【詩】悲劇の西へ、最愛よ
鈍色の厚い頁を捲り
マイカの光が射してもまだ遠い西の空
夕暮れの焦燥が視線を風に攫う
最愛よ、いつも姿なき者よ
稜線が刃となって天を割いたなら
満ち足りた水滸に咲く花の名を
ひと声だけでも聞かせてくれるかこの耳に
黒い水だけを手にして
まだ走り続けるこの脚で
鉄の上も砂の中も
心臓が止まるまでこのままなら
最愛よ、君に証ができるのか
照らせ金光、疾風に煽られる翼を
漣立ち鱗のように逸る表象を
未だ落ちないマイカの光を睨み
最愛よ、我は行く
皮膚など全て剥がしてそこへ行く
質量など全て捨て去りそこへ行く
悲劇の西へ、最愛よ
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