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WSETとの出会いに感謝!ワインを深く知った今だからこそ発信したい想いがある

ワインのプロたちは、どんな想いでワインと向き合っているのか?スタッフの仕事に対する想いやこだわりを伝える「わたしとワイン」

広報室:辻本愛子

近年、「ソムリエ」「ワインエキスパート」とは違うワインの資格、WSET(ダブリュー・エス・イー・ティー)の取得を目指す人が増えてきました。

WSETはイギリス・ロンドンに本部を置いている世界最大のワイン教育機関であり、認定試験を4段階で実施しています。中でも最難関資格(level 4)と位置付けられているのがWSET level 4 Diplomaです。

2021年2月、辻本は対策を重ねて試験に臨み、エノテカ初のWSET level 4 Diploma合格者となりました。エノテカの広報担当として各種メディアの問い合わせ対応とニュースリリース発信を中心に仕事をしている彼女に試験の事はもちろん、ワインや仕事に対する想いを伺いました。

世界で最も受験者が多いWSET

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―2021年2月にWSET Level 4 Diplomaを取得されましたが、どのような資格なのでしょうか?

WSET(Wine and Spirits Education Trust)とは、イギリス・ロンドンに本部を置いている世界最大のワイン教育機関となります。そのWSETが認定試験を4段階で実施しており、世界で最も受験者が多い資格です。

ソムリエの資格は各国に拠点があって、日本であれば日本ソムリエ協会が資格を認定していますが、WSETについては国際的に認められている世界共通の資格となります。

今回、私が取得したWSET Level 4 Diplomaは、 専門家としてワインの評価ができる能力を認定する資格です。

言語は英語のみで、ワインの知識だけでなく、論文を書いたりする力も求められます。現在、日本での資格取得者は100名程度と伺っています。(2021年9月現在)

ワインエキスパートやソムリエの資格は「お客様に向かってワインをはじめとする飲料をプレゼンする力」が試されますが、WSETはワイントレードに関わるプロフェッショナルを養成することを目的としているので、例えば、未知のワインに出会った時に、いくらなら、どのようなマーケットで売れるのか、そういったことを考える力が求められます。

英語のライティングに勉強を費やす日々

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―勉強時間が600時間必要と伺いましたが、お子さんもいらっしゃる中でどうやって勉強したんですか?

これは根性です。受験期子供はちょうど0歳で大人しく1日15時間くらい寝てくれる子だったんです。ある意味ラッキーだったのかもしれません。

大学の頃の先輩から「子供が2歳になると時間がなくなるよ」と聞いていたので、チャンスは今しかないと思って、1日8時間勉強に費やしました。

―労働時間と同じじゃないですか!?英語はもともと得意だったんですか?
TOEICは780点で、英語で論文を書くには全く足りませんでした。

12年分の過去問が掲載されているんですが、当初は問題を見た時に1枚も書けなかったんです。ただ書くだけではなく、書くスピードも求められているので、30分ごとにストップウォッチをかけて、タイムトレーニングをひたすら行いました。

今までは受験勉強のための英語だったので、自分の中で全く使えていなくて、まずは書き方を自分の中で学んでいきました。リードを付けた後はボディを付けて、最後にコンクルージョンを付けるというのを30分以内にできるようにしていった感じです。

全てワインの勉強に費やすというよりも英語が半分くらいあると思います。英語ができる人(ライティングができる人)にとっては、もう少し容易に取得できる資格なのかもしれません。

学んできた知識が「点」から「線」へ繋がった

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―辻本さんはエノテカに入社するまではワインを飲んでいなかったと聞きました。

そうです。ワインの勉強を始めたのはエノテカに入社してからですね。入社前はイタリアで8か月ほど仕事をしていました。2015年にイタリアで開催されたミラノ万博での単発のお仕事なんですけど、たまたま募集していて…。

その前は化粧品会社で商品企画やマーケティング、営業を担当していたんですが、当時はワインを殆ど飲んでいなくて、ワインの知識は一切ありませんでした。

ミラノ万博は、万博史上初めて食に特化した万博だったので、イタリアのワインを何でも試飲できるパビリオンなどもありました。100か国以上が参加している万博で、たくさんの館が郷土料理とワインを出していたので、その期間にいろんな国の料理とワインを楽しみましたが、ワインへの興味と言えばそれくらいですね。

―ワインが楽しくなったきっかけを教えてください。

WSET level3の勉強を始めたころですね。

ワインエキスパートの試験は暗記問題が多いと感じたんですが、WSETはAだからB、BだからCみたいな感じで、ワインの知識が確実に積み上がっていく意識がありました。今までずっと点だったものが「なるほど」と整理できたことで、ワインにハマっていきました。

WSET Level2 もすごく面白い内容です。品種を深く掘り下げていくんですが、例えば「ピノ・ノワールが冷涼な地域で育ったらこうなります。温暖な地域で育てばこうなります。なぜなら…」というように、「なんで?」ってことを教えてくれるんです。

それがテイスティングした時に結びつくので、すごく楽しいです。

例えばピノ・ノワールって色んな国で育っていますが、カリフォルニアのピノ・ノワールと言えば温暖な地域なので、仕上がるワインがこういうスタイルなる…みたいな、全てが論理的に語れるところがすごく楽しいです。

これまでの“常識”を覆す「感動体験」

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―今までで感動したワインがあれば教えてください。

ピエモンテのワイナリー、ブルロットを訪問した時に飲んだバローロですね。すごくテクニカルにピュアなワインを造ろうとしていないのに、仕上がるワインは緊張感があってピュアそのものなんです。初めて飲んだ時「A=B=Cじゃない!」という衝撃が走りました。

でも、その時に「これがワインの面白さなんだな」と思いました。ワインの勉強をしていると造り方でこんな味になるのかなと予測を立ててしまうのですが、良い意味で期待を裏切ってくれたので感動しました。

なぜ、そういう味わいになったのか?は分からないです。

ピュア=極力酸化させず、手をかけて造ると思っていたのですが、最新鋭のコントロールができる機械を使っているわけでもなく、昔ながらの設備でおおらかな造りをしていました。

環境的な要因もあるのかもしれませんが、もしかすると澱との攪拌の時にすごく気を使って栓を開けるようにしているとか、徹底的に掃除をするとか私たちが全く気にしていないポイントでこだわりがあるのかもしれません。 そのポイントは分からないんですが、自分の常識の幅の狭さを感じもっと勉強したいなあとつくづく思いました。

趣味を持つことの大切さを教えてくれた

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―辻本さんにとってワインとはどのような存在でしょうか?

趣味を持つことは大事だなと思っていて、趣味がない時って人に依存したり、人間関係にすごく注意を払ったりしていました。

何もない日常生活に悩みを見つけようとしたりして…不毛な人生だったなと思います。

でも、ワインに出会ってからはやることがいっぱいになって、自分の興味や楽しいという範囲がワインに変わりました。人間関係で悩むことも少なくなりましたし、私にとってのワインは「趣味」なんですが、趣味だからこそ、ワインのことで時間が過ぎていく人生っていいなって思っています。

―最後に、今後はどんな仕事をしていきたいと考えていますか?

やっぱりワインは背伸び酒というか、特に私の年代だと少し敷居の高い存在というイメージが強いので、もっと気軽に楽しめるお酒として広めていきたいですね。

アートや文学が好きな人、あとは農業が好きな人とか、こだわりが強いタイプの人はワインを好きになる要素はたくさんあると思います。お酒が苦手な人でも、ワインが好きになる要素はあるはずです。

私はチョコレートやコーヒーの楽しみ方はワインと似ているなと思いますし、ワインを好きになってくれる人はまだまだ隠れていると思っています。

ワイン・ショップエノテカ 銀座店カフェ&バー エノテカ・ミレで文学ワイン会※というイベントをやっていますが、ワインを難しく紹介しているイベントじゃないんですよね。小説家の方となんらか共通点があるワインを飲みながら文学を楽しむ、ワインがわき役のイベントです。

ワインの美味しさやストーリーが、お客様が好きなものを通じてスッと入ってくるような形を目指していて、今後は違うカテゴリでもそういったイベントを企画してみたいなと思っています。

※1人の小説家をお招きして、ワインを飲みながらお話を聞くトークイベント。2021年10月現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、イベントはおこなっておりません。