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「地元、何もない」はもう言わない

愛される名店、を愛する人たち

友人がメンバーのひとりとして活動しているユニットCHI&MEが、地元豊橋市の老舗を特集する冊子『愛される名店 豊橋駅前エリア』を刊行し、市内で配架しているそう。豊橋に足を延ばすことがなかなかできないので、オンラインショップで興奮気味に注文し手に入れた。
冊子は、「ひとつひとつのお店の魅力を掘り下げ、捉え、再編して発信する」というメッセージから始まる。丁寧な取材によって各店が紹介されていて、製作メンバーのワクワクとまちを愛する気持ちがひしひしと伝わってくる。冊子のデザインや手触りは、歴史の積み重ねがつくる風格と、地域に愛される親しみやすさが共存する老舗名店の雰囲気を伝えているようで、モノとしてずっと手元に置いておきたいと思わせてくれる。これは単なるガイドブックではなく、まちの魅力の捉え方を問い直すような一冊に思えたし、同世代の人たちがこれだけ質の高い発信をしているということに驚き、ちょっぴり悔しいような気持ちにもなった。

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「地元、何もない」はずない

思えば、地元といってもここに掲載されているお店にほとんどいったことがない(外観や看板はよく覚えていたけど)。小さい頃は家族の行動範囲が自分の全てだったし、多少自由を手に入れた高校生の時も、昔からある喫茶店に入るという選択肢が頭の中になく、チェーンのファミレスばかり行っていた。だからこの冊子を読んだとき、懐かしいというよりはこんな素晴らしい場所と文化があったのかと、新鮮な気持ちになった。

そういうわけで地元を本当の意味で楽しんでいなかった自分は、地元が好きという気持ちはなんとなくあっても、会話の空気に任せて「あそこ何もないんだよね」と言ってしまうことがあった。堂々と地元自慢する人を、羨ましいような、眩しすぎるような目で見てしまう。だけどズレていたのはむしろ自分のほうで、地元にいながらそこで何も見ていなかったんだと、今更ながら気づく。今住んでいる東京の街が好きと胸を張って言えるのは、ここが地元より優れているからではなく、自分自身がまちの楽しみ方を知ったからだ。愛する店があり、景色があり、人がいるからこのまちが好きで、だから今日も頑張れる。皆の地元も今住む街も、何もないはずないんだと伝えたい。

冊子冒頭にもあるとおり、豊橋駅前エリアは新しい開発が次々進んでいるみたいだ。自分は今の仕事上、どちらかといえばその開発側で計画・設計等の仕事をすることが多いが、新規開発と古き良き老舗の二項対立を乗り越えて、CHI&MEの皆さんの活動のように、愛着の湧くまちづくりにかかわっていけたらと思う。

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〈おまけ〉 名古屋は何もない?

この文章を書いているとき、「名古屋は何もない、つまらない」という内容で読む人を煽り、PV数を稼ぐ記事がちょっと話題になっていた。曰く、「工業の街なので文化的なものは存在しない」らしい…。反論するとライターの思うつぼな気がするので控えるが、名古屋に住む人たちが名古屋のことを自虐しがちであり、それによってさらに外からの名古屋批判を招いている状況は本当にもったいないことだと思う。だって、名古屋をディスっている人たちにもたいてい通い詰めているお店や、疲れを癒してくれる風景があって、それをインスタに投稿していたりする。その気持ちを捉えなおすことが、街の魅力を高める好循環を生み出すための一歩になると信じている。だからみんな、もっと自慢しよう。

冊子の感想を書くつもりが、結局自分語りになってしまってごめんなさい。
『愛される名店 豊橋駅前エリア』、本当に素晴らしくて、無料配布なのが信じられないクオリティです。気になった方はぜひ!

※豊橋の写真が見つからず、今回は東京の写真を使いました。好きな風景。

これからもがんばります。