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「情報システム部門」は「情報サービス部門」へ転換せよ! 第2弾 ~情報サービス部門が果たすべき役割~

事業部門と情報システム部門の対立構造が問題になっている――そんな論調の記事を目にすることは少なくありません。この対立構造は“システム”と“サービス”をバラバラに捉えていることから生じていると、DIG2ネクスト代表の鈴木寿夫は語ります。このような課題を解消するためにも「『情報システム部門』は『情報サービス部門』になるべき」と説く鈴木の真意に迫るべく、インタビューを実施。その内容をお届けします。

※前回の記事はこちら


「LINE」は“システム”か?

――情報システム部門には、サービスへの提供に向き合い、ビジネスに対する貢献を意識し続けることが必要で、だからこそ「情報サービス部門」に変わるべきというお話がありました。それでは具体的に、「情報サービス部門」は企業の中でどのような役割を担うのでしょうか。

鈴木 まず、「情報システム部門」としてのこれまでの役割が無くなるわけではありません。すなわち、例えば社内システムの保守など、無くてはならない業務は継続してあります。

ただしその保守ひとつとっても、目の前の“システム”の保守でなく、あくまでその先にある“サービス”の保守を「情報サービス部門」としては意識する必要があります。そのシステムが関係する“サービス”のユーザー、社内なら業務部門の視点から、保守や管理を考えないといけません。こうしたサービスマネジメントの観点が無いままだと、結果、事業部門にとって使いにくい“サービス”が出来上がってしまいます。

コミュニケーションアプリの「LINE」を指して、これは“システム”だという人はいませんよね。「LINE」を普段から使うユーザーにとって、その内部の仕組みは特に意識されていません。エンドユーザー向けのITシステムは、運用側にもかなり「サービス」への意識は進んでいるだろうと思います。

そういう環境ではない、例えば企業の社内ITの運用を担う「情報システム部門」の方々などは、なかなか“サービス”への意識を強く持つことは難しい面もあると思います。従来のやり方を踏襲せざるを得なかったり、新しい知見に触れる機会が少なかったり、また現状では表面的にでも問題なく回っているように見えていれば、変わろうという動機づけに乏しいのも事実だと思います。

ただ、事業部門の視点に立つと、彼らは“サービス”を利用する、という感覚が当たり前なのです。それは外部のSaaSソリューションを業務で日々使っているからです。例えば「LINE」の代わりに「Slack」などでもいいでしょう。彼らは「Slack」を“システム”として普段は意識しません。そういう“サービス”として使っています。

外部企業は「サービスプロバイダ」。一方、内部にあるのは「情報システム部門」。これは歪ではないでしょうか?

「情報サービス部門」に変わることによって、外部の「サービスプロバイダ」と同格になることが必要です。時に、外部の「サービスプロバイダ」と、同等に渡り合える存在になるということ。

「情報サービス部門」の役割に換言すると、社内におけるサービスインテグレーターである、といってしまっていいかもしれません。

事業部門が直接バラバラに“サービス”を外部から調達するよりも、内部の「情報サービス部門」に相談した方が、事業部門のニーズに合った要件のもとに、しっかり管理してくれますよ、というメッセージを社内に発信できるようになれば、分かりやすく環境は変わるでしょう。事業部門がむやみに外部のサービスプロバイダとやり取りすることで生じるITガバナンスの不安、「シャドーIT」の乱立などを防ぐことにもなります。

ユーザーに“システム”を意識させない、例えば「LINE」などのような“サービス”を、「情報サービス部門」が事業部門に提供できるようになること。これは双方にとって有益な変化であるといえます。


ビジネスへの貢献を、より分かりやすく

――「情報サービス部門」に変わることによって、所属する現場の社員にはどのような変化が起きると思いますか。

鈴木 私が「情報サービス部門」に変えるべき、とお話しするのは、やはり「情報システム部門」という名称だとどうしても、所属する社員の視野は“システム”に狭まると思うからです。「情報サービス部門」とすることで、システム「だけ」にとどまらない、より広い視野を持つことが自然に促されます。会社のビジネスに貢献できる部門であるとして、社員がより高いモチベーションを持つきっかけにもなり得るでしょう。

同じく、“サービス”に携わり、ビジネスに貢献する部門として外からも見られますので、社内外におけるプレゼンスの向上にもつながります。

先日、当社DIG2ネクストの教育プログラムを受講されている方から、「今は“焦り”があります」とお話しされました。アウトソーシングで顧客企業のシステム運用保守に携わっているという方でした。それは、今後“サービス”の観点を持たなければ、行き詰まってしまうのではないかという焦りです。

この先も長く第一線で活躍するためにも、より高い価値を提供できるスキルと意識を持たないといけない。「情報サービス部門」になら、そのための環境が生まれる可能性があります。


自らの価値は、もっと高められる

――「情報サービス部門」に変わるために、「情報システム部門」の現場社員は今、何をすべきでしょうか。

鈴木 ビジネスに対する理解無くして“サービス”の提供はできません。ビジネスと“サービス”をつなげるノウハウとして、ITSM(ITサービスマネジメント)を学んでいくことが必要です。

ITSMは、「システムマネジメント」ではありません。デザイン思考でサービスの品質を管理し、ユーザー体験を向上し、カスタマージャーニーを意識しながら改善を続けていく……こうした考え方をものにしていきましょう。

ITSMは独学でも習得できなくはないかもしれません。ただ、その本質的なことを理解しながら進めたいのであれば、やはり教育プログラムを受講し、体系的に学んでいく方が大きな果実を得られます。


――「情報システム部門」の現場社員に向けたメッセージをお願いいたします。

鈴木 自分たちの価値を、もっともっと高めていきましょう。そうしていくことで、事業部門との信頼関係が強固なものになります。互いに、頼りになると思われる関係になっていけるはずです。

思考の軸を“システム”から“サービス”に移すことで、新たな可能性が開けるはずです。社内でよい関係を築き、今まで以上にビジネスへの貢献が見える形で実現するようになります。ぜひ、モチベーションを高く持って、前向きな変化を起こしていただければと思います。

(次回は「事業部門と経営者は何をすべきか?」、議論していきます!)