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オオカミ少年の真実 その3

この神葉村の名前の由来は、
村の周りに群生する『神の葉』と呼ばれる植物からきている。

この葉をすり潰し、調合してできる薬は、
どんな傷や病気にも効く。
実際、件の僕の骨折も薬をもらい治療した。

そのため、遠くからわざわざ傷を癒しにくる人がいる。
そして、年に数回、この村から都の薬屋へ卸しに行く、
この薬は神葉村でしか作れない貴重なものだ。
だから、とても高値で売れる。

村の人たちは農業もやっているが、
主な収入はこの薬によるものだった。

元々、この村には名前なんてなかった。
地図にすら載ってない、名もなき村だった。

でも、この不思議な薬のおかげでいつしか、
神の葉が生えている村、
「神葉村」と呼ばれるようになったんだ。

ナドレも、この村の噂を聞き、
戦争で受けた傷を癒すために来たみたいだった。
僕が崖から落とされた日に出逢い、
僕の家で怪我の介抱をしてくれた。


そして、気づいたら僕の家に居座っていた。
僕の家は村の外れに位置していたし、
僕はまだ子供だったけど、
両親を亡くし一人で暮らしていたから。

だから収まり方としてはちょうど良かった、

僕もその・・・

話し相手が欲しかったんだ。

だから僕にとってもちょうど良かったのさ。

僕は、両親の記憶がなかった。
亡くなったということは村の人たちから聞いたから、
そうなんだと思う。
流行り病だったそうだ。

両親と一緒に暮らしていたことは、ぼんやりだけど覚えてる。
ただ、肝心なことは、
心の中でいくら目を凝らしても、ピントが合わないんだ。
その輪郭はいつもぼやけていた・・・

お医者さん曰く、
「あまりにショックだったんで忘れてしまったんだろう」と。
無理に思い出す必要もないとも言っていたっけな。
何がショックだったか。さえわからない。

村の人に教えてもらったことは、
僕ら家族は、村の外から引っ越してきた。
村のはずれの家を借りて、
その後しばらくして、両親は流行病で亡くなってしまった。
とのことだ。

うーん、そのことのどこに、
『あまりにショックなこと』が隠されているのだろうか・・・?
もしかしたら、僕がアイツらにいじめられていることに
通じる何かがあるのかもしれない・・・

しばらくして、僕は考えるのをやめた。
そんなことを考えていたって、何も解決しないし、
何かの答えにたどり着けそうな気もしなかった。
そして、村の人は誰も『そのこと』については
答えてくれなかった。


そんな頃にナドレは現れた。
ナドレを新しい家族として受け入れれば、
余計なことを考えなくて済むような気がした。

ナドレは、左腕がなく、右足も不自由だった。
よくそんな体で、険しい山を超えてきたものだ。
だから、家事全般は僕がやってあげた。

ナドレは働けないその分、僕にいろんなことを教えてくれた。

都のことや、戦争のこと。家族のこと。
いろんなことだ。


その4へ続く

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