第5回(2024.10.24)授業へのフィードバックから
こんにちは。第5回の授業が終わりました。遅くなりましたが授業にいただいたフィードバックをご紹介していきます。
第5回と第6回は、注意(attention)について扱います。今回第5回は注意の古典的研究である両耳分離聴を学生諸君に経験してもらって、注意の種類(選択的注意、焦点的注意、分割的注意)のお話をしました。
注意を分割してリソースを振り分けることが出来るということだが、どのくらいの業務であればマルチタスクは可能なのか疑問に思った。
その「マルチタスク」全体で要求される認知資源の量が、自分の持っている認知資源の総量を上回らない限り、ですね。人によって違うと思いますし、同じ人でも熟練度に依存したりします。
両耳分離聴のテストで全体の平均が98%近くあったことにとても驚いた。自分は86%周辺だったが、聴力検査に引っかかったことはなく、むしろ聴覚にはある程度の自信を持っていたが認知処理能力が劣っているのではないかと思った。
あのミニ実験では、復唱する単語を認知心理学の教科書からとりました。聞き慣れない単語もあったと思います。ですから復唱できなかったものがあっても問題ないと思いますし、むしろあの実験を設計した私の方の責任と言えます。
リソースをゼロヒャクで分配することは出来ないが、それは危険察知のためにも大切な事だと思った。
野生環境で生きているとすると、餌を食べている時に目の前の食事に100%の認知資源を取られてしまったら、おそらく簡単に敵に襲われてしまうでしょう。生き残るための進化の後なのかもしれませんね。
私は寝不足になると忘れ物が増えたり、自分が何しようとしていたかふとした瞬間に忘れるなど、無能になったような気がしていたのですが、これは寝不足のときにリソースの総量が減ってしまうということなのでしょうか?
覚醒度が低くなったり疲労したりすると使える認知資源が減る、と考えると辻褄が合いますね。
運転中に速度を気にするあまりに気づいたら左右に寄ってしまうことがあったのを思い出しました。
自動車の運転はかなりのマルチタスクですね。気をつけて運転してください。
車の運転が疲れるのは様々なタスクの処理を必要とするからだとわかった。
「熟練」すると少ない認知資源で各タスクをこなせると考えられています。ただ「熟練」のあまり「油断」するようになると危険なので注意して運転してくださいね。
車の注意について、話を聞く感じだと音楽を聞きながら運転するのも危ないのかなと思ったのですがどうなのでしょうか
音楽等聴きながらの運転も多少は運転への注意の阻害になるのかなと思った。
この話は、実は来週の授業のトピックにも関連するのですが、音楽は、場合によってはほとんど聞いていない、すなわち「聞き流して」も問題ないですよね。私も忙しい交差点で運転している瞬間などではおそらく音楽はほとんど聞いていないと思います。一方話は途中を聞いていないとあとで訳がわからなくなるので、なかなかそうはいかないですよね。
認知リソースの配分の観点から見ると音楽を聴きながら勉強をするのは良くないことなのかと気になりました。
これも来週の授業のトピックに関係するのですが、音楽には「処理に認知リソースを使ってしまう」意外にも「覚醒水準を上げる」「気分を高揚させる」など多くの効果が期待できます。ですから単純に「良くない」とは言えないと思いますよ。あくまで「ちょっと認知資源をくわれるかも」です。
授業の序盤にあったアンケートについて、そもそもほぼ寝てる人はアンケートに答えることができず、有意義なデータにはなっていないと思いました。
これは面白い指摘です!3年次の「データ収集・分析」でまさにこういうトピックを扱うのですが、サンプルバイアスですね。しかし授業始まったばかりのあの時点で寝ている人はかなりの強者だと思うのですが…
普段何かをしている時の注意のリソースが分散しやすい(或いは分けるのが器用な)人は簡単なタスクを複数並列でこなすのが得意なのだろうと思う。ただこれまで人の仕事を見てて思ったことだが、同時にこなされたものの出来は悪いことが多い。さらに言うと、結局一つ当たりのタスクを終わらせる時間が長く、一つずつ順番に終わらせている人とそんなに変わってないような気がする。ただ、実際のところ好きでマルチタスクになっている人なんて少ないだろう。あまり仕事を抱えずに生きていきたいものだ。
私は自分の論文を書く時には、半日程度何も邪魔されずにそれに没頭できる日を好んで選びます。もちろん注意が持続する時間の問題がありますから、途中休憩は入れますが、全く別のことをパラレルに、あるいは時分割で入れるのは苦手です。
今日の授業でわかったことは注意というのは完全に何か一つのことに向けようとしても、別のことにも少し向けてしまうということ。身近な例として机の上が散らかっているときはどうしても目の前の勉強以外ことに注意が向いてしまうことなども挙げられるのかが気になった。
耳が痛いです… 机の上整理しないと。
今回は人間の一度に複数のものを認知する仕組みについて学んだ。両耳分離聴によって資源をあまり割いていない方の耳も聞こえるのは、視界に入っているが細かい情報は分からないという状態に似ていると感じた。両耳分離聴のような状態は対となるようなものがある器官には他にもあるのか疑問に感じた。
今回両耳分離聴を選んだのは左右ではっきり分かれるのでわかりやすいからです。おっしゃる通り視覚でも視野に入っている刺激は多数存在しますし、実は聴覚でも同時に(必ずしも左右でなくても空間内に)多数の刺激が入ってきています。匂いなどについてはあまり私は勉強していませんが、触覚については似たような実験が可能かもしれませんね。
マルチタスクが苦手な人は英語が苦手な傾向にあるという話を聞いたことがあり、私も英語は大の苦手なのですが、分割的注意に関連する処理があるのでしょうか。
いや、これは私は聞いたことがないです。ちょっと調べてみましょう。
次回第6回は、今回学んだ「注意」の産業上の応用として「視覚サンプリング」についてお話しします。お楽しみに。
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