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「問い」から始まる文章も良い

普段、編集者という仕事柄、何か文章を書く時に「誰に」「何を」伝えて「どうなって欲しい」のかを考えてから始めることが多い。

いろいろな文章にまつわる本にも、そういう風に書くと良いですよ、と書かれている。

それだけではなく、「伝わる文章」というのはたくさんの条件があり、普段それに準拠して書いていると、雑記的に何かを書くことに対して非常に腰が重くなっていることに気づく。

「伝えること」が最初から明確になった状態で文章を書き始めるのももちろん良いけれど、なんとなく頭に浮かんだ答えの見えていない「問い」からはじめて、だらだらと書き進める間に伝えたいことを見つけていくのも、それはそれで良いのではないか、と最近思うようになってきた。

文章を書く行為は、自分の思考を深く、深く掘っていくことだ。なんの変哲もない岩から彫刻を削り出すように。浅瀬から深海に潜っていくように。トンネルを少しづつ掘っていくように。(「考える」を喩えで表そうとするとき、自分は絶対に山登りやマラソンのようにゴールが明確なものを出さないのは面白い思考傾向だなと思う)

「問い」から文章を書いてみることは、結果的に「ゴール」のある文章を書きやすくなることにつながる。文章の巧さを何で定義するかは人それぞれだと思うが、いくらテクニックを持っていたとしても、そもそも書き手の考えが浅かったら、伝わる量も浅くなってしまう。逆に、ちょっと文法的におかしくても、とても考えられた文章は人の心にずんと残る。

自分がライターを始めた時、正直ロジカルに文章を書くとも、構成を作ることも知らなかった。ただ、自分のなかの衝動を書き殴っていた。だが、それでも響く人にはちゃんと響いていた。それは、書き連ねた文章にまつわる「問い」に対して、普段から自分がずっと考えていたことだからだろう。だから、ゴールである伝えたいことも研ぎ澄まされたものになった。

自分の周りにも特段文章の訓練や文章を書くことを本業としてない人がたくさんいるが、いろいろなことに「問い」を立て、四六時中考えている人の文章は、ただ情報をまとめているだけの文章より圧倒的に面白い。文法的に間違っていても、そんなのは関係ない。

もちろん、何か公式なメディアに出すのであれば、編集や校閲を通して、より読みやすい文章に整えていく必要はあるだろう。だけど、その前段として「問い」から始める雑記的なものを日頃の思考の訓練としして行うことは、同じくらい必要なことだ。

「問い」から始まる文章の先にたどり着いた答えが、他の人から見た時間違っていてもそれは関係ない。自分で立てた「問い」に自分なりの「答え」があることと、その「答え」にたどり着くまでの思考の過程を積み重ねることの方が「答え」の確からしさよりも価値があるからだ。

「問い」から始まる文章は、もしかしたら多くの人にシェアされたり、イイネをもらいにくいかもしれない。どうしても公の場に公開すると、少なからず「たくさんの人に読んで欲しいな」という欲が出る。自分も出る。でも、それは悪いことじゃない。読んでもらったら万々歳だし、読まれなくても、次にどこかの大舞台で書く文章の糧につながれば十分だ。

「問い」といっても、別に難しく考える必要はない。なんで好きなんだろう、なんで嫌いなんだろうから発展させれば良いと思う。最近、いろいろなクリエイターの方が「まずは自分の好き嫌いに正直になってみるのが大切ですね」といった趣旨の内容をコメントしたり、書いたりしている記事にたまたまよく出くわすのだけど、良いものを作るには、自分の好き・嫌いを明確にするだけでも構わないのだ。

そして「問い」なんていくらでも転がっている。今パッと思いついたもので言うと、とあるグラビアのキャッチコピーに「はい、天使」と書いてあるのを見かけた。

なぜ、「はい」をつけたんだろう、「やっぱり」じゃダメなのかな、「はい」を枕におくとどんな効果があるのかな、など短文一つでもいくらでも「問い」は見つけられる。

「問い」に対して最初はだらだらと考えの赴くままに書けば良いと思うし、気になるなら、後で読み返して削って整えて公開すれば良い。

これまではいざnoteを書こうとすると、「ちゃんとした文章を書かないと、、、」と億劫になってタイピングが止まっていたのだけど、今後は「問い」から始まる雑記をどんどん書いて、ゆくゆくは徒然草みたいに膨大な日記となり、数年後に読み返して「こんなこと考えてたんだー」と笑えるようになりたいと思う。

この文章を読んで「問い」を発端に気軽に文章を書く人が増えたら、とても嬉しいなと思う。

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