見出し画像

『すずめの戸締まり』インスパイアソング「Tamaki」からみるすずめとたまきさん

※作品に関する壮大なネタバレおよび私見を含みます。苦手な方は引き返してください。


すずめの戸締まりを公開初日に観に行った熱がまだ冷めず、『すずめの戸締まり』のサウンドトラックを聴きながら課題をこなしたりこの記事を書いたりしています笑

以下に書いた記事まとめを貼るのでよければ覗いていってくださいね。



さて、『すずめの戸締まり』はいろんな軸でストーリーを追えますが、今回は「すずめとたまきさん」を軸に据え、

RADWIMPSの「Tamaki」というすずめの戸締まりインスパイアソングを見ていこうと思います。

劇中歌ではないのですが、すずめの戸締まりのアルバムに収録されています。


早速聴くその前に…すずめとたまきさんの関係を整理しておきます。

すずめとたまきさんの関係

当時4歳のすずめは、震災で母を失い、叔母のたまきさんに引き取られ、漁協で働く彼女の女手一つで育てられました。

すずめを引き取った当時、たまきさんは28歳でした。

その後、12年すずめの「育ての親」として一緒に暮らし、すずめは高校生に。映画のストーリーではたまきさんは40歳になっています。


そんなたまきさんのすずめへの愛は映画の随所で感じられました。

愛情たっぷりのお弁当

かわいい

長文かつ山のようなLINE、電話越しにすずめを心配に思って口うるさくしてしまう一面

銀行口座の履歴を頼りに仕事を休んですずめを探しに宮崎から東京まで飛んできて東北への道中も同行

子供が急に帰ってこなくなったらたまきさんに限らず大体の親は心配になるか笑


どれもすずめを思っての行動なのは間違いないのですが、少し「重い」ようにも感じられ、なんだか序盤は少し歪な愛のように見える行動が少しずつわかるようになります。(この辺は歌詞を見ながら…)


「Tamaki」のグッとくる歌詞

まずは聴くのが早いので聴きましょう。
他の曲に比べて歌詞が直接的で、「キャラクターに寄り添ったありのままの言葉」って感じがします。


歌詞も以下に載せておきます。

あなたが嫌いだった あなたが嫌いだった
憎まれ口ばっか叩いて変に背伸びして大人ぶるあなたが

あなたさえいなければ あなたさえいなければ
そんなこと一刹那でも考える自分がもっと嫌いだった

嫌いだった

あなたを知りたかった あなたを知りたかった
私がいなくても平気よやっていけるわみたいなあなたが

あなたが悔しかった あなたが悔しかった
私の努力などどこ吹く風で愛されるそんなあなたが

目の前のあなたの空は いつも違う色で
この世界で私だけ知ってる あなたがいることが

誇りだった

あなたは鏡だった あなたは鏡だった
あなたへの想いがそっくり私を映し思わず目を逸らした

時に親子になった 時に恋人だった
時に家族で友達で姉妹で時に赤の 他人だった

あなたが喜ぶ顔をさ 見たいと思ってるよ
でもあなたが泣いてる姿も たまにどうしようもなく 見たくなるの

あなたがいなくなったら なんにもなくなった
あなたこそが私がここに生きてた何よりの証拠だった

私はあなたの中では 何色に見えてる?
ねぇ少しずつ二人の混ぜて 新しい色になろう

伸ばしても届かない手で あなたに綴る歌
それでもあなたは間違いなく 私が生きてゆく

光だった
Source: https://www.lyrical-nonsense.com/lyrics/radwimps/tamaki/

たまきさんのアンビバレントな心情と成長

まずは衝撃的な歌い出し。

歌詞全体とタイトルを見るに、歌詞はたまきさんの心情であり、「あなた」とはおそらくすずめのことなのでしょう。


すずめのことはもちろん好き。
親同然の愛情をかけて育ててきたから当然です。
でも、すずめがいたからこそ自分の幸せを追求できなかった。

あなたさえいなければ
そんなこと一刹那でも考える自分がもっと嫌いだった
歌詞から抜粋

実際に考えることはなくても、「もし、すずめがいなかったら…」
すずめは娘同然で自分には欠かせない存在なのに、そんなことを考えている自分が嫌いになってしまうのです。


東北の道中でも、サダイジンに取り憑かれたこともあり、
すずめに対して厳しい言葉を言い放ってしまいます。

「あんたがうちに来た時、私、まだ28だった。ぜんぜん若かった。
人生で一番自由な時やった。なのに、あんたが来てから私はずっと忙しくなって(中略)

こぶ付きじゃあ婚活だって上手くいきっこないし。こんげな人生、お姉ちゃんのお金があったってぜんぜん割に合わんのよ」
小説版『すずめの戸締まり』より
「あんた、もううちから出ていきんさい!」
「私の人生返しんさい!」
小説版『すずめの戸締まり』より

この決定的な言葉は、言われたすずめだけではなく言ったたまきさん自身をも深く傷つける言葉でした。

言いたくもない言葉を自分にとって大切な人に放ってしまった。
深く後悔してすずめの前を離れて号泣してしまいます。


たまきさんの複雑な気持ちが読み取れます。。。(号泣)


時に親子になった 時に恋人だった
時に家族で友達で姉妹で時に赤の 他人だった
歌詞から抜粋

血がつながってるわけじゃない。
育ての親とはいえ、親子とも言えないこの関係の形容詞しがたさが読み取れます。

でもそこには確かに愛があった。


引き取った当初、4歳だったすずめも高校生。大きくなってどんどんたまきさんの手から離れていきます。

あなたが悔しかった
私の努力などどこ吹く風で愛されるそんなあなたが
歌詞から抜粋

こんなにもすずめのためを思って行動しているのに。
こんなにも心配をかけているのに。

すずめはそんなこと気にしていないかのように遠くにいってしまいます。

あなたを知りたかった あなたを知りたかった
私がいなくても平気よやっていけるわみたいなあなたが
歌詞から抜粋

たまきさんはそんなすずめを追いかけます。

教えてほしい。
どうしていってしまうの。


すずめが自分の手から離れたたまきさんは気づきます。

あなたがいなくなったら なんにもなくなった
あなたこそが私がここに生きてた何よりの証拠だった
歌詞から抜粋

すずめと生きてきた12年。
すずめがたまきさんが生きる理由になっていたのだと。


伸ばしても届かない手で あなたに綴る歌
それでもあなたは間違いなく 
私が生きてゆく 光だった
歌詞から抜粋

もう、届かない。
あの頃のようにすずめを追いかけても。

でも、すずめに照らされていた12年は消えない。


「いってらっしゃい」


たまきさんが一歩成長したかのような、決別のような思いを感じさせる爽やかな終わり方です。


最後に

直接的な歌詞なのもあって、ウッとくるものがあります。

たまきさんが特殊ペルソナとは言え、子が離れていくときの親の気持ちってこんなのなのかなあ。。。なんてことを考えたり。

なんにせよ、すずめとたまきさんの二人、宮城から帰る際にはどこかひと回り成長したようにも見えます。よかった。

これからも仲良く暮らしてほしいなあ(切実)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?