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「情報システム部門」は「情報サービス部門」へ転換せよ! 第3弾 ~事業部門と経営者は何をすべきか?~

事業部門と情報システム部門の対立構造が問題になっている――そんな論調の記事を目にすることは少なくありません。この対立構造は“システム”と“サービス”をバラバラに捉えていることから生じていると、DIG2ネクスト代表の鈴木寿夫は語ります。このような課題を解消するためにも「『情報システム部門』は『情報サービス部門』になるべき」と説く鈴木の真意に迫るべく、インタビューを実施。その内容をお届けします。

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「情報サービス部門」はビジネスの価値を最大化する

――ここまで、「情報システム部門」の視点から、「情報サービス部門」の変わることの意義と、それによって起こる前向きな変化についてお聞きしました。一方、事業部門や経営層も変わる必要があるとすれば、それはどのような点でしょうか?

鈴木 やはり大前提として、組織全体の意識変革がなければ、「情報サービス部門」に変わってもそれだけでは意味がありません。事業部門、経営層、いずれも足並みをそろえて変わっていく必要があります。

そのためには、事業部門と経営層、それぞれがこの変化によって得られるメリットをお話しする必要がありますね。

「情報サービス部門」に変わることによって、事業部門はより自分たちのニーズに合ったものを、同じ社内の部門から“サービス”として受けられるようになります。

「情報サービス部門」から提供される“サービス”は、事業部門が携わるビジネスの価値を最大化することに寄与します。

また、なんでもかんでもスクラッチで開発することが「情報サービス部門」の役割ではない、ということは理解してもらう必要があります。事業部門は既存のサービスのメニューの中から、事業に必要なものを選んで利用できるようになるのが理想です。外部の「サービスプロバイダ」に依頼するのと、内部の「情報サービス部門」に依頼するのと、差異がない状態とは、こういうことです。


――事業部門の現場社員は、今から何を始めるべきでしょうか。

鈴木 業務を変えないで“システム”をカスタマイズして導入するという考え方でいると、コストが極めて高額になります。意識を変えなければなりません。カスタマイズしないで“サービス”を導入するというように。

例えば給与計算のために外部のSaaSを利用しているとします。給与計算する方は、何も言わずとも新しい税制に対応したサービスを利用可能になります。しかも、改修費用を追加で請求されることなく、サブスクリプション費用の範囲内で、直ぐに利用可能となるのです。最近でいえば、定額減税などですね。

同じように、会社の内部にある「情報サービス部門」も、外部のSaaSと同等のサービスレベルのものを提供できるようにするか、またはそれが困難であれば外部のSaaSに切り替えた上で、既存の他のサービスとのサービスインテグレーション(サービス統合)に注力し、自らは自組織にしかできない独自のサービスに注力するよう、サービス提供のポートフォリオを組み替えればいいはずです。

――そうなれば、事業部門と「情報サービス部門」の連携が加速していきそうです。

鈴木 企業によっては、社内の「情報システム部門」を下請けのように見ていたりする事業部門もあります。両部門の連携が加速し、互いに価値を高め合うようになるためには、「情報サービス部門」は「サービスを提供する部門」または「事業のために様々なサービスを統合管理する部門」であると、事業部門側も認識することが前提です。

以前から必要性を訴えられてきたリモートワークは、コロナ過でようやく浸透しました。人々の意識を変えるには何らかのインパクトが必要です。部門名を変えることは、少しでもインパクトを起こすためです。

今はサービスの時代、サービスによって競争優位性を強化する時代です。モノづくりの会社も、サービスの提供なしには生き残ることが難しくなってきています。だからこそ、サービスマネジメントを学ぶ意義は根本的に大きいのです。“モノ+サービス”の“サービス”が、十分にマネジメントされていない状態ではよろしくない。「失われた30年」からの脱却には、もはやサービスマネジメントしかないといっても、過言ではありません。そして、サービスマネジメントを推進する上では、事業部門と「情報サービス部門」の連携が不可欠です。


コストを抑えるよりも、コスト以上のリターンを

――「情報サービス部門」と事業部門の連携の上では、双方を統括する経営層の役割が改めて大きくなりますね。

鈴木 そうですね。そして、経営層にその役割を果たしてもらうためには「情報サービス部門」の存在が企業にとって強みになることを、経営層にもっと理解してもらう必要がありますね。それはこれからも続けていきます。

「IT」という言葉には伝票処理だとか、内部を管理するバックエンドシステムのイメージがついてまわります。経営層は特に、「IT」にかかるコストにばかり意識が向いてしまいます。しかし、サービスインテグレーターとしての「情報サービス部門」の役割からは、コストを上回るリターンが生まれます

――ビジネスの価値により直接的に結びつくことが「情報サービス部門」に属する社員も実感できれば、モチベーションのアップにもつながりそうです。

鈴木 その通りです。事業部門と「情報サービス部門」双方が互いによい関係を築き、相互に価値を高め合っていけるようになれば、会社全体のエンゲージメントは間違いなく高まります

先ほど、一部の事業部門には現行の「情報システム部門」に対して「下請け」という意識があるとお話ししました。経営層にもそうした認識がはびこってはいないでしょうか。繰り返しになりますが「情報サービス部門」の役割は、社内におけるサービスインテグレーターです。

外部のサービスプロバイダと同等か、それ以上の価値を創出できる存在が自社に生まれること、そしてこの変革により自社のプレゼンスが様々な形で向上していくことを、経営層には期待してもらいたいと思います。