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相談相手における「適度な距離感」の大切さが身に染みた日(から話は飛んでZion国立公園のミニレビュー)

元々同じ大学でポスドクをしていたHさんと3年ぶりにキャッチアップをした。彼がアメリカに来て1週間くらいの時に知り合って、10日目くらいにはいつメンたちと混じってZion国立公園にロードトリップに連れ立って、1ヶ月後くらいには奨学金のアプリケーションの添削を手伝ってもらった。留学生だとアメリカの奨学金はほとんど応募資格がないし、逆に日本の奨学金は学部を日本で卒業してないから不利なことが多くて、応募できる数少ないこの奨学金は取らなきゃって物凄いプレッシャーをかけてた時期。

「大学院2年生の段階でこんなに書ける人いないって!すごいって!自信持って」

お世辞だったのかもしれない。でもその言葉で不安ながらも最後まで書き切って、無事に受かることが出来て、この奨学金があったからその後ほかの奨学金も何個か有難いことに頂けて今の自分の博士生活がある。金銭的にも精神的にも、ここのゆとりが無かったらきっともうとっくにめげて大学院辞めてただろうし、アメリカからも去ってたかもしれない。そういう意味でとても大きな恩がある人だ。

アカデミアの宿命というべきか、彼が同じ大学に在籍していた期間は短い。その後コロナ禍も相まって色々あったようで、たまにメッセージで近況を話すくらいの繋がりしかなかった(というかあちらが気にかけてくれて、自分は返信するだけのことが多かった。。猛省)
先週、「昔いたラボにサンプル届けに行くから時間あったらランチでも」とまたまた声をかけて頂いて3年ぶりの対面。本来の予定ですら1時間しか会えなかったのに実験がずれ込んで(本当にやりがち、計画性の甘さ。猛省)、結局会えたのは20分くらいしかない。でもまたしても、彼の言葉に救われた。

背景としては自分は今大学院6年目が終わったところで(日本で言うと後期4年目)、本来はすでに卒業している予定だったのだが、ずれにずれ込んで今年12月が卒業見込み、さらにポスドクとして残って2024年いっぱいまでやらないとプロジェクトが終わらないような感じ。アカデミアでポスドクは絶対やりたくなかったし、今のラボも今すぐにでも出て行きたいくらいだったのに、いつの間にか、「まあ、仕方ないか。就活したりグリーンカード申請したりするのに結局あと1年くらいあった方が余裕あるし、そしたらもう1本論文出てた方がいいし」
と受け入れて納得していたつもりでいた。でも、

「そのプロジェクト終わらせたいって言うのはさ、100%自分の願望?ボスの願望じゃなくて?」

核心を突かれた。もちろん論文が出たら自分にメリットはある。でもそれよりも、正直に言ってしまえば後継がいないから。自分が終わらせなければこのプロジェクトが日の目を見ることはきっとないだろう。悲しくないと言えば嘘になる。でも、正直なところどっちでも良い。早く博士を取れてここを出られればいい。それくらい自分は(アカデミアの)研究に向いてないってもう分かったし、このラボの環境にいても成長がないことは4年くらいずっと思ってる。だいたい後継がいないのは人を雇って育ててこなかったボスの責任だし(ポスドク1人、院生1人=自分の状態が2年ってラボ運営間違いなくおかしい。)それが本心なのにねじ伏せて、理屈をこねくり回して納得させるのをまたやってしまった。博士課程に進んだ時もそれやって今後悔しているというのに、繰り返すところだった。

「一つのプロジェクトを最後までやり切りたいって言うのは気持ちすごい分かる。俺も昔そうだったから。でも振り返れば、なんであの時あんなにこだわってたのか不思議だよ。ぽんぽん環境変えてった方が詩音さんは輝くと、俺は思うけどな。
責任感強いからボスに気を遣ってるんだろうけど、あっちは詩音さんのこと全然思ってないんでしょ。だったらもっと自分中心になっていんだよ」

否定せず、共感しつつ、でもこうした方がいいんじゃないかとはっきりと。それはまごう事なき、揉み消される寸前の自分の本心であったし。現実的な話、卒業即就職は厳しいからポスドクはやらなきゃいけなくなるとは思うけど、なぁなぁでズルズルと、論文出るまでいるのは避けようと誓った。それは自分のためではないから。学位取って、ビザか就職先が確保できたら即辞める。それまでは居させてくれるのなら利用してやろうくらいの気持ちでポスドクしよう(分かってる、現実多分ビザも就職もそんなにすんなりは行かなくて結局1年以上ポスドクしてしまう可能性が大いにあること。そしたらこんな上から目線で大口叩いてた今がすごく眩しく見えるんだろうけど、今だけはこれくらい言っときたい)

20分のキャッチアップで救われる心がある

今まで進路のことで散々悩んで不安になって、カウンセラー通ったけど合わず、お母さんに愚痴っては申し訳なく思い、友達に話聞いてもらって少しスッキリはするものの、結局黙ってやるしかない、と諦めて、もうその葛藤にすら慣れて何も感じなくなっていた今、思いがけず差し伸べられた言葉があまりにもドンピシャで。同じ分野にいる先輩、日本からアメリカに来て、似たようなアカデミアの環境で苦労を味わってきたからこそ、話が通じるし共感してもらえたという感覚。と同時になんの責任と関係性もない「他人」だからこそ、自分も彼も安心してはっきりと本心をぶつけることが出来たゆえの納得感、スッキリ感。自覚がなくともずっとずっと渇望していたものを、予期せず与えられて本当に心の底から救われたような気持ちになったんだ。

「あ、でも喧嘩別れはダメだよ」

どんなに嫌いな上司でも、と最後に釘を刺すのは忘れなかったHさん。相談相手としてのスキルがすば抜けてお高い。。研究者としてのみならず人生の先輩として一生ついて行きます。今までの自分の塩対応に本日3度目の猛省。

Hさんも含めて友人たちと行ったZion国立公園のThe Narrows。ここは浅いが奥に行くほど深くなり、ところによっては胸まで水中に浸かりながら進む珍しいハイキングコース。

後日譚

この日のことが嬉しすぎて元ルームメイトに報告したら
「いや、私も同じこと言ったやん」
と言われた。同じ留学生でSTEM系の院生をしてた彼女にも何回もラボのことや進路のことを相談していて、多分何回もHさんと似たようなことを彼女もアドバイスしてくれていたのだろう。聞く耳を持たなければ金言も響かない。距離が近すぎたことも同い年なことも影響したな。ごめん。
そんな彼女も無事就職して東海岸に移ることになった。ルームシェアを辞めてからの2年間、コロナもあって疎遠になってしまっていたが、ひょんなことから友人たちと始めることになったバドミントンを通じてこの3ヶ月間、思いの外またキャッチアップすることができた。アドバイスは響かなかったけど、お互い隙間時間のスマホいじりが行き過ぎて依存症になってしまってるよなーとか、家事全部やってくれる人いたら研究って捗るよなーとか、そういう愚痴というか独り言というかをバドへの道すがら車中でとりとめもなく交わし合うのが、随分と心地良かったよありがとう。今の家に住めてるのも実は彼女のおかげ。最後にたくさん調味料くれてありがとう。新天地でも頑張って。

スマホいじりすぎてやばいと書いた。主に推し活で始めたTwitterのせいで時間が溶けていくわけだけど、唯一良かったなと思うのが、日本の院生の皆さんのつぶやきが見れること。海を超えた先でもそれぞれに苦悩を抱えていらっしゃるなと。似てる悩みもあれば国特有なのもあるけど元気をもらえる。そしてこれ

軽く泣いた。がんばろう。

おまけ:Zion国立公園

今記事ヘッダーと上の写真、キャプションにも書いたがHさんたちと行ったZion国立公園 in 2018。今まで13個行ったアメリカの国立公園で1、2を争う行って良かった国立公園の一つなんだけど、理由は自然への没入感がすごいから。例えばグランドキャニオンなんかの方が規模は大きいんだけど、どうしても上から見るのがメインで距離を感じる。かと言って、谷底まで降りるハイキングはあるにはあるけど8時間以上かかる過酷コース。Zionは、下から上まで入り込める。下は The Narrows、さっきの写真のようなところを水に浸かりながら進む。どこで引き返すかは自分たち次第。奥に進めば進むほど、名前通り狭く深くなっていく。レンタルした全身防水仕様の装備に身を包んでいるとはいえ、水の中を何時間も歩くのは相当しんどい。夏なら良いけど秋口になると寒くなってくるし。でもこんな貴重な経験アメリカ広しと言えどもなかなか無い。ここ1−2年は人喰いバクテリア?の繁殖で解放されてなかったことも考えればあの時行っといて本当良かったなと思う。アルティメットフリスビーで前十字靭帯切って手術後のリハビリ中で相当怖かったけど。ぬるっとした岩で滑って膝捻ったら一巻の終わりだったけど。ここら辺の手術話も機会があれば書こうかな(こうしてどんどん下書きだけ溜まっていく。。)

下から見上げたZion。オレンジの岩と青空の対比が美しい。

一方Zionにおける上は何かというと、Angeles Landing。天使が降り立つところ。この素晴らしいネーミングを持つスポットは往復6時間かけて行くZionの頂上のひとつとなる。ものすごく道が狭くて、その割に人気だから人が多くて、岩肌に沿った鎖を持ちながら登っていくのは結構ハラハラドキドキの体験。

頂上に近づくにつれ道が険しくなってくる(もはや岩登り)

実はここ2018年の訪問では天候不良(ガチ雷雨)で泣く泣く断念。主催者の友人1人が強行しても行く!ってちょっとごねたけど、冗談じゃなく死人が出るから(実際出てる)と何とか宥めて事なきを得た。パーティーは違えど再チャレンジしたのが2020年。Zion国立公園っていう名前、このnoteで以前聞き覚えがあるという人が奇跡的にいたとしたら大正解。記念すべき初めてのマダミス「何度でも青い月に火を灯した」に出会ったのがこの時。詳細はこちら(宣伝)https://note.com/eom139/n/n54d45adaf1a8

話を戻してAngeles Landing、あの時の体力だと6時間って感じしなかったな。景色がどんどん変わってくし、面白いからあっという間にやり切った感がある。唯一、人が多いのにマナー守らない人たちがいた時が、誇張じゃなく命に関わることだったからイライラしたし気をつけなきゃいけないとこだったけど。それ以外は文句のつけようのない、大自然に没入できるZionおすすめです。

滑ったらと思う怖い。晴れてなきゃ無理
でも絶景が待っている

終わりに

2つに分けるべきだったかなぁ。国立公園の記事はまた折を見てちゃんと書きたいから、とりあえず簡易版レビューとしてはここで1個、おまけという形だけど出せて良かったか。

ふと思ったこと。
相変わらず入れ替わりの激しいロサンゼルス。Hさんや元ルームメイトはじめ、スキズ紹介してくれたNちゃんも去っていったわけで、来年の今頃何人知ってる人残ってるかなぁと思うと同時に、流石に10年もいたら選り分けされて行って、周りにいる人も長期とか永住の人が多くなってきた気もする。とはいえ常に日本人は多い。昨日はQさん主催の200人弱規模のパーティーがVenice Beachであった。久しぶりにここまでの規模のパーティー行ったけど、思ったより疲れなかったし素敵な繋がりも生まれたし、あんまり腰重くなりすぎずに行ってみようかなぁと思った。この規模でも治安が良かったのは主催者グッジョブ。

最後にふと思ったこと。
ロスって夏はすごい日が長くて、夏至近辺の今は20時半くらいまで明るいんだけど、その分暗くなった時はもう22時だから一日が一瞬で終わった感がすごい。早寝早起きの良いきっかけになってくれると良いのだけど、、!

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