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海外ひきこもり旅

はじめに

一人旅に出るからには、徹底して出会いを避けながら過ごしたい。

海外旅行が好き、というと「アクティブですね」「各地のおいしいもの、楽しみですね」「素敵な出会いがあったりとか」といった声をかけられることが多い。実際、国内海外を問わず旅行の一般的な醍醐味は、風光明媚な景色を目に地元の食材をふんだんに使った料理に舌鼓を打つといった、その土地ならではの体験を味わうことだ。その場所の歴史やしきたりに興味を持つのであれば、現地に暮らす人の生活を垣間見るのも一興だろう。通常の旅行であれば私もそうするかもしれない。

ただ、今回は一人旅だ。

私にとっての一人旅は「海外旅行」という言葉から想像されるような、楽しくて明るくて豊かなものではない。自分の暮らす国で、自身の手で作り上げてきた尊く大切なしがらみからとにかく逃げること。自国に生きていると自動的に働いてしまう感覚のすべてを塞ぐこと。それが目的だ。

この間、私は私の内側のことにしか関心がない。関心が持てない。何かしらに興味を持っているように見えたとしたら、ことがらそのものではなく、それによって喚起された自身の変容に心を動かしているだけだ。

そんなとき、見知った言語圏の外にある言葉の渦に身を置くと安心する。関心と無関心の間で生まれる最低限の会話に確かさを覚える。目の前で何が起こっても、反応の有無や程度は自身に委ねられていることを思い出すことができる。

このような弱く甘い考えのもと、私は3ヶ月間の旅をする。きっと誰とも知り合わない、適当なものを食べるし、観光も特にしない。ただ、これまで(必要の有無は置いておいて)何か誰かのためにと過剰反応・適応させてきた感性の振り幅を落ち着かせる助けにはなると思う。

今回行くのはヨーロッパ

3ヶ月間の舞台は主にヨーロッパだ。
モロッコから入り、ポルトガル、イングランド、フランス、イタリア、ポーランド、チェコ、オーストリア、ドイツと回る。その途中で考えたことを適度に書こうと思う。時間は山ほどあるから。

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