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この破滅的で美しい恋を魂に刻め【作品レビュー:宮澤くんのとびっきり愚かな恋】



おはようございます、EnJuです。
noteにおいて初めての作品レビューです。稚拙な文になってしまうと思いますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。


作品紹介:宮澤くんのとびっきり愚かな恋


今回、紹介させていただく作品は、中西鼎先生:著ぽりごん。先生:イラストの『宮澤くんのとびっきり愚かな恋』です。
なぜ、この作品を初めてのレビュー作品に選んだのかと言うと、

私が人生で初めて、読んで心身にダメージを負った作品だからです

 これは一つの復讐かもしれません。しかし、この素晴らしい作者様やイラストレーター様に危害を加えるつもりは毛頭ありません。それでも、この心と身体の痛みをどう解消すればいいのか。そこで考えました。

レビューを書いて心のもやもやを発散し、他の人にも同じ気持ちになってもらおう

この作品はXのTLに流れてきた感想ポストで目にしました。その感想を読むだけでもダメージを受けました。しかし、こんなにも自分が読みたいと思っていた理想的な作品を見逃すのは絶対にダメだと思い、電子書籍の方で購入させていただきました。
 最初の自己紹介でも述べさせていただきましたが、私は多くのジャンルの中でもラブコメがトップクラスに好きです。そして、その中でも好きなジャンルがBSSです。
 まず、BSSについての紹介をさせていただきます。
 BSSとは、[僕(B)が先に(S)好きだったのに(S)]の略称です。意味としては、恋愛において、片思いをしている意中の女性を他の男性によって取られてしまう、というシチュエーションです。派生として、女性目線のWSS(私が先に好きだったのに)が存在します。
詳しくはピクシブ百科事典に記載されているので、興味を持ちましたらぜひ読んでみてください

主に、R18作品で見られるジャンルですが、最近では全年齢作品にもそのような描写が増えています。
 今回紹介させていただく『宮澤くんのとびっきり愚かな恋』、略して『とびかな』ですが、BSS描写がかなり強いです。好きなジャンルと言っておきながら、読み終えたあとは心を抉られ、現在は胃痛と闘いながら、このレビューを書いています。これまでも多くの作品を読んできましたが、こんな経験は初めてです。ここで語る予定はありませんが、過去の自分に近い経験があったことが理由の一つかもしれません。



作品のあらすじ

昔好きだった幼なじみのアイツは、今はビッチになっていた――。

小学生の時からの幼馴染・藤代瑠音(ふじしろ るいん)は、誰だって自然と振り返ってしまうような美人だ。突き抜けるように快活で、いつでもオシャレで、みんなの注目のギャル。そして――自他ともに認めるビッチだ。常にセフレがいて、昨日も駅前でイケメンとイチャついているのを目撃した。
一方の俺こと宮澤恆(みやざわ わたる)といえば学校の日陰者で、今や瑠音とは全然縁もなくなっていたのだが……。
「ねえワタ。私たち、付き合わない?」
俺と君が? いやいや、それ絶対に裏があるじゃん。そう思いつつ、かつての初恋相手である瑠音からの告白をつい受け入れてしまい――。
性に奔放な彼女と過ごす、青くてちょっぴり危険なラブストーリー。

Amazon商品ページより

どうです?

あらすじの時点でもう危ない香りがしていませんか?ビッチセフレギャル、もう単語のそこら中に剣山が立っているでしょう?下ネタというよりも、そのキャラを表す言葉としてこれらの単語を羅列されれば、R18作品なんじゃないか?と思わせるものです。この作品を読み終わっては、R15あたりなんじゃないかなと思います。しかし、私がダメージを受けたのはその描写ではありません。それはまた後で書かせていただきます。
では、続いてキャラ紹介に入りましょう。

登場人物

こちらでは主役となる二人のキャラについて、私の感想を交えながら紹介していきます。

主人公:宮澤恆(みやざわ わたる)
あらすじでもある通り、舞台において彼は陰キャと言われるような、自分に自信がなく、陰気でネガティブに考えがちな男子高校生です。物語の中の会話でも、その片鱗が多く見られ、ヒロインの藤代瑠音から嗜められるシーンがあります。まだ1巻のみの刊行なので、主人公がどうなるかわかりません。
彼は、ヒロインとは幼馴染で小学6年では元恋人でもありました。しかし、ヒロインの倫理観がおかしいと思わざるを得ない小さくて大きな事件が起きます。それが原因で彼は、この性格になってしまったんじゃないかと思います。そして、そんな彼の性格によって大きな問題が発生してしまいそして……ハッピーエンドが好きな私としては、いつか報われてほしいです。

ヒロイン:藤代瑠音(ふじしろ るいん)
ビジュアルは青髪でショートカット、スレンダーで健康的なその身体、かわいらしい顔、そして、誰にでも明るくフレンドリーなコミュニケーションが取れる性格、その余りある魅力は多くの男性を魅了してきたことが想像に難くないでしょう。
端的に言いましょう、彼女はビッチです。とんでもないビッチです。そして、面食いでイケメンには目がなく、性に奔放でこれまでにも年齢や職業もさまざまな多くの男性との交際経験だけでなく性交経験があり、それでいてセフレもいる。まごうことなき、ビッチです。ストーリーの始まりのきっかけとなる主人公との交際のきっかけも、恋人に浮気を疑われている(実際に浮気している)セフレとの関係を続けたいからという理由です。
そんな、本当に倫理観があるのか?と思える彼女にもちゃんと信念はあります。そこがこの物語の根幹を担うことは間違いないでしょう。
また、彼女の名前のルインには『破滅』という、なんとも不穏な意味が……

この二人の他にも、ヒロインのセフレ、主人公の親友である女生徒もいます。この二人は恋人関係で、主人公の親友はセフレのことを最初は知っていませんが、この二人との関係が絡まり合い物語を大きく動かしていくのですが、そこはぜひ本誌で……

では、感想に入ります。ネタバレも含みますのでご了承ください

感想

こちらの作品のを読んだ感想ですが……

こんなはずじゃなかった……


なんでこんな風になってしまったのでしょう。好きなジャンルかと思って飛び込んだ先にはマグマがありました。先述のとおり、私はこのレビューを書きながら胃痛と戦っています。ショックを受けた大きな理由の一つとしては、
彼の性格は私と重なる部分が多くあり、これまで読んできた作品の中でもトップクラスで感情移入してしまったこと
その生々しいBSS描写で主人公はショックを受けていましたが、同じくらい私もショックを受けました。このBSS描写の中でも特にショックだったのは、性行為ではありません。目の前で行われるルインと他の男とのキスです。読むだけで音が聞こえてくるような官能的な文、特にヒロインの瑠音がビッチであることも相まって、それは甘くて、濃厚で、妖艶であることが容易に想像できました。目を瞑っていても頭に浮かび上がるくらいには脳に焼き付いて離れません。
ですが、こんなにもショックを受けたのにもまた別の理由があります。それは、

私が藤代瑠音に恋をしてしまったことです


恋と言ってもガチ恋ではありません。二次元のキャラとしてです。そのビジュアルと性格は、ビッチであるというマイナスがあったとしても、おつりがくるくらいには私にとって魅力的だったのです。BSSというジャンルは、ヒロインが主人公以外の男に言い寄られて取られてしまう、というのが多くあるパターンですが、ルインの場合は違います。彼女がビッチで魅力的あるが故に、男を惹きつけ性行為へ繋がってしまうのです。原因が相手の男にあるのではありません、ヒロインにあるのです。そんなの主人公目線からすれば、止めることもできないじゃありませんか。そこが私に絶望を与えたポイントの一つです。
ここまでのショックは初めてで本当に苦しいです。読み直すのも怖いくらいです。頭に焼き付いて離れないほど、ルインに恋をしてしまったのです。脳が破壊されるという表現がありますよね。私はその言葉を安易に使っていましたが、この作品で初めて『脳が破壊される』というのを体験しました。こんな感情を持つことは最初で最後だと思います。あるとすれば、この作品の2巻以降でしょう。
この物語の一つのキーワードとなっているのは『上書き』だと思っています。プロローグで描かれるルインとセフレとの情熱的なキス、主人公のトラウマの原因となった、付き合って数日後に見せつけられた他の男児とのキス、主人公とルインとの愛のある性行為、自分がセフレの代わりになれないかとルインに打診する主人公、自分が主人公を陽キャに変えるまで育てるというルインの発言、ルインとセフレのメッセージを見てしまった親友のショック、そして、親友がルインに対して送る復讐
改めて書いてみるとこんなにもありました。どれを取ってもNTRやBSSという言葉だけでは片付けることができない複雑なものばかりです。自分の気持ちや思い出を他人に汚されるような上書き、その繰り返しによって登場人物たちの負の感情が廻ってしまう。特にルインが主人公を変えるという発言は今の主人公を否定したい部分があるということを暗に言われてるように感じ、キツイ部分がありました。ありのままでは愛することはできないと言われているようで。
どの登場人物もどこか暗いものがあって、さっぱりとした爽やかな気持ちでいることができない、読者である自分でさえも。
しかし、これも一つの青春の形であることは間違いありません


ここまでは私に衝撃を与えた感想でしたが、物語の面白さはあまり伝わっているのか不安なので少し物語の根幹に触れましょう。
人物紹介でもあったように、ルインは大きな問題を抱えています。一つはビッチであること、もう一つはルインの闇となる部分……そこに主人公の恆が触れるというときに……そこには泥沼よりも深く、醜いものが見えた気がしました。
周りがルインをそうしているのか、それともルインが破滅を呼び寄せている……その破滅の道を歩もうとしているのか。個人的には後者だと思っています。
タイトルは主人公のみを指していますが、二人とも愚かなのです。いや、みんな愚かだ。でもみんな、ゴールまでの長い長い遠回りをしている最中なんじゃないかなと思います。そんな一つの破滅の愛の物語だと思いたい。
彼らの中には僅かながらもの片鱗が見えた気がしました。最後のシーンでそれはわからなくなりましたが……この作品は、二人の愛の欠片をゆっくり集めて形にしていくまでの物語なのかなと、勝手に考えてます。いや、単なる私の願望かもしれません。
彼らに待っている結末は『幸せ』か、はたまたルインの名の通り『破滅』か

個人的に、これからの展開に期待することは、これまでのルインの恋愛遍歴や性癖について、4人の関係はどのように混じり合い、問題を解決に向かっていくのか、そのまま深くまで引きづられていくのか、これからさらにルインと関わる男が増えるのか、などです。これからの彼らの物語に期待しています。


最後に

作品を読み終えた後からこのレビューを書き起こすまで、胃痛に悩まされていたのですが、現在は少し解消しました。20年以上私として生きてきて、このようなことは一切なかったのでほんとに素晴らしく憎らしい、愛憎渦巻く素晴らしい作品だと心の底から感じています。

この作品を読んで私が思い知らせられたことは、私には確固たるがないことでした。自分の中にある愛を見つけようとしましたがそこにあったものは虚無でした。

これほどの体験を味あわせてくれた作品とキャラクターを生み出してくれた中西鼎先生ぽりごん。先生には感謝を。今回は電子書籍にて買わせていただきましたが、紙の本でも買わせていただきます。
またこの二人の物語を読むことできることを心の底から願い、気長に待たせていただきます。あとコミカライズもして欲しいです。

二人の未来に幸あれ。

初めてのレビューということもあり、日本語の使い方がおかしい部分があったかもしれませんが、そこは目を瞑っていただけると助かります。
こちらのレビューは、作品を読み返したあとにまた追加するかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
EnJuでした。


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