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障害者雇用 正社員登用?と私の生き方

ここ2週間、結論の見えない思考が頭の中をぐるぐると迷走していた。

というのも障害者雇用で働いてもうすぐ1年になるのだが、今後の方向性を見つめ直してみたら、思いのほか立ち往生してしまったからである。


今の会社は障害者雇用では契約社員の形態なので、賞与がないし企業年金もない。

それでも今の会社を受けたのは、障害者の正社員登用の実績があったから。

当初は私もそうなりたいなと思って志望したのだけど、いざ1年経ってみると本当にこれで正社員になっていいのかどうか、もう分からなくなってきた。

今の業務内容は正社員の方々のそれと程遠いし、私はそもそも企業での職務経験も少なくて、いきなり即戦力になるとは到底思えないから。

この先 契約社員のままでいくのか、それとも正社員登用を目指すのか。

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ゴールもなく、おとなしく悶々としていてもどうしようもないし、いてもたってもいられなくなったので、人事部で働くもう一人の障害者であるTさんに聞いてみることにした。

Tさんは今の会社で障害者雇用で働き続けてもう4年目のベテランで、これまでの傾向とか熟知していらっしゃるプロフェッショナルである。

すこぶる優しい方で、この方には「怒る」とか「不機嫌」というワードは辞書に収められていないのではないかと思うくらいだ。

そんな温かな方に意を決して相談をもちかけたところ、部長に確認を取ってみたらよいですよ、というご助言をくださった。

Tさんによると、人事部では正社員登用をしていないから、登用となると必然的に別の部署での採用となるのだという。

そうか。登用も気になるし、どの部署なのかも気になる。


待ちきれなくなってその日のうちに部長にアポを取り、翌日ドキドキしながら、面談へ赴いた。

しんと静まりかえった部屋で部長と二人になり、開口一番で「皆さんが優しくしてくださるので、とても働きやすいです」と正直に伝えると、若干こわばった表情の部長は一気に柔らかな笑みを浮かべ、「そうなんですね!よかったです」と嬉しそうに答えてくださった。

その笑顔を見て、そうか部長も緊張してたんだな、と妙に落ち着くことができた。

そりゃ障害者が「話がある」といってやってきたら、「なんだ、なんだ?」って不安になるよな、と。


そんなふうに場が温まったところで、本題。

直接「正社員になれますか?」とは到底聞けないので、「約1年たって仕事にも慣れてきたので、時間に余裕があります。私は教育業界にいたこともあり企業は分からないことがたくさんあるので、今後の部署異動がある場合のこともふまえて、何か勉強しておくことはありますか?」と聞いてみた。

部長は察しの良い方なので、おそらく理解されたのだろう。

まず教えてくださったのは、私は人事部で今まで通り働くのが求められている、ということだった。

人事部で働く・・つまり、正社員登用の見込みがない、ということ。

がーーーーん・・・である。

(その後、部長は一生懸命考えて、空き時間に社内の通信教育でどの授業を受けたらいいか、という話をしてくださっていたが、私の頭の中には全く入ってこなかった(笑))

やけくそになりそうになった。

仕事を辞めてやろうかとも思った。


とはいえ正社員になれないのは、なにも地の底に落ちたのではなく、1年前の無職プー太郎だった頃に比べると、落ちそこないにすぎない。

ちょっと方向転換をしただけである。


それに一応ではあるけれど企業に在籍していることは、今後の人生においても有利に働くかもしれない。

いつまた発作が起こって入院になるかも分からないし。

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ふりかえってみると、

そもそも私がふてくされた理由は、

① 正社員になれなかったこと(給料が低いこと)

 だけではなく、

② 業務内容には、これまでの経緯が全く反映されていない

ということもある。


①はもう、どうあがいたって、しょうがない。

一歩下がって考えてみれば、週に2~3回在宅があってその日はあんまりやることがないから、自主学習に充てられている。

会社にあった本とか読みふけっている。

それでもこの給料と考えれば、むしろありがたいのかもしれない。


② 業務内容にこれまでの経験が反映されていないことに関しては、これはもう、私のしょうもないプライドが邪魔をしているにすぎない。

企業での仕事に、論文・書籍執筆だの学会発表だの教師経験だのは、関係ない。

むしろ企業経験が乏しい私を拾ってくださっただけでも感謝すべきである。


なにより仕事で脳を使い過ぎないようにと、医師から言われたではないか。

これまで他の部署の社員さんを見ていて思ったのだが、みなさん残業されているし業務量も計り知れない。

同時並行であれもこれも着手していて、いったいどうやってさばいているのかと心の底から尊敬するほどである。

この方たちと同じように頑張ってしまえば、私の場合は下手すりゃてんかん発作が起こったり、今は静寂を保っている双極性障害の躁状態になってしまうかもしれない。

そうなると薬を変えたり、それに伴う副作用だのあったり、落ち着くまで時間を要するのでその分周りの方に悪影響を及ぼしてしまう。

・・・そう考えると、今のままがよいよね。

うん。


帰路、電車の中で冷静になり、しっくりと落ち着いたのだった。

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今回の部長の宣言を受け、分かったことがある。

それは、心の底から正直に安心したということである。

安心というのは、業務の内容がこのまま変わらないということに、である。

正社員になれたとしたら別の部署に異動になるから、新たに業務を覚えないといけないし、業務量も増加する。

コミュニケーションを通して新たな人間関係も作り上げなければならない。


・・・これは猛烈なストレスである。

ようやく慣れてきたのに、また1から出直しかと思うと、気分は萎えるし不安である。

この不安から解かれてほっとしたのも、今回得た気づきである。

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そして食事の準備をしながらぼんやりと思ったのだが、障害者雇用は、生き方を考える良い機会なのかもしれない。

たとえば、

平日はおとなしく、今の業務。規則正しい収入確保。脳を使い過ぎない。空き時間に自分の勉強。

休日はまず休息。その次も休息で、またまた休息。さらにその次に自分のやりたいことをする。これまでの経験を活かして、コーチングを提供し社会貢献。ただしムリしない。

これが、ここ1年で作り上げてきた、私の人生設計である。


生き方は人それぞれだし、障害の程度や気分の上がり下がりにもよるだろう。

ときに満足がいかなかったりもするかもしれないが、身体は資本であり何より最も気を配るべきものである。

資本も含めて、ものすごーく壮大なライフプランを練って、障害者なりに人生を楽しみたいなと思う。


余談。

唯一、部長への話を終えて後悔したのは、「時間に余裕がある」と言ってしまったことである。

それに対して部長は「社員さんたちに追加の業務を振り分けるよう伝えておきますね」と至極当然の応答をなさった。

・・・やってもうた。

その後あちこちから、仕事が遠慮なく次々と降ってきたことは言うまでもない(笑)

それでもやりがいは得られるので、ぼちぼちやろうと決めた今日この頃である。

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