5日目 ドグラ・マグラ

日本三大奇書や「読むと精神に異常をきたす」などの評判があるドグラマグラだが、話の構造も内容もそこまで突飛だったり不気味だったりするわけではなく、真っ当な推理小説だと思う。

夢野久作が構想に十年かけたというだけあって、前半部分にちりばめられた仕掛けや、記憶の曖昧な語り手という形式故に二転三転する話の筋など、かなり凝った、面白い小説。一度読み終えたときに解決する部分としない部分の塩梅もちょうどよく、読み直すと新たな発見や解釈が生まれる。総じて完成度の高い小説であり、狂気的で読みづらい文章というわけではない、やはり冒頭でしめしたようなイロモノ的評価には違和感を覚える。

今気になって調べてみたところ、「日本三大奇書」というカテゴライズは「日本の探偵小説の中で優れた三冊」くらいの意味で各種文献で触れられていたものらしい。(wikipedia参照)というかそもそも、「奇書」という言葉は「奇天烈な作品」という意味でなく、「優れた作品」との意味だそうな。お恥ずかしい。

「読むと気が狂う」という評価の方はそういう「奇書」の字面のイメージや精神病院という舞台、あと表紙のイメージとかから形作られたインターネット・ミーム的なものなのだろうか。あるいは発売時に帯にかいてあった煽り文的なものなのかもしれない。あの煽り文ってまったく内容に掠ってない時があるよな。「百年の孤独」の煽り文とかも意味不明だった記憶がある。

所謂カルト・サブカル的な意味不明で難解な作品などではなく、普通に完成度の高い小説なので、なんとなく上記のようなもてはやされ方が気に食わなくて読んでいないという方がいたら敬遠せずに読んでみてください。

前半は少しとりとめもなくて読みづらいとの評判だし、実際おれもそう感じたが、前半を抜けると二転三転するエキサイティングな展開で楽しんで読めると思う。そして前述のとおり、前半にはいろいろ仕掛けがあるので、いちど後半を読めば前半部分も面白く感じられるはず。


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