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最近聴いて良かった音楽 23/7

ここ最近聴いて良かった音楽です。新旧混合。

※今回何故だか有名アルバムが多くなりました。

Matt Evans "Soft Science"

Kankyo Recordsでしれっと売られていた品。Iannis Xenakisに影響を受けているアンビエント作家だそうで、なるほど音の配置にシステマチックなものを感じる。各楽器もXenakis譲りの賑やかさがあり、案外ノイズ好きにもお勧めできそうな雰囲気さえある。

また動だけではなく、ドローンアンビエント的な"静"の曲も印象的。ただその曲でも後ろでパーカッションが暴れまわっている。理知的かと思わせといて、かなり自由闊達なアルバムである。


斉藤由貴 "LOVE"

その手の人には有名な、斉藤由貴のアンビエント歌謡アルバム。山口美央子が作曲を手掛けた楽曲があることからもその内容が分かるハズ。

字余り気味でささやくようなボーカルは一部の人に刺さりそう。一種ASMR的感覚さえある。
オーケストレーションもそんなボーカルに寄り添う最低限度の楽器構成にとどめられていながら配置に相当拘っており、後の時代のCorneliusやrei harakamiにも通じるセンスを感じる。1991年にここまで……と驚愕してしまった。90年代音楽界のバブルを渋谷系以外でも感じる好例。


槇原敬之 "CICADA"

90年代異常J-POPとしてLOVEと共に挙げられがちなこちら。このアルバムの発表直後に逮捕されてしまったそうで、それ故ファンでも影が薄いアルバムらしい。

槇原敬之って「もう恋なんてしない」でしょ~と思っていたら火傷する。ブラジル音楽をはじめとしたラテンをベースにしたポップスに仕上がっており、「極東サンバ」へのJ-POPからの回答のような趣。サンプリングやインダストリアル風味を感じさせる打ち込みが入る曲もあり、坂本龍一フォロワーとしての槇原敬之も存分に感じさせる。
J-POPにしては内省・実験的なこの内容はCTIを彷彿とさせるジャケ写がよく物語っている。


螺旋階段 "螺旋階段"

世界初のノイズバンドこと非常階段の前身バンドの一つ。Amazonの紹介では「ロック、フォーク、シャンソンなど、様々な音楽がミックスされたサウンド」となっている。なら頭士奈緒樹ソロ的な雰囲気なのかなと思ったら、手数は少なくノイジーではないものの重いサウンド。録音の悪さも相まって、アングラ感を非常階段以上に感じさせる内容である。
個人的には”Love Will Make a Better You”など70年代初頭の邦サイケロックを思い出す。実際そこと地続きのようにも思える。


Cornelius ”夢中夢”

Corneliusの新譜。前作に引き続き歌ものということもあって、Corneliusに前衛を求める多くの音楽ファンの期待値は低かったように思う。タイトルが意識高い系の居酒屋みたいとも言われていたし。

しかし蓋を開けてみれば皆さまご存知の通り会心のホームランであった。丁寧に言葉を紡ぎつつ、歌と一体になることでしか成しえない穏やかな前衛が繰り広げられる。山本精一の言うところの「うたもの」に通じるところがある。
最大瞬間風速で言えば前作に分があるが、アルバム全体としてみればここ数年のCorneliusで間違いなく一番の出来。


Ylia "Ame Agaru"

μ-ziqのアルバムが今年話題になったBalmatからのリリース。祖父との死別、恋人との別れなど様々な別離を経験した後に作ったアルバムらしい。

アンビエントチックなシンセによるドローンの上でギターやピアノなどのアコースティック楽器が口数少なく演奏されていく。全体的に内省的な空気が漂い破滅的とも思える曲が入っていたりするなど、雨あがるという希望がありそうな名を冠しているものの内容はかなり深刻である。
しかしこのBalmatの妙に可愛らしいジャケが物語るように一筋の光はありそうな気がする、そんなアルバム。


Moriah Plaza "Moriah Plaza"

アラブのブラジルバンドのデビュー作。中東のブラジル音楽は意外と多く、古くはジャズロックバンドSheshetなんかがボサノヴァをやっている。暑い地域は通じ合うものがあるのだろうか。
基本的にはボサノヴァが主体なのだが、モード感がアラビア音楽を感じさせるユニークなアルバムになっている。その為架空の南国の音楽と言った印象を受ける。ブラジルとはいっても、「未来世紀ブラジル」的なユートピアのイデアとしてのブラジルを表現した音楽と言った方が適切かもしれない。

何はともあれ、ディスクユニオンが「激良」と言っているのであるから間違いない。


12 Rods "If We Stayed Alive"

アメリカのインディーバンド21年ぶりの新作。通称「アメリカのレディオヘッド」と言われていたバンドだそうだ。またドラマーは「アンテナ」の頃のくるりのドラマーらしい。

「エヴァ―グリーン」をテーマにしているそうで、アルバム全編を通して爽やかなギターとコードが鳴り響く。メロも人懐っこく、新曲なのに懐かしさを感じさせる。音の抜けが悪い感じはちょっとCANのFuture Daysを思い出す。今年のインディーロックでも指折りの傑作である。さすがベテランと言ったところ。
ただ下に貼った曲のイントロがZARDそっくりなのが気になる。



CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN "tradition"

新人バンドのデビュー作。夕焼け楽団や細野晴臣などの70年代邦楽のトロピカル音楽を現代R&B通過後の視点でやってみせたような、懐かしくも新しい音楽が揃っている。なんでもキューバに旅行した際に見た音楽に衝撃を受けたのが始まりだそうで、確かにアフロキューバン。これが自分とほぼ変わらない年齢の人々が作っていると思うと衝撃的である。
プロフィールにはほとんど嘘しか書いておらず、その点も現代っ子。僕も嘘大好き。
(※追記註:あまりに嘘っぽかったのでこう書いたが、結構本当らしい。すみません。)

ちなみにこのバンド、細野晴臣のお孫さんがいることでも話題になっていた。が、ほとんどの曲で作曲を担当しているシバサキなる人物もかなり気になる。何者??


Cut Worms "Cut Worms"

ブルックリン在住SSWの2nd。
基本的には昨今流行のベッドルームポップなのだが、大胆に50~60年代のオールディーズを取り入れているのが大きな特徴。メロやコードは完全に往年のアメリカンポップスなのに、使っている楽器や音像が現代インディーロックなので混乱する。ウォールオブサウンドをインディーロックのリヴァーブとして再解釈しているように感じられる。

あまり肩に力を入れずに聴ける脱力系の音楽でもあり、これからのお盆休みのおともにしたい音楽である。


Xtalline:001

FFでもあるディガー・門脇氏とシューゲイザーの専門家Aro氏両名が主宰のレーベル第一弾。門脇氏が常々言っていたシューゲイザーの一般化である「遠泳音楽」を集めたコンピレーションだが、衿、Parannoul、アメリカ民謡研究会など音楽ファンにとって嬉しい名前がそろい踏みしている。この人たちが集まって作れば悪いものになるはずがない。

個人的に好きだったのはthe same streetの"Vesuva"。この曲はMagic:the Gatheringのカード名から取られており、それを知っていると解釈がかなり広がる。


Rei Wada "円盤と便箋" 

宮崎在住SSWの1st。最小限のアレンジで終始オーセンティックなボサノヴァを楽しめる良質なアルバムである。
WaveやCorcovadoなど名曲のカバーが三つも入っておりオリジナル曲の印象を薄めてしまうのではと思ってしまうが、それらに負けないほどの強度のある骨太なボサノヴァをオリジナル曲でも展開する。声質も相まって、Lampを思い出すのは僕だけじゃないはず。

ちなみに彼はYolkというバンドにも所属しており、そちらも上質なブラジリアン。



その他雑記


・初期P-Modelがサブスク解禁だそうです。平沢ソロ早く~


・節操のないパロディでお馴染み・ジャパニーズプログレの雄こと金属恵比寿の名盤「ハリガネムシ」もサブスク解禁。ただしサブスクでは曲が減っている。


・日本のテクノ随一の名盤PALOMATIC "trill"もサブスク解禁。最近どんどんサブスクに出てくる。


・ドイツグラモフォンの前衛音楽シリーズ・avant-gardeがCDで再発、しかも安い。レコードが高騰し、デジタルでも一部しか聴けなかったので嬉しい。


・ウリチパン郡もレコードで再発。


・最近葉巻にハマっている。タバコよりお香に近い。あるいはシーシャをもっとタバコっぽくした感じ。草っぽさとココア的な甘さと苦み。

・ただし円安のせいで高い。レコードも同じ憂き目に遭っているのでどうにかしてほしい。

・葉巻と言えばキューバ、故にキューバ音楽を最近よく聴く。Buena Vista Social Clubの映画も初めて見た。

・こういう老練した格好良さは、大学生やそのくらいの若者ばかりの周囲の音楽家やブロガーではまあ見ない。この雰囲気を纏いたいものである。

・ちなみにキューバ産葉巻はコロナやらハリケーンやらで世界中で在庫が枯渇している。最悪な時期にハマってしまった。


・友人とバンドを進める計画があったが、フロントマンから連絡が来ないので一向に進まない……

・ちなみにその友人とPodcastをやる予定です。近々0回目が出ます。


・最近暇しているので、東京付近にいらっしゃる方はお茶にでも誘ってください。どなたでも喜びます。

サポートしていただくとマーマイトやサルミアッキなどを買えます。