【768回】北海道自転車1周記1日目(札幌→赤平99km)〜出発、市内です、雨
1日目 札幌〜当別〜月形〜浦臼〜新十津川〜砂川〜歌志内〜赤平 99km
走行時間 6時間18分
PART1.出発
199X年8月。札幌は、小雨の朝であった。約1ヶ月はかかるだろうと、大まかに計画していた旅行の第一歩が、雨の中というのは、旅立ちを躊躇させる。特に宿の予約をしているわけではない。「明日でもいいのでは?」とも思う。
行くと決めたからには、行く。いいね。かっこいいね。結末を書いておこう。この日、僕は全身ずぶ濡れになる。
PART2.セオリー無視
札幌から出発し、北海道を1周する場合は、まず石狩市から日本海側に抜ける。その後は、最北の街・稚内まで日本海側を走り抜ける。これがセオリーだろう。
ところが、僕はいきなり、内陸部を進む。この日、海を見ていない。札幌から石狩川に沿って進む。しかも、砂川市からは、さらに山の中へ入っていく。
これは最初の目的地が、美瑛だったからだ。丘のまち・美瑛。美瑛に用事があった。とにかく、美瑛に行かなければならなかったのである。
なので、この旅行はいきなり、セオリー無視だ。
PART3.札幌市内で声をかけられる…
旅行の意外性は、通り過ぎる人々の視線にも現れる。
ランドナーという旅行用自転車。前後にバッグを2つずつ、ハンドルにフロントバックをつけ、荷台には、テントとシュラフ。
旅行中「日本一周しているの?」と何回か声をかけられることがあった。そのたび、いえ、北海道をまわっていますと答えるのが申し訳ない感じになった。
札幌市内を走っているときでも、「どこから来たの?」と通行人に声をかけられた。もう目も当てられない。「市内です…」と答えたときの、相手の表情は、思い出せはしない。さぞがっかりしたことだろう。
僕は荷物が多かったのか?だぶん、本のせいかなあ?
PART4.雨よ
ひどい雨であった。自転車に装着しているバッグに、レインカバーをつけた。僕自身はカッパだろうか。当時、mont-bellのような揮発性・保温性のある高機能のウェアを持つはずもなく、Tシャツ&トレーナーにGパンか短パンという服装であった。雨を吸って重くなる服。Gパンはだめだろう。
(ストームクルーザーがあったら、濡れても気にならなかっただろうなあ)
また、自転車に慣れていなかったのも大きかった。毎日、30km程度は乗っていたので、ランドナーの運転には慣れていた。でも、前後にたっぷり荷物を乗せて走る練習はしていなかった。明らかに、自転車が重い。そして、雨。進むしかない。フラフラになって、転ぶ。
「いや、もうやめようや」
と言いたくなる。
PART5.チロル
ずぶ濡れのままでは、気持ちが落ち込んでいく。ここで、ひらめいたのだろう。
「そうだ、温泉に行こう」
北海道は、気軽に日帰り入浴できる施設が多い。
歌志内にある「チロルの湯」に入った。
「とてもきれいで、気持ちよかった」というのが当時の感想だ。
自転車旅行中、色々な温泉に入る。これは、1つの楽しみだった。
PART6.僕は水だ
温泉でさっぱりしたあと、天然のシャワーは勢いも増して、どうにもならない。
しかし今日の宿もそろそろ考えないといけない。チロルの湯に宿泊するようなお金は用意していない。進むのだ。
雨粒が大きい。前が見えにくい。
道路脇に水が溜まっている。水たまりに突っ込む。足が、水と一体化している。
車が僕を追い抜いていく。トラックが後ろからくる。水をかけられる。
温泉で得た温もりは完全に消失する。僕は、水だ。
夢中になって探したのは、無人駅である。
PART7.根室本線・平岸駅
見つけたのは、JR北海道の駅。根室本線・平岸駅である。
薄明かりの駅舎に飛び込み、ここで1泊させてもらうことにした。
夕飯は、駅近くのサンクスで買った。今は、このお店は無いようだ。
食べ物にありつけて、雨をやり過ごせる場所で、朝まで過ごす。
当時はどう思っていたのだろう。
今は、感謝の気持ちばかりわいてくる。
全身ずぶ濡れになった1日。よく、風邪をひかなかった。
どうやって保温したのだろう。不思議だ。
若さゆえなのだろうか。
1日目は、これでおしまいです。
ありがとうございました。