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ITSM講師の立ち話 ~自動車産業の未来は、サービスマネジメントにあり?~

「ePlugOne」には、DIG2ネクスト代表を務める鈴木寿夫の他に、専任講師がもう1名在籍しています。彼の名は金田幹也。ITSM(ITサービスマネジメント)の専門家である2人は普段一体どのような話をしているのか? 今回は、とある日の2人の雑談に耳を傾けてみました。
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自動車産業はなぜ、サービスマネジメントを検討していない(ように見えるの)か?

金田 今年のはじめ、ソニーとホンダが共同で設立したソニー・ホンダモビリティのEVのプロトタイプが、「CES2023」で公開されましたね。
 
鈴木 私はドライビングの楽しさを満喫できる内燃エンジン車派だから、本当はあまりEVには興味が沸かないのが正直なところだけどね(笑)。
 
金田 生成AIを使った対話型システムの開発で、同社が米マイクロソフトと提携するという報道もありました。けど、現状ではどのようなサービスが実現するかまでは、私たちの耳にまだ入ってこないので、なんとも言い難いですね。
 
鈴木 ただ、プロトタイプを早めに公開しているのも、協業アイデアなどのフィードバックを呼び込むためだというから、具体的にどのようなことを実現するかはこれからなのかもしれない。EVや自動運転など、自動車の未来に関するトピックはいろいろだけど、ITSMが関係するのはMaaS(Mobility as a Service)の領域になるね。
 
金田 MaaSはスマートシティと一体的に考えていく領域ですから、サービスマネジメントの構築が欠かせませんね。どういったサービスメニューで、どういうふうにサービスをマネジメントするかという部分。
 
鈴木 だけど不思議なのは、いま自動車メーカーや通信事業者がMaaSの社会実装に向けた取り組みを進めているけれど、サービスマネジメントというキーワードが聞こえてこないんだよ。「Mobility as a Service」というくらいだから、間違いなくサービスなんだけど、サービスをどうマネージするかとか、サービスレベルがどうとか、そういう話が出てこない。
 
金田 確かに、そうですね。これから新たにサービスを提供しようとしているのに、もしサービスマネジメントを考えていないのだとしたら違和感があります。やはり初めからサービスマネジメントの仕組みを構築した方が、コスト的にもスピード的にもメリットがあるわけですから。もしかするとMaaSの本質的価値って、まだ漠然としているので、手探りでやらざるを得ないところがあるのかもしれないですね。

結局、サービスに対する意識変革が必要?

鈴木 あと、これはいつも言っていることだけど、日本独特のサービスに対する意識も関係しているんだろうね。

金田 日本では、特に低価格のサービスのサービスレベルが諸外国のスタンダードと比較して相対的に高いという傾向がありますね。さらに日本の文化的背景として顧客をことさらに重視する傾向があるので、価格に見合わないような個別の要求にも対応してしまうようなことが当たり前になっているようなケースもありますね。

鈴木 まさにそう。この課題の解決にはサービスレベルの管理が必要。サービスプロバイダ側もユーザー側も、サービスレベルが暗黙の了解になると、双方の認識にギャップが生じてしまう。だから適正なサービスレベルを、サービスレベルアグリーメントで明文化する必要がある。

 加えて、顧客の個別の要求に応えることに価値を見出すのであれば、相応の追加料金を受け取るための交渉もしないといけない。これらをうまくやるためには、サービスプロバイダは顧客との関係構築にも注力する必要がある。これらはまさに、サービスマネジメントの主要領域といえるね。

金田 一概に日本のサービスに関する考え方が悪いとは言い切れないので、日本式の良いところは残す必要もあります。ただはっきりと言えるのは、サービスを始めるなら、どのようなサービスを提供するかを明確にして、サービスマネジメントをうまく回す仕組みを構築すべきだということですね。
 
鈴木 そういうことになるね。