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【読書】「彼女たちのいる風景」水野梓

一気読みだった。
出産によって主流路線から外されてしまった凜。
シングルマザーとして、やんちゃな男の子を抱え貧困から抜け出せずにいる響子。
週刊誌のサブデスクまで上り詰めがらも、不妊治療がうまくいかない美華。
30代後半の「女」、「妻」、「母」。
役割を背負わされ、反発しながらも生き抜く、三者三様の戦い。

最近出版される本に登場する、今の時代を背負って立っている男女の閉塞感たるや、読んでいて息苦しくなる。
私の勤務先にもワーキングマザーが数えきれないほどいるし、男性でも1年以上の育児休職を取る人もいる。職種によるがしたいように在宅勤務ができる恵まれた環境にいる人たちが多い。会社の規模が大きいので組織として余裕があるのだろう、ここに登場する女性たちのような閉塞感は同僚たちからは感じられない。

これもいつも思う事なんだが、あるテーマを伝家の宝刀のように多様するのも最近の本に多い。そのテーマは、最後上手く丸く収まる水戸黄門の印籠ではないか。
この本にも「ライオンのおやつ」にも同じモチーフが使われている。


読後感は悪くない。
家族との行き違いが少しずつほぐれていくのもいい。
序章のエピソードが早めに推察され、最後には回収されるのもいい。

水野氏の他の作品、「グレイの森」読んでみようかな。

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