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ちょっとしたきっかけ

小五のとき、歯痛で休んだ担任の代わりに一日だけ美術の先生が教えに来た。国語の授業で、その先生が「このなかにひとつ素晴らしい作文があります」と、岡崎さんの作品を激賞した。なんの取り柄もない自分が初めて褒められた。そこから書くこと、読むことを意識するようになった。

大平一枝 「あの人の宝物:人生の起点となった大切なモノ、16の物語」

「あの人の宝物」シリーズより。
「あの人の宝物」の良さは、16人の人生を直接ヒアリングするのではなくて、"宝物"を取材することでその人の人生を豊かなエピソードとともにたどって行けることにあるのだと感じています。"宝物"を見ながら話すことによって、当時の想いとか感情がみるみる湧き上がってきて、的確に描写する言葉でもって紹介されるんだと思います。

さて、今日の言葉はその中からライター、書評家の岡崎武志さん。
岡崎さんの書斎は足場がないほどの本たちで埋まっている。それほど本、特に古本が好きで、今のライターという仕事にもつながっている。

でも意外なことに岡崎さんはご自身のことを、次のように語ります。

「取り立てて特技もなく、なにをやっても冴えない。人より劣っているという意識は子どものころから強かったです」

大平一枝 「あの人の宝物:人生の起点となった大切なモノ、16の物語」

岡崎さんの宝物にまつわるエピソードを読むと、ご家庭の事情が高校生のときに一変して生活が苦しい状況になった。就職も思うようにならない状況の中、「失敗したら散ってもいい」と一念発起してライターの世界に飛び込み、紆余曲折ありながらも現在のご活躍ぶりに至る、というもの。

なぜ本を好み、ライターの世界に飛び込んだか、というきっかけが今日の言葉。たまたま休んだ担任の代わりに来た美術の先生に褒められたことがきっかけと言います。この偶然の出会いと作文を書いた偶然の出来事が岡崎さんの将来を形作るきっかけとなったというエピソード。この、ほんの些細な偶然に出会わなければ岡崎さんの現在はなかったかもしれない。そう考えると、私たちも日々の生活の中で起こった偶然が何かのきっかけになって生き方に影響を与える、という可能性があるということ。そういう偶然は当然予期せず表れるものですから、期待しすぎず、でも楽観的に日々を暮らしてみると、ふとしたところに人生のきっかけが見つけられるかもしれません。それはもちろん過去(特に子どものころ)を振り返ってみてもいいし、これからの人生に期待するのもいい。

きっかけというものは、どこに転がっているかわからない。

#適応障害 #パニック障害 #うつ病 #鬱 #HSP

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