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初心者とドケチのための歌ってみた用ローエンド機材の選び方 〜ヘッドホン編〜

投稿祭が挟まったのでだいぶ時間が開いてしまいました。ローエンド機材の選び方も今回で最後となります。


レコーディング用ヘッドホンに求められる条件

レコーディング用に使用するヘッドホン(またはイヤホン)に必要な条件は下の2つです。

  • 音が外に漏れにくい構造(ヘッドホン:密閉型、イヤホン:カナル型)

  • 過度に低音高音が強調されていない機種

上記を満たしていればモニターヘッドホンと銘打った製品でなくても、レコーディングモニターとして使用するのに大きな問題はありません。

音漏れ防止は耳を守ることにもつながる

音が外に漏れてはいけないのは、ヘッドホンから音が漏れるとマイクが拾ってしまう可能性があるためです。
レコーディングの際、ヘッドホンは当然ながらマイクの直ぐ側で音を発しています。ヘッドホンからの音漏れが大きい場合、マイクがその漏れた音を拾ってしまう場合があります。
また通常時は音漏れを拾っていなくても、歌詞確認などで横を見てヘッドホンとの位置関係が変わると拾ってしまうことは十分に考えられます。

「音漏れなんて音量はたいしたことないんだし、多少入っても問題ないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかしボーカル音声は基本的にMIXの際に圧縮し、音量を持ち上げて使用するものです。素の状態では微かな音量でも、MIXの段階になると問題となることは十分にありえます。
加えて、ボーカル録音の際は伴奏だけでなく、マイクに入った音声もヘッドホンに返しているはずです。この状態でマイクから返ってきた音が音漏れにより再びマイクに拾われてしまうと、音声ループが起きて最悪の場合ハウリングで耳を痛める可能性があります。
ヘッドホンが壊れる可能性もありますが、買い換えればそれで済みます。しかし人の身体はそういうわけにはいきません。
特に耳へのダメージは下手をすると一生物ですので、どれだけ気を使ってもやりすぎはありません。耳を大事に音楽と付き合いましょう。

自分の歌声が聴こえなければ歌えない

突然ですが、テレビ番組『バナナサンド』で行われている企画、「ハモリ我慢ゲーム」をご存知でしょうか。
背後の合唱団が大音量でコーラスを歌っている中で、メインのメロディーを正しく歌えるか?というゲームなのですが、多くの人がコーラスにつられて歌えなくなってしまいます。
これは「自分の声が聴こえなければ正しく歌うことは実質不可能」ということを端的に示しています。

レコーディングにおいてはマイクから入った自分の歌声をヘッドホンに返す設定にしたうえで、伴奏を一緒に聴きながら録音します。
しかしこの際、過度に低音や高音が強調されたいわゆるドンシャリなバランスのヘッドホンやイヤホンを使用すると、声のある中音域が引っ込んでしまい聞き取りづらくなってしまいます。
このドンシャリなバランスのヘッドホンは、音楽を楽しんで聴くにはとても良い音に聴こえ(特にロックやEDMなど)、また小音量でも迫力を維持できることからポータブルプレイヤー用のイヤホンでも人気があります。
ただ、レコーディングのモニター用としては自分の歌声が伴奏の中でもしっかり聴こえることが求められるため、全く適していません。むしろ反対のカマボコ型と呼ばれる特性の方が適しているといえます。
家電量販店に5000円くらいの価格帯で並んでいるイヤホンには「〇〇Bass機構で迫力のある低音!!」のような売り文句が付いている場合が多い印象があります。レコーディングに使用することを考慮にいれるならそうしたものは避けたほうが懸命です。
またそもそも、電気的な問題で一般的なリスニング用イヤホンをDTMに使うには注意が必要です。詳しくは後述のインピーダンスの項でお話します。

モニターヘッドホン、実はとても選びにくい

せっかくだからDTM用にヘッドホンを購入しよう!と思い立った場合、まず候補に入るのがモニターヘッドホンというカテゴリでしょう。
このカテゴリのものはどれも音楽製作用に設計されたヘッドホンで、見た目もリスニング用の製品群よりも無骨なものが多く、プロっぽいです。そもそも「モニターヘッドホン」という名称がカッコいい(私見)。
ところがこのモニターヘッドホン、想定された使用用途が全く異なる製品が、業務用と言うだけで区別されずにごった煮になっている非常に厄介なカテゴリなのです。
特に日本のメーカーの製品は境界線が曖昧で、メーカー側があえて絞っていないのではないかと思われるほどです。
加えて、ただ箔をつけるためにモニターヘッドホンを名乗っている製品もあり(主に極低価格帯)、一筋縄では正しい選択が出来ない状況です。

明確に分類されているわけではありませんが、私の知っている範囲では主に以下4つの用途の製品があります。

  • PA用

  • DJ用

  • エンジニア用

  • レコーディングモニター用

このうち選ぶべきはレコーディングモニター用(もしくはエンジニア用)のヘッドホンですが、他用途用のものと見分けるためにそれぞれ軽く解説します。

PA用

PA用モニターヘッドホンはライブ会場やコンサートホールの現場で音響の操作を行う人のためのヘッドホンです。
特徴としては大音量が鳴り響くライブ会場でも正しい音を聴くために遮音性が高く設計され、見た目にもゴツい物が多いです。
またユニークな点として、設計思想によって低音の特性が正反対になっている場合があります。外の音を完全に遮断したうえで低音を強く出力する製品と、低音がヘッドホン越しに入ってくるのを前提として低音をあえて弱くしている製品が同じ分類に共存しています。後者は54年間にわたって販売され続けているKOSSのPRO/4AAが代表的な製品です。

DJ用

DJ用モニターヘッドホンはその名の通り、DJがクラブなどのステージ上でプレイする(という表現が正しいかはわかりませんが)際に使用するためのヘッドホンです。
DJ用に分類されるモニターヘッドホンは説明文に「DJ用」と明記されている場合が多いため、比較的見分けやすいです。
特徴はドンシャリなバランスと、ヘッドホンを片手で持ち、片耳で聴きながらDJプレイをすることを考慮し、イヤーパッド部分が回転・反転など大きく稼働する点です。また持ち運ぶことを考慮して折りたたみ機構が搭載されている場合も多いです。
ドンシャリという点からもわかるように、レコーディングモニター用としては一番選んではいけない分類の製品です。

エンジニア用

エンジニア用モニターヘッドホンは、MIXやマスタリングで緻密な調整を行うためのヘッドホンです。
モニターヘッドホンの説明としてよく使われている「フラットな特性」というのは、主にこのカテゴリの製品のものに当てはまります。
とにかく原音に忠実、フラットな特性、正確な定位(音の方向)で音を出力することに特化しているのが特徴です。味付けを全くしないため、楽しむために音楽を聴くには物足りないと言われています。
また基本的に人前で使用することは考慮せずに設計されています。そのため音漏れする代わりに自然な音響特性を得られる開放型(または半開放型)の製品が多く存在します。MIXやマスタリングは作業が長時間に渡るため、持ち運ぶこともないと考えられているのか、折りたたみ機構がない場合も多いです。
もし歌の録音に加えてMIXもやる、もしくはMIXにも興味がある、という場合は、密閉型のエンジニア用ヘッドホンを購入するというのも良い選択肢だと言えます。

レコーディングモニター用

最後にレコーディングモニター用ですが、読んで字のごとく、ボーカリストやナレーター、楽器演奏者が録音の際に自分の声・演奏を聴くためのヘッドホンです。
日本のモニターヘッドホンの代表格、ソニーのMDR-CD900STはおそらくこのカテゴリに分類されます。THE FIRST TAKEで多くのアーティストが使用している赤いラインのヘッドホンですね。

上の動画でも西川さんが着用しています。ガンダムSEED FREEDOMめっちゃ良かった。

マイクが眼の前にある状況を想定しているため、音漏れしにくい密閉型であることが前提になります。また多くの場合、音声バランスはフラット、または中音域が持ち上がっています。
ドラム用やキーボード用に特化している製品もありますが、そうしたものは説明文に記載があるので間違えることはないでしょう。
歌ってみた用であればこのカテゴリのヘッドホンがベストです。しかし実際のところエンジニア用との境界線はけっこう曖昧で、特に日本のメーカーのモニターヘッドホンはどちらとしても使えるようになっている(と思われる)製品が多いです。
PA用・DJ用でなければカジュアルに使用する分には問題ないので、あまり分類に囚われすぎず気に入ったものを購入してください。

レビューもスペックシートもあてにならない

結局、聴く人と環境による

第3回までにも度々「音楽機材のレビューはあてにならないから無視していい」と述べて来ましたが、ヘッドホンにおいては特に顕著です。
試しに100件以上のレビューが付いているメジャーなヘッドホンのレビュー欄を流し読みしてみるとよいでしょう。(Amazonはダメ。「初めて買った」とか「まだ届いていないけど~」とかいらないレビューが多すぎる)
必ず音質がいいor悪い、低音が出ているor出ていない、音がこもっているorクリアなど、逆の意見を書いているレビューが混じっているはずです。

先述のMDR-CD900STも、長らく「フラットな音質、MIXやるならとりあえずこれがないと話にならない」という扱いを受けてきました。
しかしソニーが新世代のモニターヘッドホンである"MDR-M1ST"を発売するやいなや、各所の機材レビューサイトが「CD900STは低音が削れてフラットじゃないからMIXに使うには厳しい」と手のひらを返したような評価をするようになりました。
すべての機材レビューサイトがステマをしているとは思いません。ですが人の認識や印象は時間の経過や環境の変化により簡単に変わるということは覚えておきましょう。
そのため、あくまで"どこかの誰かの一瞬の感想"であるレビューは製品自体の指標とするにはいささか不安定です。

そんなに高い周波数の音はそもそも出ていない

スペックシートに関しても指標にはなり得ません。
というのも、スペックでまず見るのは周波数特性だと思いますが、ここには最低と最高しか記載されていません。
実は最低周波数と最高周波数はあまり重要ではないのです。特に最高周波数に関しては、そもそもCD音質のデータ規格でも20kHzまでしか再生出来ません。さらに動画投稿サイトへ投稿することを前提とするのであれば、投稿時に規定のデータ規格に変換されるため、より落ち込むことになります。
重要なのは最低から最高までの間がどのようなバランスで出力されるか、ということです。
これに関して周波数特性のグラフを公開している製品もありますが、実際に使用する場合はヘッドホン以外の機材の性能、相性も関係してくるため、あくまでも参考程度に思っておきましょう。

ちょっと気にしておきたいインピーダンスの話

ロー出しハイ受けの原則

ケーブル編でも触れましたが、音響機器において音とは電気です。ヘッドホンの話をする上で電気的に覚えておきたいのがインピーダンスの話です。
インピーダンスは電気的な抵抗のことを指しており、単位はΩ(オーム)で記載されます。
ヘッドホンのスペックシートには必ず入力インピーダンスという項目があります。"入力"が省略されている場合もありますが、ヘッドホンは音声を受ける機器なのでかならず入力インピーダンスです。
一方、オーディオインターフェースに限らず、ポータブルオーディオプレイヤーでもスマホでも、イヤホンやヘッドホン(またはスピーカー)に音声を出力する機器は、表記がなくても出力インピーダンスというものが設定されています。

音響機器には「ロー出しハイ受けの原則」というものがあります。つまり、出力側のインピーダンスよりも入力側のインピーダンスは高くしましょう、という単純な話です。
これを守らず、出力側のインピーダンスが高くなってしまうとどうなるか。規定よりも大きい電流が流れることになり、最悪の場合ショートに近い状態になります。ヘッドホンだけではなく出力側も巻き込んで壊れる可能性があります。
とはいえ上記は業務用ミキサーの端子(出力インピーダンスが100Ω以上)にポータブルプレイヤー用のイヤホンを挿すような、きわめて極端な例です。
ボリューム全開で使うことはまずないため、多少受け側のインピーダンスが低い程度であれば(音質への影響は別として)問題なく使用できるようです。
逆に受け側の入力インピーダンスが過度に高すぎると、今度は出力側の電圧不足で正しく音を鳴らせなくなってしまいます。

実際どう選べばいいの?

入出力のインピーダンスの差について「ここまでOK、これ以上はNG」という明確な指標はありません。
基本的には入出力のインピーダンスが一致している状態が良い、というのが通説です。しかしこの辺りもメーカーによって設計思想が異なるようです。
例として、スペックシートが詳細なTASCAMのUS-2x2HRを見てみましょう。
ヘッドホン出力の出力インピーダンスが66Ωに対し、(受け側の)推奨インピーダンスは16Ω~250Ωと上にも下にも幅広くとられています。

US-2x2HR ヘッドホン出力のスペック

ここで最大出力レベルの項を見ると、32Ω負荷時という記載があるため、最も電流・電圧の能率が良いのは32Ωのヘッドホンを繋いだときだということがわかります。音質はわかりませんが、音量の点では出力=入力が最良となるとは限らないようです。
また、より大型のUS-16x08は電源がUSBバスパワーではなくACアダプターとなり、出力インピーダンスも51.5Ωに変化していますが、最大出力となるのは32Ω負荷時のままです。このことから、TASCAMは32Ωで最高能率となるよう狙って設計していると考えられます。

一方、RolandのRubix22に目を向けると、出力インピーダンスと最大出力時の負荷が同じ47Ωとなっています。

Rubix22 ヘッドホン出力のスペック

入出力のインピーダンスのベストバランスに関しては、画一的に考えずに各製品によって異なる、という認識でいたほうが良いかもしれません。
過去回でも述べましたが、ローエンド帯で音響機器を揃える場合、多少の音質の良し悪しはボトルネックとなる条件が多すぎてさほど大きな影響をもたらしません。
HR-2x2HRの例を見る限り、実際にはかなり広い差であっても対応できるようですので、よほど極端な入力インピーダンスのヘッドホンでもなければ過度に気にすることはないでしょう。

いくつかのメジャーな家庭用オーディオインターフェースのスペックシートを眺めてみたところ、出力インピーダンスは記載されていない製品も多かったですが、32Ω~40Ω程度のヘッドホンを想定して設計されている(最大出力となる)ものが多いようです。
ローエンド帯のオーディオインターフェースのスペックもざっと調べました。以下に記載します。

  • M-AUDIO M-Track Solo/Duo:出力インピーダンス 記載なし / 最大出力負荷32Ω

  • BEHRINGER UM・UMCシリーズ:記載なし

  • NI KOMPLETE AUDIO 1:出力インピーダンス 記載なし / 最大出力負荷 33Ω

  • arturia minifuse1:出力インピーダンス 10Ω / 最大出力負荷 33Ω

  • Steinberg IXO12:出力インピーダンス 記載なし / 最大出力負荷 40Ω

  • Mackie Onyxシリーズ:記載なし

モニターヘッドホンの入力インピーダンスは32Ω~64Ωのモノが多いです。しかしbeyerdynamic製品の一部など、250Ω以上のインピーダンスが設定されたプロスタジオ向けと見られる製品もあります。
ローエンド帯のオーディオインターフェースはインピーダンスとは別に出力自体が低い物も多いため、十分な音量がとれない可能性があります。こうした製品は避けたほうが良いでしょう。

手持ちのイヤホンを使い回すときは要確認

気をつけたいのは元々持っている普通のイヤホン・ヘッドホンをDTM用に使い回す場合です。
ポータブルプレイヤー用のイヤホンやヘッドホンは8Ω~16Ωのものが多いです。16Ωであればオーディオインターフェースとの組み合わせによっては使えるかもしれませんが、8Ωの場合は接続しないほうが良いでしょう。

一般的なイヤホンの端子はステレオミニ端子ですが、DTM機器は基本的にステレオフォン端子(=TRSフォン端子)を使用します。
手持ちのイヤホンをそのまま使う場合でも変換アダプターを購入するコストはかかりますので、それを踏まえて新しいヘッドホンを導入するかどうか検討しましょう。
変換コネクタの価格はCLASSIC PROは150円(送料別)、Audio-technicaは送料込み450円です。

なおスマホ用イヤホンの一部やゲーミングヘッドセットなど、イヤホンとマイクが一体化している製品の場合、変換アダプターを使用してもオーディオインターフェースに接続すると正しく音声が聴こえない場合があります。
上の画像の用に端子の黒い線が2本であれば使用できますが、3本の場合は使用できない可能性があるので留意してください。
そもそもそうした製品はDTM用としては音質的にも適さないため、基本的には新たに購入することをオススメします。

安く済ませるか、多少高くても長く使うか

モニターヘッドホンは音楽用途以外にも使える

私が買った最初のモニターヘッドホンはソニーのMDR-V6です。既に購入から13年ほど経ちますが、イヤーパッドを一度CD900ST用の物に交換した以外は特に問題なく使用できています。
MIX用のヘッドホンはそこそこの頻度で買い替えますが、レコーディング用のMDR-V6は「まあ聴こえるしいいか……」となんだかんだで手元に残り続けています。
大きいメーカーのモニターヘッドホンは業務用途も考えられているだけあり、普通に扱えば長く使い続ける事ができます。(MDR-V6は民生用)
モニター用とはいえ普通のヘッドホンとして使用できるので、DTMだけでなく音楽・映画鑑賞やゲームにも使い回せます。迫力不足な傾向はありますが、音質としては安いイヤホンやヘッドホンに比べれば遥かに良いのは間違いありません。
長く他用途に使うことを前提に、少し奮発して高めのヘッドホンを購入することも考慮してみても良いかもしれません。

盲点となりがちな「頭との相性」

ヘッドホンは頭に装着します。靴や椅子が人によって合う合わないがあるように、ヘッドホンとのフィッティング相性も千差万別です。
私はとにかく頭が大きいうえに鉢が張っているため、なかなか合うヘッドホンが見つかりません。MIX用のヘッドホンをよく買い替えるのはこれが原因です。
レコーディング用は定期的に外せるため多少合わなくても耐えられますが、MIX作業中は気づくと数時間付けっぱなしということもあります。
長く付け続けていると当初は些細な違和感でも、少しずつ締め付けられて痛みや疲れを感じるようになるため、相性問題は大きく影響します。
また頭に対してヘッドホンが大きすぎる場合、イヤーパッドでしっかり密閉できず、正しく聴こえない上に音漏れすることも考えられます。こちらはレコーディングモニター用だとしても致命的です。

可能であれば実物を試着して確認したいところですが、一般的なヘッドホンならともかく、モニターヘッドホンを試着できる場所はそこそこ大きな街の楽器店に限られます。
もし試着できない場合は相性は運試しということになりますが、どうしてもすぐに買い替えたくなる場合もあるでしょう。
そのリスクを考慮するのであれば、とりあえず最初は低価格帯の製品から選び、予備資金を多少なりとも確保しておく、というのも良いのではないでしょうか。

ローエンド帯での現実的な選択肢

ここまでの話を踏まえて、サウンドハウスを眺めて気に入ったヘッドホンが見つかっていればそれを購入すれば良いでしょう。
ですが前述したように、モニターヘッドホンカテゴリは複雑怪奇な状況となっています。どうにも選べないという方のために低価格帯でとれる2つの選択肢を提示しておきます。

低価格帯ではCLASSIC PROのCPH7000が第1候補です。
安さを優先しつつ、音質的にも定評があるモノを探そうとするとこちらに行き当たります。
形状・構造的にも極めて一般的なモニターヘッドホンとなっているため、フィッティングの試金石としても申し分ないといえます。
音質は良いがバランス的には低音が弱い、というのが定評ですが、レコーディングモニターとしては特に問題にならないでしょう。
なおBluetooth対応版もありますが、Bluetooth接続である時点で音質が劣化する上に、レコーディングモニターとしては致命的な遅延が避けられないため購入してはいけません。

もしせっかく買うなら大手メーカーの物がいい!という場合は、多少高くなりますが1万円以下の価格帯でいくつかの大手メーカーの製品を選ぶことが出来ます。ほとんどは海外メーカーですが、日本のメーカーならばaudio technicaのATH-M20xがあります。
せっかくお金を出して買うものですから、音質という曖昧なものよりも見た目やブランド名を重視して購入するのも全然ありです。一番自分のテンションがあがりそうなモノを買いましょう。

なお、この価格帯にはアメリカの老舗音響機器メーカーMackieのMC-150というヘッドホンがあります。このヘッドホンはイヤーパッドの形が極めて特殊で、人によって合う合わないが出やすいため、試着なしでは手を出さないほうが無難でしょう。
私は同形状のイヤーパッドを持つMC-250を試着無しで購入し、まともに装着することが出来ずすぐに手放しました。

ローエンドで数千円をケチると、満足度がガタ落ちする

密閉型ヘッドホンカテゴリでは、CPH7000以下の価格でもBEHRINGERがモニター用を歌っているヘッドホンを複数販売しており、実際私もいくつか買ったことがあります。しかしどれも音質的に満足出来るものではありませんでした。
もちろん普通にヘッドホンとして使用することは出来ましたが、ある程度の期間使い続けるつもりならば、あまりコスト面を攻めすぎない方が満足度は高くなります。
音の良し悪しはモチベーションに直結する要素。せっかく買うなら気分良く使えるものにしましょう。

おわりに

長くなりましたが、ヘッドホン編は以上となります。
今回の記事を書いている途中、自分の知識に齟齬がある事に気づき、改めて理屈を調べ直した部分があります。
こうしてまとめてアウトプットすると、自分と見つめ合う良い機会になりますね。

さて、全5回に渡って書き散らしてきた「初心者とドケチのためのローエンド機材選び」も今回でおしまいです。
当初書こうと予定していたことはおおよそすべて詰め込ませてもらいました。むしろ書きながらどんどん膨れていってしまった。
今回も最終回にして最もヘヴィな文章量になってしまいました。第1回からから読み続けて頂いてくれている方、本当にありがとうございます。

今後こうした講座系の記事を投稿するかどうかは未定です。
もしフォロワーから追加で質問か調べて欲しいことでも投げられたら書くかも……くらい。
とりあえず次は直近の投稿祭で投稿した動画についての雑記を書こうと思っています。
ここまで拙文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
あなたの楽しい機材選びの一助になれていたら嬉しいです。

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