小さい領域は難しい?緩和されたのに損をする?奥が深い天空率
今回は、緩和が適用されることで、設計条件も有利になるかと思いきや…というお話です。
例えば、
幅員が異なる複数の道路に接道している敷地で、
天空率を使ってボリューム検討をするとき、
いわゆる「2A(かつ35m)」が適用されます。
この2Aは”緩和”要件ですので、適用されることで、ボリュームを確保しやすくなると思わる方が多いと思います。
それは勿論その通りです。
実際に天空率空間で確認してみましょう。
下の敷地条件で、5階建(階高3m)の建築物を検討した場合、どれだけボリューム(容積)に違いが出るでしょうか。
上の例では、2A緩和が生じた結果、18㎡程度の容積が増やせそうです。
…と、ここまでは良いのですが、実はすんなりといかない場合があります。
今度はADS-winを使って、算定領域を見ていきましょう。
まず、2A緩和が考慮された部分の領域は大きなボリュームが取れそうです。
天空率もクリアしています。
では他の領域はどうでしょうか。
これは2Aから外れた部分の領域ですが、天空率の計算結果はNGとなっています。
ちなみに、この領域範囲だけに着目すると、NGとなった同じボリュームが、
2Aが生じない(同一幅員)場合はOKになります。
この範囲に限れば、2A緩和が不利に働いていることになります。
このままでは、この領域内は計画建築物を削るなどの検討をしなければなりません。
今回の例では、少しの変更で済むかもしれませんが、場合によっては大きな変更が必要になることもあります。
つまり、2A緩和によって建物形状の制約が出てきてしまうのです。
これは、天空率の特性によるものと言えます。
小さい領域では、適合建築物も当然小さくなります。
それは、適合建築物の天空率(=空の見える割合)は大きくなることを意味します。
その領域で計画建築物を他の領域と同じような高さ、形状で計画すると、
天空率は想定していたよりもすぐに、
計画建築物 < 適合建築物 →NG
となってしまうのです。
ご存じのように、天空率を使用するには、全ての領域で適合建築物の天空率を上回らなければなりません。
せっかく大きなボリュームがとれそうなのに、端にある小さい領域でNGとなってしまう…
ということが、2A緩和が生じる敷地では起こりうるので、設計者の方はご注意頂ければと思います。