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たぶん、秋海の泡沫。

深紅色をした十年物のクッションをぽーんと乱暴に蹴り上げると、部屋の隅にへばりつくように収まった。布団を敷く。今晩の僕は眠ることが使命で、でも眠るには、体力とか、集中力とか、バランス感覚とか、いろんなものがいる。

なぜ僕が突然こんな風に文筆を逸っているのかというと、それは穂村弘を読んだからです。穂村弘の「ラインマーカーズ」。恋人が僕の誕生日にくれた本。恋人はたまに本をくれる。中原中也の「汚れちまった悲しみに」とか。僕も本をあげる。読み終わってなくてもあげることもある。何故なら、一緒に暮らすようになったら共用の本棚に入れておけるから。僕達は何も焦る必要はなくて、だけど未来を見据えた行動を積み重ねるほど、その未来へのワクワクを押し留めていられなくなって、つい近道しようとしてしまうんだね。

眠ることに命をかけるように起きることに命をかける。起きたいから眠るのであって、眠りたいから素敵な朝を創りたい。今日も今日とて僕は星の公転に逆走しようとする。だけど命をかけているのは、星も人間も風も海の島陰もみな同じなんだね。時間って一直線に見せかけて実は多軸方向に散らばる彼岸花のような形をしていて、彼岸花に曼珠沙華という別名があるように、僕達をいつも騙している。

深紅色がよく似合う夜はべテルギウスの色をした夜。寒さにお気をつけてお過ごしください。

ありがとう