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【経営戦略本部・柴田耕治】オンライン授業のメリットを生かし、やる気に火をつける

講師と生徒がチームになることが重要

コロナ禍で塾にも変化や対応が求められる中、全教研でもオンラインを活用したさまざまな取り組みが行われている。経営戦略本部の一員であり、オンライン授業の中心人物として新たな教育方法を模索する柴田先生に、今後の展開やこれからの時代の塾のあり方について聞いた。

雰囲気のいいクラスほど成績が伸びる

−柴田さんは小・中学生の授業を担当されていますが、教室の運営においてどんなことを心がけていますか?

チームをつくることです。全教研は「個」を大切にする塾ですが、一人一人の成績向上を個別に考えても、一人の限界か、その80%くらいしか結果が出ないんですよ。その子にミラクルを起こそうと思ったら、チームにならないと無理ですよね。

−具体的に何が変わってきますか?

チームができると、私たち講師の知らないところで勝手に子どもたちが励まし合うようになります。逆にチームづくりがうまくいかないと、いい教材を知っていても内緒にしたり、勉強しているのにしていないと嘘をついて牽制し合うような、おかしな関係性が生まれることがあります。蹴落とし合うよりも、仲間の頑張りに感化され、互いに高め合う関係性の方が建設的ですよね。実際に、雰囲気のいいクラスほど成績が伸びます。わざわざ塾に通う価値の一つには、チームとして受験に挑めるという点もあると私は思っています。以前、堀口社長に「教育とは何だと思う?」と聞かれたことがあるんですよ。

−直球すぎて難しいですね(笑)。何と答えられたんですか?

堀口社長からは「喉が渇いた時に水を与えるのが教育ではないよ」とも言われ、「では水の汲み方ですか?溜め方ですか?」などと薄っぺらい返答をしたのですが、笑われてしまいました(笑)。「教育とは火をつけることだ」と。昔は塾に行かないと出会えなかった授業が、今はYouTubeで簡単に見られる時代です。ただ知識を与えるだけなら、もう塾である必要はないですよね。いかにやる気に火をつけ、夢中になれる経験をさせてあげられるか。チームの価値は、そこにもつながってくるのではないかと思います。

−チームづくりのために柴田さんはどのような働きかけをされていますか?

無理矢理グループワークをさせるとか、特別なことはしないです。ともに時間を過ごして一人一人を見守りながら、火のつけ方を考えるという感じでしょうか。子どもたちは誰しも成長したいと思っているので、自然とチームにはなってくるんですよね。ただ子ども同士のいざこざや、親御さんの期待が空回ることで生じる誤解などがあると、うまくいかないことが多いです。そういった小さな歪みを解くことも私たちの仕事だと思っています。

新たなオンライン授業の構築

−コロナ禍でオンライン授業が増え、これまでのようなチームづくりがしづらくなったのではないでしょうか?

そうですね。チームをつくる上で重要なのは、「どこどこの学校を受ける」とか、「今日は宿題をどのくらいやった」とか、休み時間に交わされる子どもたちのちょっとした会話なんですよね。オンラインではそれができないので、今夏の実用に向けてバーチャル教室の開設を計画しています。アバター同士を重ね合うと会話ができるようにするなど、もっと気軽にコミュニケーションがとれる環境づくりを進めていく必要があると思います。

−スケジュール管理がしやすく、時間を有効に使えるという点でオンラインのメリットは大きいと思いますが、やはりまだ対面授業の方が有利でしょうか?

教室に漂う緊張感を感じたり、帰りに職員室に寄って質問したり、他の生徒が勉強している姿を見て奮い立たされたり、対面だからこそできることは多々ありますよね。塾に通うことでスイッチを入れる子もいると思います。ただ時代の流れもありますし、部活で時間が割けなかったり、近くに塾がない子などを応援するためにも、オンラインはこれからも一つの柱として大切にしていきます。デメリットをカバーするため、オンライン自習室の利用時間を可視化したり、課題をやる毎にポイントを付与するなど、塾に通わなくても他の生徒の頑張りが伝わるような仕組みを構築したいと思っています。

対面授業の様子

個性を認め、信じること

−チームの一員という意識は心強さにつながりますが、なあなあになったり、甘えが生まれたりする危うさもあるかと思います。

そうですね。だから褒めすぎるのは駄目だと思います。SNSが普及して、子どもたちの承認欲求を満たすために褒めるべきだという考えが広まった時期もありましたが、何でもかんでも褒めてしまったら、褒められ待ちをしてできることしかやらなくなったり、しまいには褒められることにうんざりし始めます。個性や多様性は認めるべきですが、厳しく指導する講師がいれば、それをフォローする講師もいるというように、こちら側のバランスが重要です。適性に応じて役割分担をしながら、講師もチームとなって生徒を支えていく形が理想だと思います。

−嫌われ役の先生も必要ということですね。

ご自分の学生時代を思い返してみてください。「あの先生のあの授業がわかりやすかった。おもしろかった」と、細かく覚えていますか?よっぽど印象深い授業ではないかぎり覚えていないのではないでしょうか。記憶に残るのは、喋り方やキャラクターなど、教えた内容以外の部分。子どもたち一人一人の「個」を尊重した学びを提供するためには、私たち講師の個性も大切なのではないかと思います。

−今、全教研は過渡期を迎えていますが、これからの塾はどういった存在であるべきだと思いますか?

例えば小学6年生に将来何になりたいかを聞いても、決まっている子なんてほとんどいないんですよ。あったとしても変わることが多いし、それでいいと私は思うんです。今の時代、いい大学に行っても人生の保証はないですよね。進学塾である以上、合格実績は当然追い求めるべきですが、「これだったら僕も頑張れる」というような、学ぶことに対しての自信を子どものうちにつけさせてあげることも重要なのではないでしょうか。そうすることで、一生学び続ける時代を生き抜いていける力が身につくと思います。

−では最後に、子どもたちと接する中で、柴田さんが大切にしていることを教えてください。

一番はやっぱり、子どもを信じることですね。どんなに成績が厳しかったとしても、本当に受かりたいという気持ちがあれば、その子は絶対に変わります。頑張れない子は、周囲の大人の何気ない一言が原因でチャレンジできなくなっているだけだったりするんですよ。その子に今必要なことを見極めて、ベストな方法で応援することが、私たち全教研の役目だと思っています。