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PICK UP ARTIST vol.03 | 志水 みかん (長編)

こんにちは!EnoGGインターン生のAyaです。
「アーティストインタビュー」第3弾 (長編)です!
 
東北芸術工科大学大学院に在学し、アーティスト活動を行っている志水さんにインタビューしてきました。ぜひ最後まで読んでください。

※短編インタビュー記事では、主にこの記事の「アーティスト活動について」の部分を抜粋し掲載しています。志水さんのアーティスト活動について簡潔に知りたい方はこちらをご覧ください。

 

志水 みかん

 ■経歴
1998年3月 北海道出身
2022年3月 東北芸術工科大学 芸術学部 美術科 洋画コース 卒業
2023年  東北芸術工科大学 大学院 芸術文化専攻 絵画研究領域 在学

■ 展示
2015年7月 グループ展「今を生きる少女達展」 / こども富貴堂(北海道旭川市)
2016年8月 グループ展「大人予備軍展」 / ギャラリーのにある(北海道旭川市)
2022年  BMC(ボストン チルドレンズ ミュージアム)オンライン展示・アメリカ内病院展示 
2022年7月 グループ展「ぺるけ」(東京 銀座スルガ台画廊)

■ その他制作
2019年 山形市伝統工芸品祭り 山形和傘制作
2023年 ICTビジネス研究会 垂れ幕制作(東京 神田明神ホール)

■ 受賞
2020年1月 矢吹病院賞(東北芸術工科大学 美術科2年生進級制作展)


🦉制作実績について

3月16日・17日に東京の神田明神ホールで開かれた「Japanビジネス・デザイン・アワード」の会場デコレーションに志水さんの垂れ幕が採用されました。
そこで、まず今回の垂れ幕制作についてお話を伺いました。

ー垂れ幕制作にどんな気持ちで取り組みましたか?

一言で表すなら「エネルギッシュ」です。 

小さなアイデアが集まり、渦巻き、大きく広がってゆく様子。その抽象的な感覚を自分の中にとどめながら、精力的に取り組みました。 

はじめて依頼を伺った時、サイズ が卒業制作作品よりも大きかったので、驚きと不安もありました。しかし依頼を受けたからには責任を持ち、全力で臨みたいと思いました。 描き始めの際は慣れず、思った通りにできないと落ち込むこともありました。

そこで、より良く魅せるには何が必要かと考えました。向き合う 程だんだんコツをつかみ、より一層コンセプトの感覚に集中して描けるようになりました。

ーなぜこのデザインにしたのですか?

会場デコレーションのコンセプトとして、「明るい未来とそこに向かう情熱を表現してほしい」という要望を受けました。

そこでメインの配色は、情熱を連想させる暖色系、赤・橙・紫色。さらに白・金色を加え、勢いよく流れ弾ける力強さを表現しました。 

「ビジネスの発見・創造」「ビジネスの応援・販売促進」・「ビジネス 人材の発掘・育成」を行う場にぴったりと合う色彩です。


ー(ICTビジネスコンテストの会場に飾られたわけですが参加者やこのイベントなど)今後どうなってほしいですか?

(私自身もアーティストとしてはまだまだなので偉そうに言える言葉ではないですが、)
自分を信じて、自分の選択に責任もって自分の人生を歩んでいってほしいと思います。


🦉アーティスト活動について

ーアーティスト活動を始めたのはなぜですか?

小さい頃から何かしら創ることが好きでした。まずこの絵が好き、この 画材を使うのが楽しい、から始まって、夢中になり、どんどん加速して きました。 自分が「美しい」と感じたものを、自分のフィルターにかける。自分が 「良い」と感じたものを信じて、責任をもって追求してゆく…。 ひょんなことから始まり、芸術と向き合う時間が増え、自分の価値観と なり、自分の人生の一部となりました。こんなにも自分が望む生き方に染みついているのならば、アーティストとして活動がしたいと思いました。


ーEnoGGに入ったきっかけは何ですか?

私が過ごす時間の大半は、一人で黙々と美しさを追求し、芸術と関連付 けて物事を考えています。芸術へのアンテナを常に張っているのなら ば、これを活かして他者と繋がり、世界を広げたいと思いました。そしてそれが、私ができる社会への還元であると考えました。


-アーティスト活動のどういうところが魅力的ですか?

主に2つあります。
 
1つ目は、具体的な形を持たない、抽象的な感覚を視覚化できる点。目に見えず、言語でも表せない曖昧な感覚に、形を与えられる事です。 

2つ目は、思考の幅が広がる点。「これに対して私はこう感じたけれど、 あなたはどう感じましたか」と自分とは異なる視点をシェアできる事が 魅力的です。


-制作において意識していることは何ですか?

描きたい世界に存在する抽象的な感覚、「光」や「空気感」、「感情」 などをどうするか。神経を研ぎ澄ましながら、その世界の中に入り込む 様に制作します。
 私自身、深く考えすぎて手が止まってしまう悪癖があります。
できるだけ嵌まらないようにするため、ほんの一瞬目に留まったものを、感覚が新鮮なうちに描くこと。取り零し流してしまう様な、小さな引っ掛かりに目を向けるようにしています。


-制作はどのくらいの期間かかりますか?

卒業制作など、具象やかなりの神経を使わなければいけない作品は、4- 5ヶ月かかりました。(アイデア出しなど計画から含めて)
 12号くらいの抽象画で、新鮮な感覚を絵にしたい際には、できるだけ早く描き始めるよう努めています。「描きたかった」気持ちや感覚が消え ないうちに、一週間ほどで描きます。


-一番思い入れのある作品は何ですか?

いくつかあります。ここでは特に印象に残っている3作品を挙げます。
①「舞姫の如く」

小さな花達が枝を覆い隠すほど集まっている。 その様子はまるで舞台にいるかのようで、一つ一つの花が舞い踊り、感 情を落とし込んでいるように見えた。
(2019年, 透明水彩)
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これは自分が描きたい世界を、初めて形にできた作品として、思い入れがあります。 
「私の目は、どんな世界を見ているのだろう。 どんな世界を見たいのだろう。 」
そのような自問から制作しました。 ずっとアイデアスケッチは出すものの腑に落ちず、形にならない作品ばかりでした。そんな中でやっと形にする感覚をつかめた、第一歩目になった作品です。

②「今を生きる」

実りある人生とは何でしょうか。「生きること」をテーマに、「 森の賢者 」と知識の象徴とされるフクロウと、春夏秋冬の植物を描いています。 森を人生の一部、一年と見立てました。豊かに育った森から、フクロウ が光の先へ飛び立つ様子を描いています。

 803 × 1167 mm アルシュ紙 , 透明水彩 2020年
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かなり神経や感覚を研ぎ澄まして描いただけでなく、芸術分野に限らず、多くの方々からお褒めの言葉をいただいたからというのも理由です。 描いた当初は「自分まだまだ力不足だ、次へいこう」と落ち込んでいたので、お褒めの言葉を頂きとてもありがたく感じました。 価値観と評価は、「環境と時間によっても変化する」と改めて実感しました。 今でもこの絵に対する言葉をいただくこともあり、「この先も頑張ろう」 と前向きな気持ちになれます。

③卒業制作「名付けられた世界を変える時」

親しみ慣れた世界が心地良く、抜け出し難くなることがある。その確実な世界から一歩踏み出すとき、心象ではどんな景色が広がっているのだろうか。 内なる変化を望むとき “ 矛盾した感覚 ” が伴う。 不鮮明な視界や、間から覗き見える鮮明な形。 確実な今への心地良さ、不確実な未来への恐怖。 意識は、拡散と収束を繰り返す。 知恵であるフクロウは境界線を探り、越えることを試みている。 この境界線である「 殻 」を越えた先に、また新たな世界があるのだろ う。 どこまで広がり、その先でどんな景色を見るのか。 矛盾した感覚に臆さず、変化を続けたい。 

約1800 x 4000mm (額縁込) アルシュ紙, 透明水彩 2022年

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  作品のコンセプトでもありますが、「新しい挑戦への一歩を踏み出す励まし」としても、思い入れがあります。 「自分の親しみ慣れた行動や環境」を変える選択には恐怖が伴います。変える方が良いけれど怖い、今と同じままが心地良い。
けれど、そんな矛盾した気持ちを抱えながらも、一歩踏み出せれば世界が広がっていきます。 私は慎重すぎて怖がりな面があります。何か行動しようと決めた後にも 関わらず、行動が止まってしまう瞬間があります。 そんな自分に気付いた時、この作品を思い出すと少し心が楽になります。「 恐怖があるのは当たり前だ。1%の変化でも良いから、今できる事をやろう 」という言葉が浮かぶんです。


-影響を受けた人物や出来事はありますか?

永山裕子さん(水彩画家)です。 

画集が予備校の本棚にあった時に知りました。毎日、そして制作に悩むたび画集を開き鑑賞していました。 作品の色彩の美しさや抜群の技量は、制作するうえでとても参考になります。鑑賞するたびに新たな発見を得られ、自身の制作で試し、学んでいけました。 
もちろん予備校の恩師、仲間からの影響も大きいですが、「永山裕子さんの作品を観て育った」と言っても過言ではありません。 今では幅広いジャンルの作品、油彩からテキスタイル、彫刻などの影響を日々受けています。気になる作品を見つけてはスマホに保存して、自分だけのギャラリーを作っています。
たくさんの芸術から影響を受け、 自分の解釈・感性と混ぜ合わせていく。自分だけの鍋料理をつくっているような感じです。そうして今の自分ができていると感じます。

※参考
永山裕子さん HP
永山裕子 | Yuko Nagayama (nagayamay.com)


🦉志水さん自身について

ーどんな性格ですか?

細かな差が気になる、几帳面な性格だと自分では思っています。「これとこれ、何がどう違うんだろう?」「こうやると、どうなるんだろう?」など考え事が多いです。 興味がでたことを色々調べたり、考察する行為に繋がっています。制作なら顔料や素材の違い、日常生活なら栄養や睡眠など、いろいろ知識を漁っています。

ー好きなことは何ですか?

静かに時間を過ごしたり、何か知る行為が好きです。お茶の時間、自然の中での散歩、読書、新しい芸術作品を探して鑑賞したり…。あと何かしら練り混ぜるのが夢中になれて好きですね。例えば、カカオパウダーや顔料を使っています。

ー休日はどんなことをして過ごしていますか?

「平日しない事」を優先的にして過ごすようにしています。その時の突然の思いつきを試してみたり、その時に興味がある事を試して楽しんでいます。 絵画以外の芸術分野をやってみたり、新しい音楽を探したり。最近だと、創作料理をしてます。好奇心がくすぐられて楽しいです。例えば、 「ブルーベリーと卵を混ぜたら、すごい目玉焼きが作れるのでは?」「カカオパウダーと粉末緑茶とブルーベリーを混ぜたら、ポリフェノール団子を作れるのでは?」などです。 すぐに何か役立つわけでもない事が、どこかで自分の中で活きてくる気 がします。視野を広げる隠し味のような感じです。

👇創作料理の写真

🦉最後に

ー今後の活動の目標を教えてください。

自分の人生の中心に芸術を置き、活動を通じて他者の生活に彩りを添えていきたいです。 自分自身のフィルターに責任をもって追究し、生きている時間をより豊かにするような還元をできたらいいなと思います。  

もうひとつ、今はまだ憧れに過ぎないのですが、一度海外(ヨーロッパ方面)で制作して過ごしてみたいです。大変な経験も溢れているでしょうが、今いる環境とは異なる場で、知見を広げていきたいです。自分だけの「鍋」に新しい具材を混ぜ込み続けたいです。

ーこのインタビューを見てくださっている方にメッセージをお願いします。

アイデアは「種」に過ぎず、 価値が生まれるのは、その種を育て、磨き上げた時です。  

何かアイデアが浮かんでも、形にせず延々と先延ばしてしまう時はありませんか?
私は度々あります。たくさんのアイデアスケッチ が、作品にならないままノートに眠り続けています。 時間をかけて ”良いアイデア“ が頭に浮かんでも、 実行してみない限り、現実は何も変わっていません。 次へ進むための一歩も見えないまま、時だけが進んでいきます。 

要因は人それぞれですが、アイデアがつまらなく見えたり、「理想通りにいかない事」を恐れて実行を先延ばしてしまったり。

私は以前まで 「理想と現実との差」に強く苦しんでいました。 けれど結局は、1つの成功(理想)を掴む前に、10の失敗が必要だった りします。
それならば、できるだけ早く手をつけた方がお得ではないでしょうか。 
自分の中にある 「完璧」のレベルに達する事は一生できないけれど、 「最善」のレベルを上げていく事ならできます。  
同じ時間を生きる者同士、自分の道を掴んでゆける事を応援しています。

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インタビューの感想

志水さん、お時間をとっていただきありがとうございました。インタビューを通して、志水さんの作品に対する愛情、熱い想いを感じました。今後の志水さんの活躍が楽しみです。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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