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自分の持つ知識と経験を生かして!お客様と信頼関係を築きたい

ワインのプロたちは、どんな想いでワインと向き合ってお客様と接しているのか?スタッフの想いやこだわりを伝える「わたしとワイン」

ANAインターコンチネンタルホテル東京店:櫻庭 史貴

ワイン好きの方であれば、誰しもワインを好きになったきっかけがあるはず。

20代の若さでANAインターコンチネンタルホテル東京店の店長を務める櫻庭は、学生時代に出会った1本のブルゴーニュワインをきっかけにこの世界へ足を踏み入れました。

知れば知るほど奥深いワインの魅力に取りつかれ、いつしか「この魅力をお客様に直接伝える仕事がしたい」と思うようになったそうです。エノテカに新卒で入社し、これまで接客一筋でキャリアを積み重ねてきました。

そんな彼が接客において常に心がけているのは、ショップへ足を運んでくださるお客様と信頼関係を築くということ。

「自分がこれまで培った知識と経験で、お客様の役に立ちたいんです」と笑顔で語る彼に、今回仕事に対する思いや大事にしていることを尋ねました。

ワインにハマったきっかけは1本のブルゴーニュワイン

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―まずはワインを好きになったきっかけを教えてください。

大学生のときに飲食店で飲んだブルゴーニュワインがきっかけです。アラン・ブルゲという生産者の1989年のジュヴレ・シャンベルタンでした。

当時、割烹でアルバイトをしていました。そこのスタッフとは気が合い、よくお酒を飲みに行っていたんです。

普段は日本酒を飲むことが多く、ワインを頼むことは少なかったんですが、ある日、スタッフと飲食店で飲んでいた時、「生まれ年のワインってどんな味がするんだろう?」という話になって、奮発してオーダーしたのがこのワインでした。

それまで古いヴィンテージのワインを飲んだことがなかったのですが、口にした瞬間、複雑な香りや味わいに感動してしまって、それをきっかけにワインに興味を持ち始めました。

―素敵なワインに出会ったんですね。それまでもワインは飲んでいたんですか。

当時は日本酒にハマっていて、いろんな種類を飲み比べてみたり、学生ながらも販売店向けの日本酒勉強会に参加したり、とにかく日本酒を突き詰めていたんです。割烹の仕事でも役に立てるようにと、日本酒と料理のペアリングについても日々研究していましたし、就職も日本酒の道を考えていました。

でも、このワインを飲んだことをきっかけに、「ワインについてもっと知りたい」という気持ちが日に日に大きくなっていったんです。

もともと何かにハマると突き詰めるタイプで、当時大学では地理学を専攻していたのですが、ワインについて知りたいがあまりに「地場産業としてのワイン」と題して塩尻をテーマに卒業論文を書いたくらいです。

それでも飽き足らずワインを極めたいと思い、ワインの世界に飛び込むことを決めました。

店頭に立ってワインと触れ合う楽しさ

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―この仕事の魅力はどんなところですか。

まずは毎日ワインと触れ合っていられることですね。ワインって毎年どんどん新しいものが入荷してくるのですが、いざ入荷したものを飲んでみると「このヴィンテージにはこんな特徴があるんだ」とか「この生産者は年々スタイルが変わってきているな」とか、日々新しい発見があるんです。

なかなか自分の勉強が追い付かないのが歯がゆい所ですが、新しい発見がある度にワインって奥が深いな、楽しいなと実感しています。

それからやっぱり一番のやりがいだと感じるのは、培った経験や知識を伝えることでお客様の役に立つことができたときですね。接客ってお客様が何を求めているのかを深掘りして、自分の持ちうる知識と経験の中でどう提案できるかというところが基本的なところだと思うんです。

お客様がよくワインを買ってくださる方であれば、どんなワインが好きで、どういうものに興味を持っているのか、その興味以外の部分で何か新しい発見を自分が与えることはできないかなって日々考えながら接客しています。

接客の楽しさって、直接お客様からの反応を受け取ることができることだと思うんです。自分が紹介したワインを購入したお客様が後日また来てくださって「あれ美味しかったよ」とか「相談して良かった」って言ってくれたときは、何にも代えがたい特別な瞬間だなと思います。

この仕事はそういった一回一回の接客を積み重ねて、お客様と信頼関係を築いていくものだと思っているので、ワインをご紹介することを通じて「またエノテカを使いたいな」「安心して買えたな」っていう接客をできるように心がけています。

ワインの熟成が面白い

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―ワインの面白さはどんなところだと思いますか?

最近改めて面白いなと感じているのは、ワインの熟成です。

例えば、私が入社したころ、2011年のボルドーワインが最新ヴィンテージとして販売されていたんですが、ボルドーはその前の2009年2010年が良いヴィンテージというイメージが強くて、あまり知識もなかった当時の私は「2011年ってなんだかお客様におすすめしづらいな」と思っていたんです。

それから7年たった今、2011年ヴィンテージを改めて飲んでみると、最高においしいんですよ。果実味もありつつ綺麗に熟成していて、なんであの時おすすめしづらいなんて思ったんだろうって。

まだ熟成がワインにもたらす変化をきちんと理解できていなかったのかもしれません。時の流れでそうなっていると思うとワインって改めて面白いなと思いました。

人生の節目はこのシャンパーニュと共に

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―櫻庭さんの思い入れのあるワインを教えてください。

仲の良い友人たちの中には「櫻庭と言ったらクリスタル」って思っている人がいるくらい、ルイ・ロデレールのクリスタルが大好きで、毎ヴィンテージ購入しています。

これまで高いものからカジュアルなものまでたくさんのワインを飲んできたつもりですが、その中でもクリスタルって飛びぬけて洗練されている印象があります。

生産者のフィロソフィーにも共感しています。ルイ・ロデレールは、ワイン界で既に確固たる地位を築いているにも関わらず、ビオディナミ栽培を行うなど、テロワールの表現や品質向上へ飽くなき探求心を持っています。

トップ生産者でありながらも、常に新しい挑戦をしているという姿勢からプロ意識を感じますね。

そんなルイ・ロデレールが造るクリスタルは、飲む度に感動や幸福感を与えてくれる素晴らしいワインだなと思っています。本当はもっともっと欲しいんですけど手頃なワインでないので、難しいところです(笑)

―どんな時に飲むか迷ってしまいますね。

そうなんです、テイスティングの機会があれば参加するようにはしていますし、最新ヴィンテージはリリースしたてにすぐに購入して試すんですが、昔購入してセラーで熟成させているものはなかなか飲む決心がつかないです。

ちなみに熟成させたクリスタルは、自分の結婚式のときに開けました。熟成したシャンパーニュならではの複雑な香りと、きめ細やかな泡立ちに感動しました。これからもここぞという時に飲みたいなと思っています。

来年30歳を迎えるので、そういった節目のときや、結婚記念日、子どもの誕生日……、あとは人生で何か大きなことを成し遂げた時ですかね。自分の人生の節目にそばに置きたい、そんなシャンパーニュです。

ワインは私の全て

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-櫻庭さんにとってワインとはどんな存在ですか。

難しい質問ですね……。

自分にとってワインは、もう全てです。ワインのおかげで妻と出会うことができましたし、公私ともにすごく良い経験をさせてもらっています。ワインのない生活はもう考えられませんね。

ワインへの感謝の気持ちを表現したいと思って、実は自分の子どもたちにはワインに由来した名前を付けたんです。子どもたちが一生付き合うことになる大切な名前なので、妻とワインを飲みながら夜な夜な会議をして決めました。

そのくらい私の生活とワインは切り離せないもので、一言で言い表すことができないくらい大事な存在です。ワインはやっぱり私の全てですね。