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農薬デマ撲滅運動 その2

【イチゴには82回も農薬散布?】
32ページには、平成27年度、某JAのイチゴ防除暦が載っています。
9月:パンチョTF水和剤2回、オーソサイド水和剤3回、
ポリオキシン水溶剤3回の計8回。
10月には、アミスター20フロアブル3回、・・・・
以下同様に殺菌剤合計で37回、殺虫剤合計で45回、
すべて合わせて82回という計算になっています。


合計82回?

パンチョTF水和剤は、パンチョTF顆粒水和剤のことでしょうか。
2回以内となってます。
オーソサイド水和剤は、いちごでは現在は、5回以内となってます。
この当時は3回以内だったのでしょうか?
ポリオキシン水溶剤は3回以内となってます。

アミスター20フロアブルは、いちごでは、
苗床4回以内、本圃3回以内となってます。
この回数というのは一作期で、使える回数のことです。
この本では3回となっている。

他の農薬について、全部は調べませんが、同様とみていいでしょう。

決して、9月にオーソサイド水和剤を3回散布することを
すすめているわけではありません。
そんな短期間に同じ農薬を3回も使えば、病気なら耐性菌が、
虫なら抵抗性が出る可能性が高くなりますから。
通常1回です。

つまり、全部の農薬の、いちごで使える最大可能性回数の合計値を、
82回と計算しているわけです。

どこかのJAの防除暦を手に入れたは、いいが、
その数字の意味することがわからないまま、
こんな本に書いているのです。
そして、この本を読んだ人が、特に調べもせずに、
そのまま信じて、デマを広げます。

そりゃー調べないですよね。
 
でも、私はこういう数字を見ると、?????と
思うのです。
いちごは、およそ半年、6か月程度の栽培期間で180日とすると、
82回も農薬散布作業してたら、
2~3日に1回散布作業していることになります。
おかしいな、となるわけです。
あと、ついでにいえば、
1回の散布作業には、殺虫剤と殺菌剤を混ぜて、
散布することが多いので、作業回数と農薬の成分回数とを
混同しているケースがよくあります。

農薬会社に30年も勤務していて、そのうち20年は営業で、
30くらいの県でいろんな農業現場みてきましたから。
オーソサイド水和剤も、ポリオキシン水溶剤も、
アミスター20フロアブルも、私の会社で売ってましたから。
いまは、それぞれ別会社になってますけど。

さらに、「それらの農薬のほとんどが収穫前日まで使用できるということは、輸送の際に虫に食われないためでしょうが、イチゴを食べる時まで残留している可能性もあります。」と書いてあります。
「収穫前日」というのは、いちごのようになり始めると毎日収穫する作物(ほかにはトマトやきゅうり、なすなど)の場合、3日前や7日前などという登録内容では、使えない農薬になってしまうので、
メーカーが努力して「前日」となるようにしているのです。
3日も7日も収穫できず、待っていてはデカくなりすぎて、
売り物にならない果実になってしまうからです。
残留している可能性もありますが、
毎日食べても影響ない量が計算されており安全と認められておりますので、
イチゴ狩りに行って、洗わずに食べても大丈夫です。
いちごなんて、ごはんと違って、毎日は食べないでしょ。

発がん性ありとされてる「おこげ」のついた焼き鳥食べながら、
発がん性ありとされてるアルコール飲料を飲んでる人、
たくさんいますよね。
でも、毎日大量に、ではないから、大丈夫なのです。
問題ありません。

ちなみに私の住む長野県での慣行栽培基準は以下のとおり。

長野県は48回【延べ有効成分数】
ランナー切離~定植: 殺菌剤8,殺虫剤4
定植~開花前: 殺菌剤4、殺虫剤6、除草剤1
収穫期以降: 殺菌剤11,殺虫剤14
いちごは17ページ
https://www.pref.nagano.lg.jp/nogi/sangyo/nogyo/documents/kijun_4.pdf


これが32ページ全体


本の表紙

26ページには、いつもの農薬大国のグラフ

日本は世界3位の農薬大国?

このグラフの、いい加減さについては、
別の記事で述べていますので、
そちらをご覧ください。

以下に、現時点でのいくつかの農薬の登録内容を貼り付けておきます。

パンチョTF顆粒水和剤 2回以内
https://www.nippon-soda.co.jp/nougyo/product/4320/

オーソサイド水和剤 5回以内
https://www.arystalifescience.jp/catalog/p_orthocide80.php

ポリオキシン水溶剤 3回以内
https://www.kaken.co.jp/nou_doubutsu/agro/01.html

アミスター20フロアブル 苗床4回以内、本圃3回以内
https://cp-product.syngenta.co.jp/product/amistar_20sc

最後に
申し添えますが、この本のすべてが、デタラメだというつもりは
ありません。
少しでも農薬なしで作物ができるならそれが一番だと、
私も思いますが、ネオニコチノイド系農薬は減らしたけど、
他の殺虫剤は増えた、という結果となりえるので、
各段階での努力が必要だと思っています。





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