アサヤンVol.16「砲撃!週刊文春ナイト」
2021年のアサヤン
2021年7月20日ーーーー。
自らが運営するYouTubeチャンネル「Planet of Food」の編集作業に追われていた。いつもより、遅くアサヤンが開催される阿佐ヶ谷ロフトAに入る。今回のアサヤンは、「2016年の週刊文春」を著者である柳澤健さん、東野幸治さんを迎えての回である。会場には芸人さん、メインの回とは違う空気が漂う。最近、とかく評価がすこぶるいい無法松もこの日の出番は前説だけで、顔にも気楽さが見える。「島津さん、前説の練習しちゃいましたよー。」と、どうでもいい報告を受けながら、和やかな時を過ごていると、身長175センチはあろうか、髪がボサっした男が入ってくる。一目見ただけで、ただならぬサブカル臭が漂う。手には小山田圭吾がトップの見出しを飾る東スポが握りしめられている。男は大きな背中を丸めながら水道橋博士の楽屋へと入っていった。誰あろう、博士の藝人春秋ではすっかりお馴染みの目崎敬三さんだった。
とまあ、いつもと違う書き出しをしてみたが、今回のメインは柳澤健さんの著書「2016年の週刊文春」をベースとしたライブである。
ライブに先駆け、私も拝読させていただいた。500ページを超えるノンフィクション大作なのだが、一たびページをめくれば圧倒的な面白さにグイグイ引き込まれる。正直なところを言うと、普段、ゴシップ記事を私はあまり読むタイプではない、週刊文春においては故・ナンシー関さんの「テレビ消灯時間」やそれこそ近田春夫さんの「考えるヒット」が読みたくて欠かさず、読んでいたタイプだ。とはいえだ。今回も登壇する高須Dの下で若手で付いていたころ、高須さんは毎週、ADや私にコンビニに行かせては雑誌、週刊誌、テレビ誌を7,8誌は最低、買い込み、編集所のソファで読み耽っていた。その姿を見ては、「テレビマンたる者、雑誌にすべてに目を通さなくてはいけないのか!」と刺激を受け、私も漫画喫茶に足を運んでは片っ端から雑誌をめくり、それこそ、「女性セブン」や「AERA」など、ジャンルを超えて読み漁っていた時代もあった。そんな無意識に情報を吸収してきたせいか、「週刊誌」と言うものに対し、深く考えてきたことはなかった。しかし、今回の機会を得て、柳澤さんの著作に読み、「スクープとは何か?」「日本における週刊誌とは何か?」を思いを巡らすいい機会となった。
著者の柳澤健さん。高須D「猫ひろしさん、じゃないですよね?」
本の詳しい中身を知りたい方はぜひ、博士の書評を読んでいただきたい。ライバル誌である「週刊新潮」側の目線も織り交ぜながらの解説は必読であろう。
とはいえ、私なりの解釈と、私なりの琴線に触れたポイントも踏まえて少し書かせてもらおう。
「人間は誰でも一皮むけば、金と女と名誉が好きな俗物です。僕も狂的な俗物です。」と週刊新潮を成功に導いたひとりの天才、齋藤十一を評して、ノンフィクション作家の佐野真一さんが書いた一節である。言い得て妙だ。かくいう私もまた、気づいたら「バイキングで、ゆうこりんが離婚?別居?くだらねえなあ」とか言いながらゴシップネタに触れている。週刊誌の記者からすれば「ほらー、あんたも結局、好きでしょ?」と言われてる気がしないでもない。ああ、言おう。小山田圭吾のニュースなんか、まだ欲しがってるよ。俺は!!ヤフコメの反応なんか、見ちゃってるよ!!というのは読者としての私だが、作り手側の目線に立てば、それはまた、実に興味深い。
平たく言うと「2016年の週刊文春」はまるで「ジョジョの奇妙な冒険」を読んでいる気分であった。文藝春秋の成り立ち、創業者である作家・菊池寛さんの編集者としての天賦の才、そして貧しい作家たちの収益の場を作ること、本の売れない2月、8月の時期に「芥川賞」「直木賞」を創設することに始まり、政治からプロ野球、さらには人間の現象を盛り込める大きな袋を作ったこと。文藝春秋とは何なのか、週刊文春とは何なのか?その社風の原点を知るだけでグイグイ引き込まれた。
そしてさらに花田紀凱さんと新谷学さんという時代を超えた二人のカリスマ編集者の存在はジョジョ気分だ。文藝春秋のDNAを引き継ぎながらも、魅力の異なる二人の主人公が仕事の仕方や人との接し方は、「仕事論」としての側面としても興味深いエピソードばかりである。ミクロの視点で言えば、各スクープの背景も楽しめるが、「どう女性層を取り込めばいいのか?」「どうすれば、ヘアヌードを前面に出す週刊現代、週刊ポストに立ち向かえるのか?」「どうすれば、週刊新潮に勝てるのか?」「どうすれば、訴訟において負けないのか?」「どうすれば、スクープは取れるのか?」めくるめく敵に向き合い、乗り越えていくエピソードの数々には「最終的には、勝っちゃうんでしょ?」と分かっていながら、創作ではない実話としての凄みに時に刺激を受け、時に我が身と照らし合わせる。(テリー伊藤さんの下の職場も負けず劣らず、、、。)
特筆すべきは二つの名言だ。
「野獣に人権はない。」
コンクリート殺人事件における花田編集長の実名報道に対する言葉と
「親しき仲にもスキャンダル」
小泉政権時代にお世話になった飯島秘書官の関係者にも容赦なく、記事を載せた新谷学編集長の話には、驚愕をさせられた。
マクロの視点で見れば、業界の構造的な面白さである。週刊文春の凄さとは結局、何なのか?スクープとは何か?を考えた時に付きまとうのが「忖度」である。
〇2012年5月31日号
「これが突然休養の真相だ!沢尻エリカは大麻中毒」
〇2012年6月28日号。
「巨人原監督が元暴力団員に一億円を払っていた」
〇2014年3月13日号
「清原和博 緊急入院 薬物でボロボロ」
いずれの記事も出た時は衝撃を受けたが沢尻の件にしろ、清原の件にしろ、テレビのワイドショーが後追いしたのは、逮捕をされた後の話である。つまりは大手メディアが追従しない限り、スクープは拡散しない。その背景には大手メディアは、自社でタレントの写真集を販売したり、芸能事務所の顔色を窺い、忖度する。これは立場を変えれば分かる。巨大な組織に身を置けば「忖度」せざるを得ないのが今の日本のメディアの宿痾だ。(勝谷政彦風)それを突破する「週刊文春」という存在が、新谷学編集長の姿勢がいかにすごい事なのか!柳澤さんの著書を通じて身に染みるのだ。(余談だが、元2ちゃんねる創設者・ひろゆきが人気なのも忖度しなくていいポジションが成せる術(わざ)という側面もあるだろう。)島田紳助さんはヤクザとの付き合いで芸能界を引退したが、原監督に至っては未だに監督をしていたりする。これについてはアサヤンの本編においても博士が触れるが、文春は「社会正義じゃない。Human Interestingである。」ということなのだろう。
ややもすると、週刊文春は「必殺仕事人」みたいな法で裁けない悪を裁くのだ!!と見られがちだが、そうではない。あくまでも底流に流れるのは「人間の業って面白いよねって!」ことじゃないかと思う。ベッキーの不倫では墓穴を掘ったのはベッキー本人であり、そのきっかけにすぎない。(別に休業を望んではいないだろう。)また、三代目JSBがレコード大賞の買収事件が起きても、そのきっかけは与えるが、どう判断するかはメディアや大衆次第である。原監督にしろ、三代目JSBが今も活躍する姿を見ると、「Human Interestingである」という姿勢ではないのか?
本を締めくくるラスボスが「紙媒体の衰退」である。これはスマホに端を発した産業革命とも言うべき、時代の転換期に立ち向かう姿が描写されている。これは別にゲーム業界だろうが音楽業界だろうが、それこそ農業だろうが、誰もが発信者になれる時代にどう戦うのか?働く人すべての人の共通テーマだ。ジョジョの奇妙な冒険の「人間賛歌」とは違う「週刊文春の奇妙な冒険」の「人間の業を楽しむ」一冊がここにある!「2016年の週刊文春」をどう読むか?二人のカリスマ編集長の英雄譚、スクープと戦う裏側、メディアの構造話、満貫全席のような味わいの多様さを柳澤さんが仕込んでいる!
さあ、では今回のアサヤンである。
前半はニコニコ動画で配信された再現ドラマ仕立てのスクープの裏側である。
・ベッキー&川谷絵音の取材の裏側
・甘利大臣の収賄の裏側
・神戸連続児童殺傷事件の少年Aの今を巡る取材
・舛添元知事の公用車問題
「親しき仲にもスキャンダル!」新谷学編集長の真髄がここに!
本編1時間18分のものを45分にしたものである。
製作総指揮が元日本テレビ(現在、ドワンゴ モバイル事業本部エグゼクティブプロデューサー)の吉川圭三さんが務めたものだ。スクープとはどう生まれるのか?張り込み、行動パターンからの推測と刑事ドラマさながらのスリリングさとリアリティーが圧倒的に面白い。ショーンKと元宮崎謙介議員がカットされたという話だが、俄然、そちらも見たくなる面白さであった。
後半からは著者の柳澤健さん、中村竜太郎さん、目崎敬三さんを迎えてのトーク。「2016年の週刊文春」をベースにしたエピソードの数々。今、話題の「小山田圭吾」と宅八郎がつながりや「おいしい生活」(注:糸井重里さんが西武百貨店につけたコピー)に対抗していた時代背景話。ジャニーさんの姉・メリー喜多川さんから呼び出された話など、下世話心をくすぐる話はやはり、つい引き込まれる。個人的には柳澤さんの「1976年のアントニオ猪木」「1984年のUWF」における年号からの『の』を付けるタイトルのネーミング話など、その手法はどこかでパクリたいと思ったほどだ。(で、冒頭で使ってみた。)
ヤクザの事務所で監禁された時の対処法、教えます! by中村竜太郎
「博士は目崎さんと出会えてよかったですよ」by 中村竜太郎。ホントはエライ目崎敬三さん。
「ホンマ、ボクはバラエティ役者なんです。(共演者のネタを知ってても)素知らぬフリをするんです。」by 東野幸治
高須D「真っ昼ま王」で会ってます!
今宵は東野砲が次々に炸裂!
そして大阪の仕事を終えた東野幸治さんがたくさんの付箋が付いた本を引っさげて合流。普段は港区、渋谷区を中心に活躍される東野さんの「阿佐ヶ谷いじり」にいきなりの爆笑だ。
また、数々の事件、スクープへの思い入れが柳澤さん、中村さんを目の前に次々と東野砲が炸裂していく。その一部を書けば・・・
〇 女性読者獲得。部数躍進。アグネス論争
「アグネス・チャンは日本人嫌い、日本人を食い物にして説教する歩く中華思想」
〇「パチンコ業界脱税資金との癒着を暴く。土井たか子社会党 金まみれ スキャンダル」
〇「フジテレビ新ニュースの顔の正体。ショーンKのウソ」
これについての東野幸治さんの思い、質問がバンバン乱れ飛ぶ!
似た者同士
などを皮切りに「熊田曜子話」「今田耕司さんのAV話」さらには「紀州のドンファン妻とのツーショット話の裏側」と普段はMCを務めるがゆえにテレビでは披露されることのないエピソードは「これ配信してますけど。」と言いたくなる話の連発であった。
博士「(ドンファン妻話を聞いて)
なんでこれ、テレビで話さないんですか?」
東野「芸能界のど真ん中、歩きたいんです!」
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「芸能界のど真ん中、歩きたいねん!」
そして次回は、、、
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執筆者:島津秀泰(放送作家)
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