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最近聴いてよかった音楽 23/5

最近聴いてよかった音楽たちです。新旧混合。


Sounds For The Office / コディ

「オフィスのための」という題名、ナンセンスな日本語の名前、いかにもフリー素材なジャケ写、出しているレーベルもVaporwave系とどう考えてもMall Soft的なアンビエントが来ると思わせといてのラウンジ・ジャズである。裏切られた。

しかし妙にムーディーなサックス捌きである。こんなのが流れているオフィスでは集中して作業できる気がしない。Sound For The Officeとか言っているが、実際はラグジュアリー&スイートなホテルが似合うのでは?

音楽自体はジャズな一方、音響処理はド派手にリヴァーブをかけているので非常にVaporwaveっぽい。コティ氏はVaporwaveの感性を持ったジャズマンなのだろうか。


Undercurrent / Khaki

こちらはご存知と言ってしまってよいはず!現在のインディーシーンを牽引する存在であり、私のサークルの直接の先輩・Khakiの新曲。
新曲とは言っているが、実は曲自体は元々あった。Longという別プロジェクトで録音されていた曲で、当時からサークル内では大傑作と言われていた。

Khakiバージョンではアドリブ部をジャジーなインプロにしており、よりいぶし銀のアレンジに仕上がっている。

そしてこの曲は私と大変因縁のある曲である。サンクラに上がっていたこの曲を聴いて「東京の音楽サークルにはこんな人がごろごろいるのか……」と思い、バンドを止めてブログ活動に移行したからだ。実際これを20歳前後で作り上げた中塩氏の才能は恐るべきものである。


Ocean Bar / Naoto Kawate

ギターアンビエント。2分程度の曲がいくつか収められている。

アコースティック・ギターによって紡がれる子守歌のような優しいメロディがノスタルジックな気分にさせてくれる。Naoto Kawate氏はこの手の作品を短期間に大量に出しており、そのどれもが秀作。この量から察するに即興的に弾いたものをブラッシュアップして出していると思われる。

ただものではない、と思って調べたところMaher Shalal Hash Bazや工藤玲子等でギターを弾いている人物らしい。そんな人の作品を投げ銭で買えるBandcampに敬礼。


White Paws / Matt Christensen, Brian Harding

ここでもう一つギターアンビエントを。Matt Christensenはマグリットを思わせる不思議な世界観で話題になったゲーム・Superliminalのサントラを担当した作曲家。Superliminalでは流麗なジャズピアノを披露しているが、本職はギタリストである。

今作ではうって変わってギターとベースによるアンビエントを聴かせてくれるが、これが絶品。夏の暑く、ムシムシした空気感とそんな中に吹く風のような清涼感が堪らない。この雰囲気はCanのFuture Daysを思い出す。これからの時期にお世話になりそうなアルバム筆頭だ。


Introducing… MAMA GUITAR / ママ・ギタァ

90年代終わりのガールズバンドのファースト。ユニオンで何気なく拾ったCDだったが非常にハイセンスなアルバムだった。

ジャケを見てわかる通り60年代初期のロック・ポップスあたりからもろに影響を受けた音楽性だが、程よく力が抜けた演奏とポップさは唯一無二。オールディーズ感はもちろん、90年代後半の時代感も確かに今に伝えてくれるアルバムだ。

ちなみに坂本慎太郎と縁が深いバンドらしく、ゆら帝・坂本ソロのコーラスをやったりzeloneから3rdアルバムを出したりしている。3rdアルバムでは坂本慎太郎がベースを弾いている。


impressioni / Matsuoka Hiroaki, Stefano Guzzetti

イタリア・サルデーニャ島のピアニストと日本人作曲家のコラボ作。松岡宏明氏については姫路おでんの歌を作曲したくらいしか情報が無かった。なんだその歌は。

内容は正直よくあるピアノ・アンビエントなのだが、ハイをばっさりとカットしている音像がかなり新鮮。この抜けの悪い音はエレクトロのような趣さえ思える。実際ピアニストの方はエレクトロ方面でも活躍されているらしく、その影響がこちらにも出たと思われる。


So Swell / Jon Cleary

グラミー受賞経験もあるアメリカ人R&Bミュージシャンによるニューオリンズジャズ。

これは2020年に企画された「ザ・ニューオリンズ・コレクション」という四枚のアルバムからの一枚らしいが、これが2020年のアルバムと聞いたときビックリした。往年のニューオリンズ・ジャズそのものだったからだ。

日本でも古い大衆音楽を当時の技法で録音した大土蔵録音とかがあるが、それのアメリカバージョンと言った趣。歌ものも入っているが、最近の音楽では滅多に聴けないドクター・ジョンのような渋い声が楽しめる。

やや音がぺラいのが若干気になるが、まあ、多少は目をつむりましょう。


ゆひ/ゆゆゆ

歌ものフォークのEP。全部で三曲入っている。

非常にローファイになったLampと形容できそうな、柔らかな音像の中で繰り広げられる男女ボーカルが心地よい。また何よりメロディーが非常に良い。これは本人たちも大事にしているらしく、Bandcampのリリースノートには『「美しいメロディ」がしっかりと歌われているか』を大事にしているとあった。たった三曲のEPだが、非常に満足度の高い一枚。

残念なのは、サブスクにないせいかあまり聴かれていないこと。このアルバムはより多くのリスナーに届けられるべきもののように感じる。


Season: A letter to the future / Spencer Doran

現代ニューエイジブームの火付け役・Visible Cloaksの片割れによるゲームサントラ。ちなみに彼はLight in the Atticによる環境音楽のコンピも担当している。

流石その一線の人なだけあって、非常に質の高いアンビエントに仕上がっている。素晴らしいのは多様なアンビエントを網羅している点。ニューエイジあり、バレアリックあり、ピアノ曲ありとアンビエントの広大さを思う存分活用している。それでいて統一感を失っていないのも凄まじい。アンビエント入門にうってつけである。

ゲーム内容は自転車で旅するものだそうだが、様々な場所を訪れる中でこのサントラが流れる様を想像するとゲームに更なる深みを与えてくれそうな気配がプンプンする。是非やってみたい所存。


Fjord / DYL

オランダのハウスのレーベルから出ていた作品。ジャケから分かるようにフロア向きの音楽をよく出すレーベルなのだが、今作はやや異色のアンビエント・ハウスに仕上がっている。

ミニマルな上物に四つうちがズンズンと載っていく様はマニュエル・ゲッチング meets NEU!と言った趣。やはりオランダはドイツに近いからこのようなものが出てくるのだろうか。普段から聴くのはもちろん、フロアで流しても楽しめそうな気配がする良作だ。


その他雑多な諸々


・ceroの新譜、滅茶苦茶良いのに誰も正しく言語化できない説

・有名どころの新譜で言ったら、Sufjan Stevensの新作もなかなか良かった。

・Corneliusの新譜も楽しみですね。

・山下達郎のLP、買い損ねたので悔しかったがリプレスされることに。転売屋ざまあ

・ちなみにオリコンアルバムランキングのTOP10にFor Youが入ったらしい。中学時代に放送委員会でMusic Bookを流したら「ダサい!!」と言われていたのが嘘のよう。

・冥丁の傑作1stが再発。滅茶苦茶嬉しい。

・いつの間にか溶けだしたガラス箱がサブスクに。細野晴臣も加藤和彦も演奏に参加している前衛フォークの傑作。

・ジャパグレの雄Kensoもサブスクに。早く教えて。

・非常にファンキーなグーチョキパーで♪の曲

・大滝詠一を絞った汁

・ちなみに、巷に売っているChill Outと言う飲み物は吉村弘の出汁である。

・編集長をやっているWater Walkというメディアがあるのですが、記事が不足しているのでライター希望者を募集中です。記事が出なかった場合こんな記事が出てくるので……

・昨日は「モップスを指揮する武満徹」に爆笑していた

・偶然ミドリカワ書房を数年ぶりに聴いたら、あれ?こんなによかったっけ??となった。

・院のゼミが全く上手くいかなくて泣きそう

・色々あってうたものしかきけない精神状態。よいうたものを僕にください。


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