参加の経緯を教えていただけますでしょうか。
根村:参加のきっかけは、ニューヨークで行われる円卓会議について、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンに問い合わせしたことです。日本からどのような企業が参加されるか知りたかったのですが、エプソンは男性育児休職などに積極的に取り組んでいる、とのことで、参加企業に推薦いただきました。
ジェンダーの格差に関する調査によれば、日本のジェンダー平等は146カ国中125位。世界的に見ても、男女間に大きな格差があります。世界がジェンダー平等に向かう中で、日本のジェンダーギャップ解消には、個別の企業の努力だけでは限界があります。すぐに追いつくことは難しいですし、他社や他国での成功事例がそのまま生かせないことも多いですが、こうした会議への参加を通して、新たな視点を得ることも大切です。世界20カ国から参加した今回の会議に、日本から4社も参加したこと、それは日本の企業においてもジェンダー平等への取り組みが本格化したことの表れにも感じます。
また、エプソンがダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)に取り組む姿勢を積極的に世界に示すことも大切だと考えました。DE&IやSDGsに関心の高い若年層に、当社のことを知ってもらう貴重な機会となるからです。
清水:なるほど。
円卓会議はどのような形態だったのでしょうか。
根村:6、7人ごとに一つの円卓に座りました。各円卓に男性が必ず1、2人加わるようになっており、男性も含めて議論できる環境となっていました
ジェンダー平等を進めるにあたって
「男性側が感じる脅威」
清水:ジェンダー平等には男性の参画が不可欠という主催者の意思を感じますね。差し支えない範囲でどのようなトピックが出たのか、お話しいただけますでしょうか。
根村:私自身の気づきとなり、かつ、とても印象的だったのは、ジェンダー平等を進めるにあたって「男性側が感じる脅威」というキーワード。私自身、これまで性別関係なく仕事をさせていただいていたこともあり、恥ずかしながら、さほど認識していなかった視点でした。それだけに男性にとってジェンダー平等は「脅威だ」という言葉を聞いたときは、はたと膝を打ちました。
さまざまな国において、女性活躍というと「女性優遇」と捉えられるようです。その時男性側は、これまで優遇されていたのではないかと気づき、同じ土俵で戦っても勝てるという思いと、もしかしたら勝てないかもしれないという複雑な思いから脅威を感じることがあるとのこと。同様の意見は男性数人から出されており、ダイバーシティを進める上での障壁の一つかもしれないと気づかされました。
清水:深いですね。
女性活躍か、ジェンダー平等か
根村:女性活躍を進めていくことに対して脅威を持たれている、という点はとても学びでした。
この「女性活躍」という言葉。とても違和感があって、社内でも「ジェンダー平等」という表現に変えてきています。
女性活躍か、ジェンダー平等か、といった議論も円卓会議では行われました。女性活躍というと「現行制度の中で女性がどう活躍するかを検討する」がベースにある。しかし、ジェンダー平等は「今の枠組みを超えて、これまでの不平等や、違和感を是正していくことにある」と議論されていて、私自身、すごくしっくりきて、今までの違和感が言葉として整理されました。
清水:さまざまな立場の方との意見交換を通じ、いっそう考えが深まった、ということでしょうか。とても有意義な議論がされたようですね。ほかにもエピソードをお聞かせください。
男性を「巻き込む」ことの本当の意味とは?
根村:DE&Iを推進する上で違和感のある言葉は、ほかにもあります。
それは「男性の巻き込み」というフレーズ。巻き込むというと、相手は受動的であり、巻き込む側からすると他責感がありませんか? この日頃から感じることを参加者に共有しつつ、議論を進めていく中で「巻き込む」ことの本当の意味を理解しました。
まだまだジェンダー平等に興味がない人、また既にジェンダー平等な状態になっていると考える人も多い中で、そう考える人たちをマインドセットするだけでは、それは何も変わらないという現実です。とくにマジョリティ側の行動を変化させるために、あえて「巻き込む」ところが非常に大切なのだ、という考え方は、腑に落ちるところがありました。
清水:なるほどー。巻き込まれて行動していくうちに、意識も変わっていく側面もありそうですね。
誤解していませんか?ダイバーシティのこと
根村:男性の巻き込みの話から、会議の議題であった男性アライ(*2)の役割の話に移りました。
アライとは「本来活躍できるのにできていない人は誰か、そして、それがなぜ起こっているのかに気づき、共に前進することにある」との結論に至りました。
清水:なるほど。アライというと、「何となく応援する人」とのイメージを持つ人がいますので、DE&Iを推進する上では、言葉を正しく捉えることが大切ですね。
根村:捉え方といえば、ダイバーシティ推進は、今までが全て間違っていて、誤りを正すことと解釈されるケースがとても多いです。DE&Iを担当するまで、私もそのように感じていた部分もあったように思います。ですが、決して全否定することと同義ではないことを、さまざまな施策を検討したり、当事者の方の話を聞いたりする中で、現在も学んでいます。
全ての人がより活躍したり、より会社の中で存在しやすくなったりするのが大きな目的で、そのために、どのような行動変容が必要なのか。エプソンに合った人事制度や施策は何か? 世の中の流れを踏まえた上で、現状の理解のもとに判断し、推進していくことだと自分なりに整理しています。
この考え方は、ジェンダー平等においてはもちろんのこと、年代などの属性によらず、また既に活躍している人に対してもベースとなる考え方であると、会議への参加を通して理解を深めました。
清水:学びが多く、有意義な円卓会議だったと感じました。私も気づかされる部分がありました。
根村さん、本日はありがとうございました!