『アンの娘リラ』ー映画『1917』の副読本
『アンの娘リラ』
モンゴメリ作、村岡花子訳(新潮文庫)
『赤毛のアン』シリーズの最後、アンの末娘リラの物語。第一次世界大戦の開始から終了までの4年間の物語。これはれっきとした戦争文学である。
公開からずいぶんと時間が経ってしまったが、映画『1917』の副読本としてお勧めしたい。トーンは違えど、映画には戦場のリアルが、この本にはカナダの片田舎から戦場に兵士を送り出した家族のリアルがある。アンにとっては息子でリラにとっては兄弟が出征していく。あとはリラの恋人も。
平和な村も戦果報告に一喜一憂。残された女性たちは赤十字の仕事にいそしみ、15歳のリラは成り行きで戦争孤児の新生児を育て始める。日常は続くが、その日常には暗い影がつきまとう。家事手伝いをしながら幼馴染たちと楽しく過ごすはずだったリラの青春は期待とまったく別のものになってしまうが、戦争が終わる頃リラは人のために行動できる立派な女性に成長しているという話。
映画『1917 命をかけた伝令』では、戦場でも消えない美しいもの3つが際立っていた。<花、赤ちゃん、歌声>つまりは<自然と、生命と、芸術>
『アンの娘リラ』でも、リラの住む村の自然、リラの育児、文学を志す兄が戦場から送ってくる手紙の3つが印象的だった。
私は特に兄のウォルターが遠い戦場から突撃前夜にリラへ書いた手紙の部分が好きだ。美と芸術を愛するウォルターが戦場に志願したことを、その覚悟を決して無駄にしてはいけないと、私も彼との誓いを果たしたい気持ちに駆られる。
小学6年の時に初めて読んで、映画をきっかけに久しぶりに読んだ。過去シリーズの知識はあったほうが易く読めるが、知らなかったとしても私のように忘れていたとしても大丈夫。
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