【イノベーション】ライブエンタメが生き残る新しい方法【ビジネス】
昼でも夜でもおはようございます。
エンタメ業界ではたらくサラリーマンです。
このところvoicy(ボイシー)をよく聞いています。
音声メディアと言われるものですね。
ご存知の方も多いと思います。
ラジオみたいなものですが、パーソナリティが一個人なのですね。
誰もが情報発信できる、すごい時代になったと思います。
そのvoicyで、キングコングの西野亮廣さんが、ここ数日連続で興味深いテーマでお話しをされていました。
ライブエンタメビジネスの在り方についてで、常々、自分が課題としていたことをわかりやすく言語化してくださっていたので、その内容を紹介しながら、自分の考えも書いていきたいと思います。
興味のある方は、西野さんのvoicyも併せて聴いてもらえればと思います。
面白かったよ!参考になった!という方はフォローしてもらえると嬉しいです。
破壊的イノベーションを仕掛けるタイミング
早速、タイトルに出てくる「破壊的イノベーション」という単語に耳慣れないな~と思う方もおられるかもしれません。
元ネタは、こちらは書籍です。
「イノベーション」とは何か?という説明は本書に譲ります。
ここでは簡単な説明に留めます。
イノベーションとは「革新」のことです。
ビジネスの世界では主に「技術革新」の意味で使われることが多いです。
例えば、テレビ等ように、より大きく、より薄型になり、画質がきれいになり、良い音が出せるようになる、といった改善・改良の技術を「持続的イノベーション」といいます。
それに対して、ガラケーが中心だった携帯電話市場に投入されたiPhoneのように、これまで存在しなかった「スマートフォン」という概念を持ち込むことで、従来の携帯電話の市場そのものが完全に塗り替わるような技術を「破壊的イノベーション」、と定義づけています。
まず、この前提を踏まえた上で「破壊的イノベーション」を仕掛けるタイミングはいつなのか?ということについて、西野さんはこう言っています。
「破壊的イノベーションを仕掛けるタイミングは、体力に余裕のあるとき」
まさしくそうだな~と思います。
元ネタの書籍のタイトルは「イノベーションのジレンマ」です。
そう、ここには「ジレンマ」があるのです。
つまり、持続的イノベーションによって成功、成長してきた場合、改善、改良、あるいは拡大路線といった、従来のビジネスのベクトルの延長線上にあるものを突き詰めていくことが正義だと考えます。
より良い商品を作れば売れるはずだ!
より多く売れれば儲かるはずだ!
もっとニーズを掘り下げれば売れるはずだ!
という考えに囚われて、ここから大きく外れた発想をすることが出来ないのです。
むしろ、今の成功体験が邪魔をして新しいことにチャレンジできなくなるのです。
同じことをやっていた方が、効率よく稼ぐことができるからです。
予測もしやすいですし、無駄なことをしなくて済みますし、だから時間をかけることも出来て、さらにビジネスを伸ばすことが出来るからです。
そして、これは決して悪いことではないのです。
習熟の結果として、学びの結果として、より大きな成果を得ることが出来るわけですから。
しかし、どんな業界でもいつかは必ず、新しい技術やビジネスが生まれて、これまでの市場が壊滅するときが来るのです。
そう「破壊的イノベーション」が、全てを駆逐していくからです。
では、どこか他の企業が「破壊的イノベーション」で業界を席捲していくのを指をくわえて見ているしかないのでしょうか?
そんなことはありません。
AppleはiPod/iTunesで音楽市場を塗り替えていたときに故スティーブ・ジョブズらは議論を重ねていました。
「徹底的にやられる可能性があるのは携帯電話」
スティーブ・ジョブズは、日本のNTTドコモがガラケー時代にやっていたi-modeというサービスをよく見ていました。
ここではウェブページの閲覧やメールの送受信、そして着メロ・着うたといったコンテンツを提供していた世界初の携帯電話IP接続サービスを提供していました。
つまり、携帯電話で本格的な音楽再生サービスを持って来られたとき、iPodはピンチになる、という議論がAppleのなかでされていたのです。
Appleはそれを防ぐために、それをさらに上回るために、iPhoneを開発したのです。
「電話が出来るiPod」「インターネットに繋がる電話」の誕生です。
これによって、Appleは既に大成功を収めていた自社製品であるiPodのニーズが落ちていくことは明白でした。
しかし、それでもやるしかありませんでした。
このときスティーブ・ジョブズはこう言いました。
「自分たちで食わなければ、他の誰かに食われるだけだからね。」
絶好調だったからこそ、新しい製品の開発に乗り出す、という判断ができる経営者が世界にどれだけいるでしょうか?
普通は、既存の売り上げに固執してしまうものだと思います。
西野さんの、今回の「ファミリーミュージカル えんとつ町のプペル」で行なおうとしている新たな試みについて紹介されていました。
出演者の動員力に比べて小さいキャパシティを選んだ理由は、
ミュージカル用に設計された会場でなくても成功すれば、どこでも出来るから。
コロナ禍では、勝つ打ち手よりも、死なない打ち手を取るべきだから。
そのためには、オフラインのチケットに体重を乗せ過ぎてはいけない、他の収益を得る方法を試してみるべき。
ということです。
出演者や作品のパワーがあるため、チケットが売りやすい座組になっています。
だからこそ、チケットの売り上げに頼ってしまいがちです。
ニーズがあると、つい手を出してしまいます。
そして手放せなくなってしまいます。
つまり、より大きな会場で、多くのお客様を動員したくなってしまいます。
売れることが読めるし、やり方もわかっているからです。
しかし、これを続けていったとして、いつかニーズが縮小し、ジリ貧になってきたときに、新しいことを試そうと思っても、その体力が無くなってしまっているかもしれません。
だからこそ、今試すべきだ、目先の利益に囚われるのではなく、余裕のある今こそ、危機的状況でも生き残れる方法を試して、検証するべきだ、というわけです。
稽古場風景や台本の読み合わせをオンラインで販売する等の手法が、破壊的イノベーションと言えるかわかりませんが、少なくとも制作過程を見せるということについては、これまでにはやってこなかった手法です。
DVDでの特典映像などでは使われてきたことを思えば、ファンが求めるものなのは間違いないと思いますし、制作過程はどんな作品にも必ず存在するものですから、これが定着すれば「破壊的」、というか新たな市場が生まれるのは間違いありません。
コロナ禍のチーム(会社)を苦しめるモノの正体
次に、このタイトルです。
結論を言ってしまうと、それは「慣習」です。
業界にはそれぞれ先人たちが練り上げ、守ってきた「慣習」や「風習」、「伝統」といったものがあります。
これは、先の「制作過程を見せる」についてもそうです。
「作品の裏側を見せるのは基本的にはタブー」というのは慣習です。
それはそうですよね、と我々の業界では当たり前に思っています。
勿論、完成品(実演)を観て頂くことが目的であり、それこそが商品なのですから。
しかし、どういった想いで、どういった試行錯誤で、作品が作られていったのか、については興味を持つ人は非常に多いのも事実です。
これ自体にニーズがあることもわかっています。
バックステージツアーや、リハーサル見学、楽屋での出待ち、というのは「少しでもアーティスト(や作品)のことを深く理解したい」という強い気持ちから来るものです。
実際、時々はこれらを販売していることもありますが、大原則としてはタブー、NG行為です。
でも、改めてどうしてダメなのか?については、深く議論してみても良さそうですよね?
ニーズがあるなら売ることも出来る、特にコロナ禍で収益が減るなか、キャッシュポイントを増やそうと思えば、新たなことも試していきたい。
舞台の裏側を見せるなんて、今までやったことがない。
それって大丈夫なの?
それはちょっと…。
と、誰か1人ではなく皆が少しづつ腰が引けて、そのままフェイドアウトしてしまうのです。
オンラインライブは昨年から急速に普及し、ニーズがあって、市場があることもわかりましたが、実は数年前から技術的には可能でしたし、時々は実施しているアーティストもいました。
しかし、業界の大多数の反応は薄いものでした。
そんなの売れないでしょ。
生で観るからいいんじゃないか。
そんなことをしたら、ライブが売れなくなる。
こういった反応が大半でした。
ライブを配信するなんてやってことがない、ライブはそういうものじゃない、という考えが土台にあったからだと思います。
しかし、いざコロナ禍で、リアルライブが出来なくなると猫も杓子も配信に頼り始めました。
それも、ただのライブを配信するだけに留まっていて、新たな価値提供を出来ずにいます。
今は「接触を避ける」「密集を避ける」という目的の為だけに行なわれているオンラインライブですが、一部で「世界中を市場として販売できるチャンス」と考えているアーティストもいます。
ピンチになった今だから気づけたことかもしれませんが、余裕のあるときに「リアルのライブが駆逐される可能性があるとしたら、どういった手法か?」を問いかけていれば、今回のようないざというときに、もっと機動的に新たなエンタテインメントの可能性を提示出来ていたかもしれませんよね。
「イノベーションの種類」をチームでキチンと理解・共有しよう
今、それぞれがやっていることは「持続的イノベーション」なのか、それとも「破壊的イノベーション」なのかを、チーム(会社)で認識しておく必要がある、ということです。
どちらが良いということではありません。
むしろ、両方必要なのです。
「破壊的イノベーション」によって荒削りの新技術、新ビジネスが出てきても、より良いサービス、使い勝手の良さ、利便性の向上、といった地道な改良、つまり「持続的イノベーション」が無ければ、それは定着しません。
かといって、「持続的イノベーション」だけを仕事だと思い込んでしまうと、市場が吹っ飛んだときには生き残る術が無くなります。
自分たちがやっていることがどちらなのか、把握しておくことが大切です。
万が一、今やっていることが出来なくなったらどうするのか?
また今の仕事が無くなるとしたら、どんな状況か?
定期的に振り返りたい問いですね。
タイミングを見て、ある程度のリスクを取りながら、新たな領域を開拓していくといった判断が必要になります。
特に、企業の場合は、オーナーや経営幹部の考え方というのも、判断に影響します。
切羽詰まっている会社は有無を言わせずやるしかありませんが、ある程度余裕のある会社で、オーナーや経営幹部が逃げ切ってしまえる場合には、新たな挑戦に対して慎重になり過ぎる場合もあります。
中堅や若手は、会社がどういうスタンスを取るのかもよく見ておく必要があるかもしれませんね。
まとめ
今回コロナ禍で、エンタメ業界は身に染みて、自分たちの業界が弱いことを感じました。
今まで同じじゃダメだ、何か違うことをやらないと、とみんなが思っています。
それでも、無理やり大きなサイズの会場でリアルライブの実施だけを追求するという無謀なことを、危険を冒してまで続けるのでしょうか?
それとも、今すぐに成功の果実を手にすることが出来なくても、オンラインで提供できる価値を模索し、そのためにリスクを取って投資していくでしょうか?
あるいは、一部のエンタテインメントを渇望する客層に提供する価値を極大化して、価格に転嫁するでしょうか?
あるいは、活動の中で他のキャッシュポイント創り出すことで、作品の価値を広げるでしょうか?
自分が生き残るために考えるのが第一なのは間違いありませんが、世間の大きな流れがどこに向かうのかをよく見ることで、新たな発想が生まれると思います。
今やっていることが無くなってしまう可能性があるとしたら、どんな状況か?
そうならないために出来ることは何か?
なったとしても生き残るためには何が必要か?
それぞれの立場で考えてみてはいかがでしょうか。
以上、参考になれば嬉しいです。
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