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障害者雇用 日々つれづれ フリーアドレス

今の職場はフリーアドレスを採用している。

フリーアドレスというのは、オフィス内に固定された自分の机や席というものがなく、その時々で自由に場所を選んで仕事をしていいよという仕組みである。

近年のファッショナブルなトレンドである。(なんとも昭和な言葉)

賛否両論あるだろうが、私はこの仕組みが好きである。

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朝。

そこは静かな戦場と化す。

人気のある席の取り合いが繰り広げられるのである。

なかでも窓際で外に背を向け、ついたてで前面の視界がシャットアウトされてずらっと並んでいる席は不動の人気を保ち、社員たちは毎朝戦々恐々としている。

始業まで余裕のある時間帯でも、そのエリアだけは埋め尽くされているのである。

一方、私はオフィスのど真ん中にどーんと置かれたハリーポッターの食堂にあるようなおっきい机が好きで、いつもそこの真ん中の席に一番乗りしている。

ありがたいことにこのおっきい机は人気がないようで、毎朝閑古鳥が鳴いているのだが、その後時差出勤の人たちがちらほらと集まり、昼には埋まってにぎわいを見せている。

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テラスという選択肢もある。

オフィス内は冷房が効きすぎていて、最近買ったカーディガンでも心から冷え切ってしまうときには、外でのんびりと仕事をする。

おしゃれなデザインのテーブルが置かれているので、自分で淹れたカフェオレをパソコンの横に置き、青空の下で作業を進めると、いかにもパリのカフェで仕事をしているような気分にさえなり、頭の中にボサノヴァが流れてくれる。

ただ、真夏と真冬は地獄である。

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フリーアドレスで困るのは、ある人に直接話を聞きに行きたくても、その人が消息不明なことである。

日によってもちがうし、その時々によって席を変えたりする人もいるからである。

オフィスは複数階に分かれているので、探すたびに階段を上り下りするのも一苦労である。

そんなこんなで取り入れられたのが、Workers Trailというオンラインアプリである。

社用携帯のGPSを常にONにして、Workers Trailのサイトにログインすれば社内の図面が広げられ、「その人ならここにいますよ」というのをアイコンが示してくれる。(それと同時に自分の居場所を皆の者にさらけ出す)

若干のズレはあるものの、ほぼ正確なので重宝している。


ちなみにお世話になっている障害者のTさんの元へ行くために私はWorkers Trailを活用し、行き場を確信してそこに向かうのだが、社用携帯がぽつんと机の上に置かれていて、肝心のTさんは見当たらなかったりする。

Tさんは身軽に別の階や建物に行ったりされるので、Tさんの社用携帯を目の前にしながらにして、私は迷子となる。

そのたびに、これはITの限界だ・・と思うのである。しょせんコンピュータが人間の行動をすべて把握することは不可能なのだ。

ただそのおかげで、私は焦ることもなく、ひたすらぼーっと待つことができている。

のどかなひと時を過ごせるのも、フリーアドレスならではなのだろう。

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他部署の方々とも仲良くなった。

だいたい同じ顔がテーブルに並ぶので、自然と「今日の服かわいいですね」とか「髪切りました?かわいいですね」などの話が飛び交う。

持ってきたおやつを交換したりして、仲良しこよしなのである。

昼頃に隣に腰かけてきた、ふんわりとした雰囲気の方に他の社員さんが「部長」と話しかけたりして、こっちは瞬間的に緊張したりもするが、基本的にはほのぼのとした雰囲気である。

ときおり社用携帯でけたたましく叫んでいるお方もいらっしゃるのだが、数分ほど経てば静かにパソコンに向き合うので、騒音はほんのひとときである。

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このあいだ昼食時、突然「ガコン!!」と音が鳴り、斜め前に座っていた方のお弁当箱が宙に浮いたことがあった。

食べ終わった後で蓋もしめていたので一大事には至らなかったが、周りがとっさに「大丈夫ですか!?」と気遣った。

その張本人は「すみません、大丈夫です」と申し訳なさそうな表情を浮かべていたが、周りのみんなは「お弁当食べ終わっててよかったね」「無事でよかった」と口々に優しい言葉をかけていた。

それまではそれぞれの時間を個々で楽しんでいたのだが、こういうハプニングが起こると、あらゆる部署の方々が一致団結することがうかがえた。

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フリースペースは、精神面にも良い効果をもたらしてくれる。

好きな場所に座れて、上司や先輩に常に見張られている気になることもないので、私は基本的にのびのびと仕事ができている。

とってもオススメの環境である。

ーーーーー日々つれづれと続く

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