【エニアグラム】自分のタイプを間違えてしまう理由

エニアグラム・ファシリテーターの高橋あけみです。

エニアグラムで、最初からすんなりと自分のタイプが見つかる方はそれほど多くありません。大半の方はすぐにタイプが定まらないか、違うタイプを自分のタイプだと思いこんでしまいます。

自分のタイプを間違えること自体は悪いことではありませんし、すぐにタイプが見つかる方が優れているというわけでもありません。

とはいえ、いつまでも自分のタイプを勘違いしたままだと、自分自身を深く理解したり、本当に必要な課題に取り組んだりするのが難しくなります。

そこで今回は、自分のタイプを間違えてしまう理由と、タイプを見つけるために必要なことをお話ししてみたいと思います。

自分のタイプを間違えてしまう理由

タイプを間違える(誤認する)理由は、いくつか考えられます。
誤認するときは、だいたい次のうち一つまたは複数の要因が関わっています。

▼家族や身近な人の影響を受ける

家族や仲の良い友人、尊敬する人などは、自分の考え方に大きな影響を与えます。特に、親のタイプや、家族全体で共有している価値観は、人格形成に深く関わってくることがあります。

たとえば自分がタイプ6だったとしても、タイプ8の父親が「強くなくてはいけない」という教育をしていたら、自分のことをタイプ8だと思いこむ可能性があります。

どのタイプも他の人の影響を受けますが、特にタイプ3、タイプ6、タイプ9は周囲の価値観を自分の中に取り込みやすい傾向があります。

▼環境や職業の影響を受ける

周りの環境や、職業からくる信念が、タイプの判別に影響する場合もあります。たとえば、次のようなケースがよく見られます。

  • 芸術に関わる仕事や趣味をもっている人が、自分をタイプ4だと思う。

  • 研究やエンジニアの仕事をしている人が、自分をタイプ5だと思う。

  • 看護や福祉、教育など人を支援する仕事をしている人が、自分をタイプ2だと思う。

  • 競争が多く、成果を求められる職場にいる人が、自分をタイプ3やタイプ8だと思う。

看護師が全員タイプ2というわけではありませんし、芸術家が全員タイプ4というわけでもありません。仕事上の自分だけでなく、家庭での自分、友人といるときの自分なども含めて見ていくことが必要です。

▼「こんな自分でありたい」という願望を投影する

誰しも、自分のことを実際よりも良い人間だと思いたいという欲求があります。

そのため、「こんな自分でありたい(きっとこんな自分であるはず!)」という理想像が、診断テストの結果などにも反映されてしまうことがよくあります。

心の中の願望をいったん脇に置き、「自分が実際にとっている行動」に着目することが大切です。

▼自分の嫌な部分を認めたくない

エニアグラムでは、自分のタイプの健全な資質とともに、陥りがちなパターンや取り組むべき課題なども知ることになります。

自分のタイプの抱える課題は、まさに自分にとって最も肝心な急所であるため、正面から認めるのに少なからぬ勇気が要ります。「いや、自分にはそんな部分はない!」と思わず否定したくなることもあります。

それだけに、自分を守ろうとして無意識に他のタイプを自分のタイプだと思いこむことがとてもよく起こります。

他のタイプだと思いこんでいれば、自分の本当の課題から目を逸らしていられるので、気が楽ですし、安全です。

案外、「このタイプだけは自分のタイプであってほしくないなあ」と思うものが自分のタイプであったりもします。特定のタイプの記述を読んだとき、なにか強い嫌悪感や苛立ちをおぼえるようであれば、自分がなぜそう思うのか探求してみる価値があります。

▼「自分はこんなに〇〇じゃない」と思う

自分のタイプの記述を読んでも(本当はそのタイプなのに)「自分はこんなに〇〇じゃないなあ」と思うケースがあります。

たとえば、次のパターンは比較的よく見られます。

  • タイプ1が「自分はこんなに真面目でしっかりしていない」と思う

タイプ1は自分に厳しく、高い水準を求めます。真面目すぎるゆえに自分のわずかな怠惰や適当さが気になり、「自分はそこまで真面目じゃないんだけど・・・」と思っていることがあります。何人かの人たちに「私って真面目だと思う?」と聞いてみることが役立ちます。

  • タイプ4が「自分はこんなに芸術的じゃない」と思う

タイプ4はもれなく自分を表現することに惹きつけられますが、実際に芸術分野で成果を残せるタイプ4は(他のタイプと同じように)一握りです。自分を十分に表現できる術を見つけられないタイプ4や、自分の芸術的才能に自信のないタイプ4は、上記のように思う可能性があります。

芸術に携わることの背景には、それぞれのタイプ固有の動機があります。たとえばタイプ2であれば自分の作品を通して愛や励ましを伝えたいと思い、タイプ7であれば人を楽しませたり喜びを表現したいと思います。タイプ4にとって芸術は、内面にうずまく感情を昇華する手段であり、自分の心の中の在りようを誰かに知ってもらう方法です。

  • タイプ7が「自分はこんなに明るくハッピーな人間じゃない」と思う

タイプ7には、明るく楽しげなイメージがあるかと思いますが、「場の中心でみんなを盛り上げる」といった典型的なイメージがあてはまらないタイプ7の方は、結構います。

内向的に見えるタイプ7もいますし、楽しさよりも社会的意義を求めて仕事を選ぶタイプ7もいます。内面の不安や恐れといった否定的感情をよく自覚しているタイプ7もいます。

また、タイプ7の気晴らしの手段が、遊びに出かけたり場を盛り上げたりする外向的な行動の場合もあれば、ゲームをしたり漫画を読んだりするインドアな趣味の場合もあります。重要なのは、「痛みに留まりたくない」という根元的恐れに基づいているかどうかです。

▼線でつながっているタイプに誤認する

「線でつながっているタイプ」とは、「隣のタイプ(ウイング)」「統合の方向のタイプ」「ストレスの方向のタイプ」です。

これらのタイプは状況に応じてよく表れるので、誤認するケースが多くなります。

  • ウイングのタイプだと思いこむ

自分の隣のタイプを「ウイング」と呼びます。たとえばタイプ3の方であれば、タイプ2かタイプ4のどちらかが自分のウイングであり、メインであるタイプ3の次に強く表れます。そのため、隣のタイプを自分のタイプだと思いこむことがしばしば起こります。

  • 統合の方向のタイプだと思いこむ

統合の方向(数字はタイプの番号)
1→7→5→8→2→4→1
9→3→6→9

成長するにつれて、統合の方向のタイプの「健全な資質」が表れてきます(これを統合と呼びます)。
また、自分が安全だと感じられる状況においては、統合先のタイプの「通常の資質」を表すことがあります(セキュリティポイントと呼びます)。

そのため、普段から統合先のタイプのような行動をよくとっている場合、そのタイプに誤認する可能性があります。
(例)タイプ2が自分のことをタイプ4だと思う。

※なお実際は「統合」しつつある人というのはかなり稀であり、多くの場合は「セキュリティポイント」として「通常の資質」が表れているはずです。

  • ストレスの方向のタイプだと思いこむ

ストレスの方向(数字はタイプの番号)
1→4→2→8→5→7→1
9→6→3→9

大きな不安やプレッシャーのかかる状況では、ストレスの方向のタイプの「通常~不健全な資質」を表すことがあります。そのため、ストレスの方向のタイプに誤認することがあります。
(例)タイプ2が自分のことをタイプ8だと思う。

※各タイプの「統合の方向」「ストレスの方向」については、こちらの記事もご覧ください。
※各タイプの「セキュリティポイント」については、こちらの記事もご覧ください。

自分のタイプを見つけるには

自分のタイプが分かるときというのは、確かに腑に落ちる感覚があります。「そうそう、まさにこれが私の思っていたことなんだよ!」という驚きや嬉しさ、あるいは昔の友人に再会したような懐かしさがあります。人によっては、恥ずかしさや、きまりの悪さがあるかもしれません。自分のあまり見たくない部分を認めるのは、勇気のいることでもあります。

では、どのようにしたら自分のタイプが見つかるのでしょうか。

ここでは、タイプを見つけるための指針を3つお伝えしたいと思います。

1.普段の行動や、その背景にある動機を観察する

自分のタイプを見つけるには、「こうしたい」「こうできたらいいなあ」という願望ではなく、自分が実際にどんな行動をとっているかに着目することが大切です。

同時に、「自分がなぜそれをしてしまうのか」「自分はそれをすることで、何を手に入れたいのか」という動機を考えてみることが役立ちます。

人間の行動の大半は、無意識の欲求や恐れに基づいています。「自分は何を欲しているのか」あるいは「何を恐れているのか」を問いかける習慣をもつようにすると、自分自身に対する気づきがとても深まります。

2.信頼できる情報源にあたる

自分のタイプを探すために、ネット上のさまざまな診断テストを受けられる方もいます。楽しみのために受けるのであれば別ですが、自分のタイプを本当に見つけたいのであれば、私はこのやり方をお勧めしません。

理由としては、どんなによくできた診断テストであっても、そもそも自分のことを的確に捉えられていなければ正しい結果が出ないためです。(なので自己観察がもっとも大切になります)

またその結果というのは、あくまでも数字にすぎません。数字をいくら眺めても、「自分のタイプはこれだ!」という心からの納得感は得られないためです。

(個人的には、診断テストは最初に数回受ければ十分だと思っています。私のおすすめはRHETIというテストと、こちらの書籍の中で受けられるTASというテストです。)

それよりも、リソ&ハドソンの書籍など信頼できる情報源にあたり、「ああ、まさにこれが自分だ!」という一文に出会うまで読み込むことをお勧めします。その一文は根元的恐れかもしれませんし、人間関係についての記述かもしれませんし、もっと何気なく書かれた一言かもしれません。

その上で、タイプの傾向が自分に本当に合っているか、さまざまな角度から確かめることも必要です。タイプの基本的な特徴だけでなく、人間関係の築き方や幼少期のパターン、ストレス時の動きは自分のとっている行動と合致しているでしょうか。どこか違和感があるなら、別のタイプである可能性も検討してみる必要があります。

3.客観的な意見をもらう

自分をよく知る人や、エニアグラムの専門家から、客観的な意見をもらうことも大切です。周りの人は案外、「自分の知らない自分」を見てくれているからです。

なお、タイプ4やタイプ5、タイプ8はあまり人に意見を求めないか、意見されても耳を貸さない(最終的に自分で判断するのが当然だと思っている)傾向があります。人に意見を聞きたくないと思う方は、その理由は何なのか探求してみると、気づきがあると思います。

一方、タイプ6の中には、自分でタイプを決めきれず、他の人にタイプを決めてほしいと思う方がいます。そうでなくても、「私のタイプって何だと思う?」と人に意見を求めることが比較的よくあります。自分のタイプを誰かに決めてほしいと思う方は、その気持ちがどこから来るのか探求してみることをお勧めします。

おわりに

今回は、自分のタイプを間違えやすいケースについてお話ししました。もっと細かく取り上げればいろいろあるのですが、とりあえずよくあるパターンをまとめてみました。

繰り返しになりますが、自分のタイプを間違えるのはよくあることですし、けっして悪いことではありません

自分のタイプを誤認するのは、そのときにそのタイプの傾向や課題が強く表れていたということであり、むしろ貴重な気づきです。自分のタイプが定まること自体も重要ですが、タイプを探求する過程で得る発見も大事にしていただきたいなと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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