詩) 傾いたページ
傾いたページ
斜めに傾いたままの
その本のページを眺めている
文字で書き記された海景
それに注がれていた視線を辿る
かすかな疼痛が刺さり
次第次第に私自身のものとなってゆく
視線が海景との境に見出したものこそ
すなわち、この文字を受精させたもの
陽光と泡沫との邂逅が生み出すもの
ひらひらとした更紗のヴェール
視線が吸い込まれようとする
じりじりと吸い寄せられてゆく―――
しかし、そのたびに裏切られる
雲と、風のそ知らぬ軽いひと薙ぎで
さまよい、慄える現実の「我」が
返し波とともに砂の上を遠くへ引き摺られてゆく
この本も恐らくそのようにして
するりと傾いたものにちがいない
喪失の鈍い痛みが散らばってゆく
薄められてゆく
そのままに筆が執られ
記されてゆく―――
そうした本の文字を追ってゆく
傾いたままのページを眺めている
(2005.2.13)
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