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スワロー亭のこと(17)コラボライブ始まる

「自家製瓢箪楽器博覧会」と題して2017年に展開したマンスリーライブは、いくつかの面でおもしろい試みだった。奥田はやはり音楽ライブをやることが好きなようなので、提案そのものもよかったと思う。

店舗空間の可能性を追求したり、スワロー亭が小規模ながらイベントをやることができる場所なのだということを周囲に知ってもらったりする機会ともなった。

それまではライブやイベントを主催するとしても、どこかに場所を借りて賃料を支払い、入場料で回収しなければならなかった。どうしても動員が気になった。しかし自分たちの店でやるなら、少なくとも会場費の心配はない。奥田の単独ライブなのでギャランティの支払いも気にしなくていい。シビアにビジネスとして見れば、まったく採算の合わない企画なのだろうが、たとえば友達を呼んでホームパーティを開くようなものだと受けとめればさして問題でもない。

マンスリーライブを1年間やりとおし、さて来年はどうしようか。

話題がここに及ぶと、奥田から提案があった。

「来年もマンスリーをやる。ただし、毎回ゲストを呼んでコラボをやりたい。」

これを聞いた中島にも異存はなかった。もともと音楽方面における奥田の才能は、共演者がいるときにこそ存分に発揮されるように感じていた。あくまでも音楽素人の中島の偏見ではあるが、奥田は伴奏名人だと思う(いわゆる身内を褒めるということを中島は滅多にしないが、今回はご容赦願いたい)。うまくはいえないが、共演者が気持ちよく演奏できるようなリアクションを、うまいタイミングで奥田は繰り出す、ように見えていた。

あるとき知り合いのバンドを招いてスワロー亭主催のライブを開くことになったとき、いろいろななりゆきで中島も奥田とともにちょっとだけ前座出演することになった。練習、リハーサル、音チェック、本番と、奥田と一緒に演奏するという体験をつうじて、上記についての「感想」はもうすこし「確信」に近づいた。奥田が一緒に演奏していると、なんだか自分が上手なプレーヤーになったような錯覚を覚えるのだ。

「こういう感じのことがやりたい」と思っていると「こういう感じのことがやりたいんでしょ?」という絶妙なパスを出してくれたり、自分が向かっていく方向に対してスイッとアシストし、心地よい流れを生んでくれたりする。あまりに自然にやってくれるので、自分がサポートを受けていることさえなかば無自覚に「いい演奏」が実現してしまい、「あれっ? なんか、自分の演奏イケてる?」と勘違いをしてしまう。中島の場合は勘違いだが、もともとすぐれた感性とテクニックをもっているミュージシャンのみなさんも、こういうふうに共演されたら上機嫌になるのではないか。素人ながらにそのように想像していた。

だから「ゲストとコラボがしたい」といわれたとき、2018年のマンスリーライブは前年よりももっと楽しく盛り上がるだろうことは目に見えるようだった。ならばなぜ、2017年のマンスリーを「単独で」と提案したかというと、これまで共演者とのコラボが盛り上がっている場面は何度も見てきたので、奥田単独の演奏を、腰を据えて観てみたかったし、お客様にも観てほしかったのだった。

2018年のマンスリーライブはシリーズ名を「御一緒」とした。

第1回のゲストは、小布施在住の打楽器奏者ヒロシマンに決まった。ヒロシマンは奥田にとって、年齢こそ親子ほども離れているものの、小布施に住んで初めてできた友達だった。

2012年、この町で最初に借りた住宅のほぼ斜め向かいくらいに、自分たちよりも3〜4カ月あとに引っ越してきたヒロシマンは、毎日近隣に太鼓の音をとどろかせていた。ある日入居あいさつにきてくれたヒロシマンと、以後親しくさせてもらい、ときどき近くの河原で一緒に演奏することもあった。

そのヒロシマンに打診したところ、ヒロシマンは二つ返事で快諾してくれた。事前にスワロー亭で音合わせをしたうえで、本番を迎えた。

第1回「御一緒」は、2018年1月18日。ヒロシマンは小布施に住んでからもライブやイベントに積極的に出演し、また音楽ワークショップなども重ねてきていた。そういうヒロシマンの声かけに、「彼のステージなら」と大勢のお客様が詰めかけてくださった。さすがである。

演奏はすべて即興によるもの。ヒロシマンと奥田はこれまでにも何回か、即興のステージを共演していたから、ある程度お互いの呼吸がつかめている部分はあったと思う。

ただ、この日はレイアウトの都合で、二人のあいだにアップライトピアノが屹立し、お互いにブラインド状態での演奏となった。つまり、相手のようすが見えない。アイコンタクトがとれない。キツい一面もあったかもしれない。しかし二人それぞれに、場数は踏んできている。本番でのアクシデントもいろいろ経験しているはずだ。それを思えば二人にとって、このシチュエーションは問題ではなかったのかもしれない。

「おもしろかった。ヒロシマンのエンターテインメント力でおおいに盛り上げてもらった。現場慣れしているヒロシマンの場づくりに助けられた面もあった。お互いに相手の姿が見えないなかでの即興演奏だったが、そのスリリングなシチュエーションもなかなか楽しめた。」

終演後、ヒロシマンとのライブを奥田はこのように振り返った。

共演者がいることの楽しさを堪能したようすの奥田。ソロライブよりも演奏中のプレッシャーが軽減されたこともあり、のびのびと演奏に興じていたようにみえた。

また、ゲストを呼ぶことで、ゲストとつながる人たちがきてくださる。その効果で、それまでスワロー亭を知らなかった人たち、知っていても入ったことがなかった人たちにも足を運んでいただくチャンスができたのは幸いだった。

ヒロシマンのキャラクターさながらに、アットホーム感も漂いつつ、にぎやかな一夜。幸先のいいスタートだった。


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本や各種印刷物などの企画・編集・執筆・デザインをはじめ、いろいろ制作をおこなう燕游舎(えんゆうしゃ)と、燕游舎が運営する古本屋スワロー亭のnoteです。
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