ITサービスマネジメント(ITSM)は、変革の土台になる Glicoグループのサービスマネジメントについて話を聞く【4/7】
江栄情報システム様(大阪市)は、Glicoグループ様の情報システム部門としてグループ全体のITシステムを担当しています。来年に基幹業務システムの刷新を控え、その土台作りのために全社規模でITサービスマネジメント(ITSM)を導入しました。「ITIL®4」という最新の考え方で「ServiceNow」を導入した事例はまだ珍しく、同社が経験したストーリーには大きな価値があります。2人のご担当者と、DIG2ネクスト代表の鈴木寿夫が対談しました。
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鈴木 サービスカタログができたら、CSDMに準じて各サービスがどのインフラにつながっているかをモデル化していきます。これにより、あるアプリケーションに障害が出るとどのサービスに影響があり、どの業務に影響するのか、そうしたつながりが可視化されていきます。
サービスカタログがしっかりとあって、それがCSDMでどうつながっていくのか。そこがちゃんとできている企業は、実はまだほとんどありません。Glicoグループは、それをすべて実装しました。これは日本企業としては珍しく、称賛されるべき偉業です。ServiceNow社も、喉から手が出るほど欲しい事例なのではないかと思います。Glicoグループが経験したCSDMのストーリーには、大きな価値があります。
ServiceNowに問い合わせても、細かい使い方を理解している人は多くありません。私もモデルをどう実装すべきか悩みました。小泉さんはソフトウェアに関する経験やスキルも高いですから、ITツールを自分の手でカスタマイズできてしまいます。考えたことをすぐに実装し、短期間で実証できてしまうのは凄いと感じました。私もずいぶん助けられました。そういう関係性の中で、今回のプロジェクトがうまくいったのだろうと思います。
小泉様 特にロジスティクスの業務は複雑で、サービスカタログを何度書き直したかわかりません。
ここまで来て、ようやく「記録する仕組みができた」という段階です。しかし、記録をすることは目的ではなく手段です。そこで蓄積されていくデータを見ながら、ITSMを改善するサイクルを回していくことが重要です。
基幹業務システムのスコープは、Glicoグループの全業務だとお話ししました。会社の部門でいうと、人事、総務、経理、開発、設計、生産、物流など、あらゆる業務が含まれるわけです。しかし、最近の基幹業務システムのプロバイダーは、「経理モジュール」や「物流モジュール」といった言い方をしません。その代わりに、例えば「Procurement to Pay(調達から支払いまで)」とか「Order to Cash(受注から回収まで)」などと表現します。会社の組織的に見ると、1つのプロセスに複数の部門が関わっています。
つまり、ITシステムでは業務プロセスを流れで捉え、1つのプラットフォームとして見ていかなければならないのです。なのに、情報システム部の担当者が業務ごとに縦割りでは、時代遅れと言わざるを得ません。バリューチェーンの上流から下流まで、流れで捉えられるようにするには、「ITIL ®4」と「SIAM™️」の考え方が必要です。それがないと「私の責任範囲はここまで。あとは知りません」となってしまいます。
山下様 今回、私たちは基幹業務システムを「SAP HANA」に刷新するタイミングでServiceNowを大々的に導入しました。しかし、ITSMとは本来、基幹システムの刷新とは関係なく必要なものです。経営者はよく「変革したい」と言いますが、まず土台がしっかりしていないと何もできません。その土台が、ITSMなのです。
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