鈴木忠志さんの演劇「世界の果てからこんにちは」を見て、山奥からの写真レポート
金沢在住の友人家族がもう何年も夏に観劇に通っている野外演劇があるという。それは鈴木忠志さん率いる演劇集団SCOTによる「世界の果てからこんにちは」という舞台で、富山県の利賀村というところで開催されるもの。花火も上がるらしい。演劇、屋外、花火。よくわからなかったけど、彼らが毎年通うってことは何かあるのだろう。今週末ちょうど公演のタイミングに合わせて物件探しのために金沢に行くことができたので、友人が運転する車にちゃっかり乗せてもらい、一緒に見てきたので今日はその記録。
SCOTサマーシーズン2023のほぼ最終日。
場所は、富山県南砺市利賀村。
「そういえば山の上って言ってたけど、丘の上にある井の頭公園くらいのイメージ?あるいは日比谷公会堂くらいなものかしら?」と想像をしていった。金沢発着で車に乗せてもらえるからと、あまり下調べもせずに。
金沢から1時間半くらいのドライブで、高速を降りてからが結構長い。なんだかやたらクネクネと、ヘアピンカーブを進んでいくなぁ、もう40分はクネクネしているなぁ、ワカメ酔うなぁ、と思っていたら、山奥の集落にたどり着いた。聞けば人口たった800人の小さな山間の村で、川ぞいに「なぜこんなところに?」と思うような屋外舞台や劇団が暮らす場所、スタジオ、合掌造りの巨大な建物などが広がっている。
地図を後から見て気がついたのだけど、ものすごい山奥だった。丘の上とかのレベルじゃない。友人に聞けば、「どれだけ山奥か事前に伝えてしまったらワカメさん来ないと思ったから黙っていた」という。なかなか勘の鋭い男だ。
入り口での受付完了後は、整理券番号順に並ばされる。非常に大勢の人がいる。多分この日だけで村の人口が倍増するに違いない。
なんでこんな山奥にこんなにたくさんの人が集まっているのだ・・・!!!なんなんだ鈴木さんて一体!!??金沢より気温が3度は低い!!なんで役者さんにこんなに外国人が多いの!!??トイレめっちゃ綺麗なんですけど!!!など、色々疑問が湧いてくる。
この場所に、1976年に鈴木忠志さんが最初に移住したのがきっかけだという。舞台の後に、「演劇には、偶発性の瞬間みたいなものが必要だと僕は思っていて」「東京が嫌になって、新宿からここに移ってきたんです」とお話しされていた。さらに「みんなは僕に騙されたって今も思ってるかもしれないけど」行政やスポンサーを巻き込んでの開発が行われて今の姿になったとのこと。
昨年亡くなった磯崎新さんが設計した野外舞台はかなり傾斜のきつい、ローマのコロッセウムみたいな形になっている。傾斜がキツいと、観客もお互いに見渡せるせいか、「一緒に見てる感」が高まる気がする。
そこで、マイクなしの役者さんの声が響く。
さらに、お芝居の途中、何回も花火が上がる。頭上に上がったり、水面の上を水平に走ったり。その時の話の展開に合わせて、祝砲に見えたり、ミサイルに見えたり、爆弾に見えたりする。花火の爆発のタイミングがちょっとずれて降ってきたら死ぬ!!と思う。
演劇の感想としては、かなり、意味不明というかカオスだった。私の文化と教養と文章力が足りないせいも大いにあるのだけど、二日前に書いたキタニタツヤさんの動画に通じるカオスをまた見てしまった感じ。全くストーリー性のない独立した場面の連続で構成されたものだと鈴木さんご本人も解説されているので、ある程度の混乱はデザインなのだと思う。テーマとしては、戦争、日本、美しい国とは何か、軍勢、妄想、など深刻なのだろうけど随所でコミカルなので何度も声を出して笑ってしまう。特に冒頭で白装束の役者さん7人くらいが消化不良、消化過剰、仏様と自律神経の失調などについて議論するシーンはなんだったんだろう?全然意味がわからないし、意味があるのかもわからなくておちょくられている感じもして面白い。
というわけで内容は全くまともに解説できない。
1時間ちょっとの公演のあと、鈴木さんのお話を聞く。するとそのまま酒樽が運ばれてきて鏡開きがあり、日本酒が振る舞われるのでさらに驚く。観客に日本酒が振る舞われるお芝居??しかし若鶴、美味しい。さらに、帰り際にはコロナ禍で団員の皆さんで始めたという畑で取れたナスとピーマンまでお土産にいただいてしまった。
友人夫婦と帰り道に答え合わせをしても、お芝居の内容はやはりよくわからなかったのだけど、カオスぶりや色んな解釈があるのはとても面白かったし、あんな山奥で暮らしている劇団員の皆さんが「また来てね!」と言ってくれたのが本気だったので、きっとまた行く。
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