【779回】「冬の旅」「特別支援学校教員という仕事・生き方」「新月の子どもたち」
① 立原千秋「冬の旅」
1969年、安保闘争の頃の作品。
とにかくみなさん、本音を語らない。
自分の気持ちをわかってくれよ、わかるよね?と相手を見つめるような人が多い。
話してくれなきゃ、いつまでも心の中の探り合いだよ。
自分の子ども時代を思えば、まあ、わかる気もするがね。
時代だったのかなあ。
いや、今もなのか?
あれこれ相手の気持ちを想像するけどさ、自分の都合ばかりの気持ちの押しつけは気をつけたいところ。
② 藤原文雄、岩見良憲「特別支援学校教員という仕事・生き方 20人のライフヒストリーから学ぶ」
特別支援学校教諭がどのような人生を歩んできたか。
20代から60代まで、20名の教師が語っていく。
教師の生き方を、特別支援学校教諭に限定した本は、唯一だと思う。
異動歴を見る。
というのも、ほとんどの人が、盲学校、聾学校、知的障害特別支援学校、肢体不自由特別支援学校、病弱特別支援学校と、異なる障害種別の学校を経験されていたのだ。
聾学校から肢体不自由へ。
障害種別が異なれば、教育内容も異なる。
赴任しては、職場の先輩に教えてもらい、勉強し、実践して、力をつけていく。とにかく、「やるしかない」のだ。
苦しくても、継続できるのは、強い目的意識があるからだ。すなわち、子どもに力をつけてもらいたい。
だから、少しでも意味のある授業をする。
特別支援学校教師は、一人一人の子どものために、指導をしていく。
ずっとずっと、知識と実践を積み重ね、アップデートしていく職人なんだな。
③ 斉藤倫「新月の子どもたち」
小学校高学年〜中学生向けの書籍。
始まりは、独居房から。
死刑囚は子どもだった。
物語が進むと、独居房の世界と現実世界の繋がりが見えてくる。心の中と外のような、少し村上春樹風の作品だな。
「もし、そうおもうなら、そう信じなくちゃ。じぶんの夢を、まもれるのは、じぶんしかいない」(p309)
死刑に服するか、解き放つか。
自分で決めねばならない。
厳しい。強さが求められる。
でも、「僕は選んでやっていける」という、「なりたい自分」を曲げてはならないのだ。自分が生きているのだから。自分で決める。
周りに何か言われるかも、という恐怖もあるよね。
離れる人もいるかもしれない。
自分が選んだ人生が、なるべく、自分に嘘をついてばかりの物でなかったら、いいな。