えんむすび喫茶館 第9章

【覚醒】

糸は雅子の思いに応えたかった、
しおらしさと裏腹に
情熱さが覚醒したのだ。

「糸さん、お嫁さんに行く前のお嬢さんと2人きりになる事はよろしくないから、」
実は糸を諭す。

糸はなんで誠実なお方なのだろうと
惚れ直す。

「1分アトリエを拝見する時間
いただきたいです。直ぐに帰ります。
私も将来洋服のデザインをする仕事をしたいので勉強の参考にしたいのです」
糸の言ったことは口実ではなく事実である。

「わかった、本当に1分だけだ」
実は糸の望みに応えた。

糸は実の広い背中の後ろを歩いている。

なんて幸せな事だろう

「ここだ、1分だけだ、観ておいで。
僕はここで待っている。」
ドアを開けた。


目の前に広がる沢山の様々の大きさの
作品に糸は驚きを隠せなかった。

風景画、静止画、人物画
どれも独特で圧倒された。

実への恋心はどこまで惹かれるのか
制限がない、無限の世界に
飛び込んでしまったと
初めての恋に戸惑う

「糸さん、1分だ、さあ帰ろう、送るよ」

実はとても誠実であった。その誠実さ、
家族への配慮、素晴らしい人間性であるから
朝友家の肖像画を描く事に選ばれたのだなと
糸は理解していた。

「はい、ありがとうございます。」

朝友家に着いた。


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