(小説)砂岡 1-1「ハクジツ」
涼しい〜。
窓から吹き込む北風が春木の頬を撫でる。
南東の高い空が、いつもは空と陸をきっちりと分ける地平線も、今日はすこし淀んでいる。砂の上に描かれたいくつもの直線は船舶たちがつくったものだ。船舶と言っても、よく水の上を行くあの船舶ではなく、水陸両用のホバークラフトだ。船舶の航路は日によって変わる。
今日は南風だから砂が良く飛ぶ、そのせいで視界が悪くなるために、船舶たちは沿岸に沿って航行する。今はそんなに砂が俟っているわけではないが、突然大きな砂嵐が発生することも