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初心者とドケチのための歌ってみた用ローエンド機材の選び方 〜ケーブル編〜

今回はケーブルの話です。サクッといきます。
歌ってみた活動に最低限必要なケーブルは2本。マイクからオーディオインターフェースを繋ぐXLRケーブルと、オーディオインターフェースからPCを繋ぐUSBケーブルです。
まずXLRケーブルについてお話します。

XLRケーブル
3つの端子/穴が特徴

シールドとはケーブルである

まず最初にお伝えしておきたいこととして、DTMや電子楽器の世界ではアナログ接続のケーブルのことをシールドと呼びます。XLRケーブルもその1種です。
この記事の中では基本的には「ケーブル」という呼称に統一するように心がけてはいますが、もしシールドという単語が出てきても突然盾の話を始めた訳ではないのでご注意ください。
このシールドという通称は、ケーブル内部の電線に防磁シールドが施された「シールドケーブル」から来ています。
ケーブルの表面にはシリコンなどの被覆がありますが、その中には芯線を囲むように薄い金属の箔やメッシュが施されています。
これにより外部の電磁ノイズが電線を通る信号に混入することを防いでいるというわけです。

銀色の網がシールド 電気はこの内側の銅線を通る

現在、一般的に楽器用・音楽用として販売されているケーブルは、特に断りがなくてもシールドケーブルでほぼ間違いありません。
ただし安いマイクの付属品のケーブルなどは、見た目が同じでもシールドが施されていない場合があるようです。(JTSのマイクが代表的)
そもそも普及帯以上のマイクにはまずケーブルが付属することはありませんので、もしマイクにケーブルが付属してきてももったいなく思わずに捨てましょう。それは最低限の役目を果たせません。

音は電気である

根本的な話ですが、マイクから入った音は電気に変換され、ケーブルを伝ってオーディオインターフェースに入っていきます。
ケーブルの中には電気を通しやすい金属が通っていますが、電気損失がゼロの物質は存在しない以上、ケーブルが長くなればなるほど電気は弱くなっていきます。
マイクで発生する電気は微弱です。マイクから入った音を可能な限りよい状態でオーディオインターフェースに届けるには、ケーブルをなるべく短くすることが大事です。

加えて、ケーブルを短くすることでノイズも混入しにくくなります。
ケーブルには前述の防磁シールドが施されていますが、100%防げるわけではありません。
電気が走る距離が長くなればなるほどノイズが少しずつ積もっていくことになるため、ノイズ対策の意味でも無駄に長くケーブルを引き回すことは避けたいところです。
なお電磁ノイズとはいわゆる電波です。録音時はケーブルやオーディオインターフェースの上にスマホを置くのはやめましょう。確実にノイズが乗ります。

ちょっと長めでちょうどいい

購入するケーブルの長さを決めるときには、機材の配置予定位置を決めたうえで大体の距離を測ります。
そして「このくらいかな?」と思った長さよりも1段階長い物を購入しましょう。
……短くしろと言った側から長くしろと言って何を言っているんだと思われそうですが、これは私の経験則によるもの。
大抵の場合、ケーブルは想定よりも長い距離が必要になります。
これはモニターや棚の裏を這わせるのに意外と距離がかさんだり、プラグのでっぱりによって最短経路を通らなかったりすることで想定との誤差が発生するためです。
特にプラグの根本から急角度に曲げて配線するのは断線の原因になるばかりか、プラグが刺さっている機材側の端子にも負荷をかけることになります。
大事なのは無駄に長くしないことなので、必要な余裕は充分に確保するようにしましょう。

短ければ品質の差も小さくなる(はず)

一口にXLRケーブルと言ってもピンからキリまであります。高いものでは1mで数万円というものもあります。
いろいろな考え方があると思いますが、電線の良し悪しを電気損失の少なさだと仮定すれば、短ければ短いほど品質による最終的な損失の差は小さくなります。(もちろんそれだけで音質が決まるわけでは無いと思いますが)
よってデスク周りの配線のみで長さを必要最低限にした宅録環境という前提ならば、ある程度安いケーブルでも差は感じないのではないかと個人的には思います。
もちろん最低限の信頼できるメーカーであることが前提です。Amazonの謎の中華メーカーのケーブルは流石に避けましょう。

結局CANAREが無難

購入品の最終的な選択は本人に任せる、というのがこのシリーズの方針ですが、ケーブルに関しては個性を出すような所でも無いと思うのでサクッと選択肢を提示してしまいます。(サウンドハウスへのリンク)
特別な事情がない限りはおおよそ下の3択に収まると思います。

  • 安さのCLASSIC PRO

  • ド安定のCANARE

  • CANAREが嫌ならBELDEN

まずサウンドハウスのプライベートブランドであるCLASSIC PROですが、とにかく安いです。1mで500円。
激安ではありますが品質には定評があり、音質や耐久性で問題になることは無いはずです。(あくまで価格を前提にした評価)
何より価格2番手のカナレの1/3以下の価格なので、気に入らなかったらちょっとだけ我慢してカナレを買い直しましょう。
ただしXLRケーブルに限らずクラシックプロのケーブルには共通の弱点があります。
一般的なものと比べてケーブル自体が太く被覆が固いために取り回しが非常に悪いことです。
この取り回しの悪さは狭いスペースを這い回ることになるデスク周りでは中々に厄介で、決して無視できない短所です。
デスク周りに充分なスペースがある人にはオススメです。

CANAREは定番中の定番、日本ではアマチュアでもプロでもとりあえずこれ、という不動の業界標準の地位にある国産ケーブルメーカーです。
標準と呼ばれるには単純な音質だけではなく耐久性や入手性、コストなど様々な側面があるため、必ずしも「最高の製品」というわけではありません。しかし優れた製品であることは間違いありません。
値段も価格破壊のクラシックプロを除けば最安クラスですので、大抵の場合はこれを選んでおけばいいでしょう。

最後にBELDENです。カナレが日本の業界標準ならBELDENは世界標準といってもいい大手ケーブルメーカーです。
価格はカナレよりちょっと高めということもあり、ローエンド狙いの人には積極的にオススメできる材料に欠けます。何らかの理由でカナレを選ばなかった人の選択肢。
筆者はカナレのケーブルの手触りがなんかイマイチ好きになれないのでベルデンを使っています。そんな理由だっていいじゃない、趣味だもの。


USBケーブルは普通のでいいんじゃない?

さてもう1方のケーブルであるUSBケーブルですが、正直まともなメーカーの製品ならどれを選んでもさほど影響は無いのではないかと思っています。
オーディオインターフェースからPCへの信号はXLRケーブルとは違いデジタル信号であるためです。

オーディオ専門店ではアナログケーブルと同じく、目玉が飛び出るほど高いUSBケーブルが販売されています。
が、私としては効果には懐疑的です。
理由としては「ノイズの混入でデータの整合性が失われるならば、USBケーブルによる通常のファイル転送でもっとデータの破損が起きるのではないか」という点があります。
もちろん個別のファイル転送とリアルタイムな音声データの転送が全く同じとは思いません。
しかし長くPCを使っていますがデータ転送中の破損など一度も起きたことがないので、ここを厳密に保護する必要はあまりなさそうだ、と言うのが私の個人的な考えです。

ただし、100均のUSBケーブルの中でもデータ転送ができるものとできないもので分かれているように、ケーブルの品質によって全く差がないというわけでは無いでしょう。
PC自体がノイズの発生源ですので、適切なシールドが施された充分な品質のUSBケーブルを使うことは必要だと思います。

デジタルでも長さは最低限に

USBケーブルは規格によって長さの上限が定められています。
オーディオインターフェースで主流のUSB2.0は5mまで、USB3.0は1~3m(速い規格ほど短くなる)だそうです。
実際のところは十分な品質のUSBケーブルを使用していれば、上限を超えた長さでもさほど速度は落ちない、という検証結果を出しているところもありました。
逆に言えばケーブルの長さが適切ならデータの整合性はほぼ保証されるということでもあります。
オーディオインターフェースはそうそう動かすような物でもないので、なるべくケーブルの引き回しが短く済む置き場所を確保しましょう。

セルフパワーのUSBハブはあってもいい

少しケーブルの話題からは外れますが、セルフパワーのUSBハブはノイズ対策として一定の効果があります。ただし、私が効果を確認したのはオーディオインターフェースではなくUSB電源のPCスピーカーですが。

一般的なUSBハブはバスパワー型と呼ばれ、PCのUSB端子から電源をとります。
一方、コンセントから電源を取るタイプのUSBハブがあります。それがセルフパワー型のUSBハブです。
こちらはバスパワー型に比べて電力供給が安定し、消費電力の大きい機器を複数つなげたときの安定性が高いことが利点とされています。

私の確認した事象ですが、USB電源のPCスピーカー(ロジクールのZ120)をPCのUSB端子に直接繋げると、常にブーンという低いノイズが乗ります。
同じスピーカーでセルフパワーのUSBハブから電源を取ると、そのノイズが消えてクリアな音声になります。
全てのPCのUSB端子でノイズが発生するとは思いませんが、USB端子由来のノイズは確かに存在はすることがわかります。
セルフパワーのUSBハブはその対策の一つになる、ということは覚えておいて損はないと思います。音楽以外にも使えますし。

余談ですが、1部のオーディオインターフェースはUSB端子直のバスパワーだと電力が足りないと言われているものがあります。
TASCAMのUS-2x2がそれに当たると言われていましたが、あくまで複数の匿名投稿者の主張であり、明確な根拠は不明です。
ただ「バスパワーでも動くけど外部電源端子もあります」というオーディオインターフェースは存在するので、あながち全くのデタラメではないのではないかな、とは思います。


あとがき

以上、ケーブル編でした。あまり長くはならない、とはなんだったのか……
なるべく簡潔にまとめたいとは思っているのですが、書いているうちにあれもこれも詰め込みたくなってしまうのは悪い癖です。
次回はマイク編。これは長くなるぞ。
懲りずにお付き合いいただけたらうれしいです。
拙文ではありますが、あなたの機材選びの一助になれていれば幸いです。


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