見出し画像

耳を澄ませて

体調を崩してベッドの上で布団をかぶり過ごしている時間。色々と予定が変わってしまい焦りを感じる。静かな部屋では、普段はあまり気に留めることのない音が聞こえてくる。
鳥の声がピチクパチクピチクパチクと早口言葉みたいに流れていく。
結構な数の群れなのかな?
喉が渇かないのかな?
ずいぶん長い間鳴き続けているので、単調な音に慣れてくる頃には眠ってしまった。

こういう自然の中の流れるような音っていいなと思う。強すぎない風や雨の音、川のせせらぎや波の音、鳥のさえずり、夏の終わりを知らせてくれる虫の声。季節を感じたり、ふと立ち止まり穏やかな気分になったり。
ドカドカと入ってくる雑音が多いのは仕方ないけれど、慌ただしい日々のどこかで、時々うさぎみたいになってじっと耳を澄ませたら、まだ聞いたことのない心地いい音に出会うチャンスもあるのかな。

止めることのできない時間の流れに寄り添うように、色々な音が自分の中に刻まれていることを思い出した。
海で拾った貝殻に耳を当てた時に聞いたあの音。「海の底の方の音がする!」なんて喜んでいた私は、周囲に心配されるほど真っ黒に日焼けした、海とプールが大好きな子供だった。
8月のいつ頃からか、夕方になると虫の声が聞こえてきて、猛暑の中「もう秋だよ」という言葉が口をつくのは毎年のことだ。

もうすぐ4月になる。
体調はまだスッキリとはいかないけれど、いつもより耳を澄ませて本格的な春のスタートを迎えたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?