期間など(日本法に基づく解釈)
「期間」とは、ある時点(始期)から他の時点(終期)に至る継続した時の区分(一定の時間的な長さ)をいう。
起算日には、期間の初日を算入する場合(初日算入)と、
初日を算入しない場合(初日不算入)があります。
日本に所在する当事者と海外に所在する当事者との間で英文の国際契約を締結する場合、
たとえ準拠法を日本法にしていたとしても、
両当事者が、下記のような日本法(民法等)に基づく解釈を共有しているわけではないので、紛争を避けるために、
期間の初日や末日を算入するか否かについては、
including/inclusive 又はexcluding/exclusiveという表現を用いて明確にしておく必要がある。
1. 期間の起算日
(1) 時間によって期間を定めたとき
期間は、即時から起算する。(民法第139条)
たとえば、「労働時間は平日午前10時から午後5時まで」とした労働契約の場合、起算点は、「午前10時ぴったり」となる。(【宅建:権利関係】期間の計算(民法138条,139条,140条,141条,142条,143条) - 4ヶ月で宅建合格できる宅建通信講座LETOS(レトス) (takken-success.info))
(2) 日、週、月又は年によって期間を定めたとき
期間の初日は、算入しない。[初日不算入の原則](民法第140条)⇒翌日から数え始める。
たとえば、「契約解除は、物を引渡してから7日以内にしなければならない」と定めた場合、契約当日(初日)は含めずに、その翌日から7日以内に契約解除しないといけない。
日曜日に契約締結した場合、月曜日=1日目、火曜日=2日目、・・・、日曜日=7日目となるので、次の日曜日までに解除しなければならず、月曜日の午前0時になると、解除できなくなる。(【宅建:権利関係】期間の計算(民法138条,139条,140条,141条,142条,143条) - 4ヶ月で宅建合格できる宅建通信講座LETOS(レトス) (takken-success.info))
たとえば、5月1日の午前9時に、「契約締結後7日以内」に物を引き渡すという契約をした場合、5月2日から起算して、5月8日いっぱい(午後12時)に期間は満了する。
「ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」(民法第140条)⇒初日が午前零時から始まるときは、その日から数え始める。
たとえば、「明日から5日間」という場合、明日はまだ来ていない日なので、午前零時から始まる日となる。そこで、起算日として明日を含めて、5日間を数える。(明日を含めずに明後日から起算するわけではない。)
例えば、4月中に「5月1日から7日以内」と規定した契約を締結した場合、5月1日は午前0時から始まるので、5月1日から起算して、5月1日を算入し、5月7日いっぱい(午後12時)をもって期間は満了する。
(3) 「・・・の日から○日間」の意味
民事訴訟法285条は「控訴は,判決書・・・の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならない。」と規定し,控訴期間を定めている。
この場合の「判決書の送達を受けた日から2週間」とは,いつからいつまでをいうのか?
例えば,ある年の3月1日に判決書の送達を受けたとした場合、2週間は,3月2日から15日までの2週間になる。
つまり,「判決の送達を受けた日から2週間」という場合の「2週間という期間」は,送達を受けた日を算入しないで,その翌日から2週間を数えることになる。
これは,民法140条が「日,週,月又は年によって期間を定めたときは,期間の初日は,算入しない。ただし,その期間が午前零時から始まるときは,この限りでない。」と規定しているからである。(引用元:28 「・・・の日から○日間」・「・・・の日から起算して○日間」 – 弁護士菊池捷男のコラム (securitysite.jp)憲法54条の「衆議院が解散されたときは,解散の日から40日以内に,衆議院議員の総選挙を行・・・しなければならない。」との規定の「40日」も解散の日の翌日から数えることになる。(引用元:28 「・・・の日から○日間」・「・・・の日から起算して○日間」 – 弁護士菊池捷男のコラム (securitysite.jp)
(4) 「・・・の日から起算して○日間」の意味
民法138条は「期間の計算方法は,法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き,この章の規定に従う。」と規定しているので,「法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合」は,初日不算入の原則の適用を受けない。
その「別段の定め」の1つが「・・・の日から起算して○日間」という定めである。
憲法100条は「この憲法は,公布の日から起算して六箇月を経過した日から,これを施行する。」と規定しているが,ここに「起算して」という言葉が使われてる。「起算して」という言葉はその日から期間が始まるという意味なので,「初日を算入している」定めになる。(引用元:28 「・・・の日から○日間」・「・・・の日から起算して○日間」 – 弁護士菊池捷男のコラム (securitysite.jp)
(5) 法令の施行日の定め方
法令の施行日を定める言葉として,例えば「平成○○年4月1日から施行する。」など確定日を定めその日から施行することを表す場合と,公布の日を基準に一定期間が経過した日から施行する旨を定める場合などがあるが,後者の場合の表現として「公布の日から○○日を経過した日から施行する。」という定め方はされない。その理由は,以下のとおり。
すなわち,期間に関する通則である民法140条の本文は「日,週,月又は年によって期間を定めたときは,期間の初日は,算入しない。」と定め,初日不算入の原則を採用しているが,ただし書きで「ただし,その期間が午前零時から始まるときは,この限りでない。」と規定しているので,「公布の日から○日間」と言う場合の「公布」が,通常はありえないことだが午前0時になされたときは,「公布の日から○日間」という場合は初日が算入されることになるので,一般の人には,その法令の施行日が判然としないということが起こる。そこで,そのような疑義を招かないために,公布の日を含むことが明らかな表現つまり「公布の日から起算して○日間」という表現方法がとられている。(引用元:28 「・・・の日から○日間」・「・・・の日から起算して○日間」 – 弁護士菊池捷男のコラム (securitysite.jp)
2. 期間の満了点
(1) 日、週、月又は年によって期間を定めたとき
期間は、その末日の終了(午後12時)をもって満了する。(民法第141条)
たとえば、パソコンの賃貸借契約の期間を「4月1日から5月31日まで」とした場合、5月31日で期間満了となるので、5月31日の23時59分59秒までに返還しないといけない。(【宅建:権利関係】期間の計算(民法138条,139条,140条,141条,142条,143条) - 4ヶ月で宅建合格できる宅建通信講座LETOS(レトス) (takken-success.info))
ただし、期間の末日が①日曜日、➁国民の祝日に関する法律 (昭和23年法律第178号)に規定する休日➂その他の休日に当たるときで、かつ、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。(民法第142条 )(【期間計算|一般ルール・『休日』繰り下げルール】 | 企業法務 | 東京・埼玉の理系弁護士 (mc-law.jp))
たとえば、法人Aと法人Bは、日曜日と祝日はお休みだったとする。そのため、日曜日と祝日にはお金のやり取りをしない慣習であった。この場合、もし、支払い期限日が日曜日であった場合、翌日の月曜日に支払えばよいことになる。(【宅建:権利関係】期間の計算(民法138条,139条,140条,141条,142条,143条) - 4ヶ月で宅建合格できる宅建通信講座LETOS(レトス) (takken-success.info))
民法第142条の「その他の休日」とは(民法第142条 - Wikibooks):
行政機関の休日に関する法律により、一般に以下の日も休日と取り扱われる。(行政機関の休日に関する法律 | e-Gov法令検索)
土曜日
年末年始(12月29日〜1月3日)
その他特別法などの法律で定める日
たとえば、地方公共団体と締結する契約の場合、「民法第142条により「休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。」ことになります。地方公共団体の休日は条例に定めていますが、そのほとんどが、国の休日に当たります。また、各地方公共団体が発足した日を休日としている例もあるようです。このような場合は「その他の休日」に当たります。したがって、休日の翌日が支払期限となります。」(期間の末日が休日に当たるときの支払期限 | 法制執務支援 | 自治体法務Q&A | RILG 一般財団法人 地方自治研究機構)
「取引」とは(民法第142条 - Wikibooks):
広く法律行為を指し、商行為に限定されないと解されている。
【なお、参考】民事訴訟法第95条
期間の計算については、民法の期間に関する規定に従う。
期間を定める裁判において始期を定めなかったときは、期間は、その裁判が効力を生じた時から進行を始める。
期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律 (昭和23年法律第178号)に規定する休日、1月2日、1月3日又は12月29日から12月31日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。
ただし、「時効期間」の計算の場合
→期間計算の『休日』繰り下げルールは適用されない。
※大阪地裁昭和48年9月4日;手形金債権の消滅時効について
※水戸地裁平成21年2月17日;租税の還付請求権の時効について
3. 期日が休日にあたる場合
【判例】過払金返還請求反訴事件(最高裁判決 平成11年03月11日)
貸金の元利金の分割払による返済期日が「毎月X日」と定められた場合にX日が日曜日その他の一般の休日に当たるときの返済期日の解釈
毎月一回ずつの分割払によって元利金を返済する約定の消費貸借契約において、返済期日を単に「毎月X日」と定めただけで、その日が日曜日その他の一般の休日に当たる場合の取扱いが明定されなかった場合には、特段の事情がない限り、契約当事者間にX日が右休日であるときはその翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったことが推認される。
貸金の元利金の分割払による返済期日が「毎月X日」と定められた場合に貸金業の規制等に関する法律一七条に規定する書面に記載すべき「各回の返済期日」
毎月一回ずつの分割払によって元利金を返済する約定の消費貸借契約において、返済期日を単に「毎月X日」と定めただけで、その日が日曜日その他の一般の休日に当たる場合の取扱いが明定されなかった場合において、契約当事者間にX日が右休日であるときはその翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったと認められるときは、貸金業の規制等に関する法律一七条に規定する書面によって明らかにすべき「各回の返済期日」としては、明示の約定によって定められた「毎月X日」という日が記載されていれば足りる。
4.暦による期間の計算
(1) 週、月又は年によって期間を定めたとき
その期間は、暦に従って計算する。(民法第143条1項)
「暦に従う」とは、1月を30日又は31日とか、1年を365日とかというように日に換 算して計算することではなく、例えば、1月といった場合は、翌月における起算日 に応当する日(以下「応当日」という。)の前日を、1年といった場合は、翌年に おける起算日の応当日の前日を、それぞれの期間の末日として計算することをいう。(一括ダウンロード 講本(国税通則法)(PDF/3,272KB))
月又は年の初めから計算する場合は、最後の月又は年の末日が期間の末日になる。
例えば、「4月1日から1か月」の場合、期間の末日は、5月31日となる。(週、月、年を単位とする期間の計算|小島法律事務所|福岡県飯塚市の弁護士 (kojima-law-office.com))
週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。(民法第143条2項)
たとえば、「1月2日から3か月間」という期間の場合、1月3日が起算日であり、4月3日が最後の月の応当日にあたり、期間の末日は4月2日となる。(週、月、年を単位とする期間の計算|小島法律事務所|福岡県飯塚市の弁護士 (kojima-law-office.com))
たとえば、ある週の水曜日に、「パソコンを1週間だけ貸す」という約束をした場合、初日は算入されないので、翌日の木曜日から1週間を数えることになる。つまり、翌週の木曜日が「起算日に応当する日」となるので、その前日である、翌週の水曜日に期間満了となる。つまり、翌週の水曜日の23時59分59秒までにパソコンを返さないといけない。(【宅建:権利関係】期間の計算(民法138条,139条,140条,141条,142条,143条) - 4ヶ月で宅建合格できる宅建通信講座LETOS(レトス) (takken-success.info))
ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、最後の月の末日に満了する。(民法第143条2項但書)
たとえば、「3月31日から起算して1か月」は,応当日である4月31日は存在しないので、4月30日が満了日となる。
たとえば、「1月30日の翌日から起算して1カ月を経過する日」といった場合には、起算日の1月31日に応当する日の2月31日はないので、平年は2月28日、閏年は2月29日が経過する日となる。(意外と知らない「期間」及び「期限」とは | KaikeiZine|“会計人”のための税金・会計専門メディア)
5. 期間の計算が過去に遡る場合
期間の計算が過去に遡る場合には、その起算日が「法定納期限の1年以上前」(徴 法35①)のように、丸1日として計算できる場合を除き、その前日を第1日として過 去に遡って期間を計算する。 【参考法令・通達番号】 通基通(徴)10-1、-2、民法140、143
「の○日前に」という記載の解釈
例えば,会社法299条は「株主総会を招集するには,取締役は,株主総会の日の二週間前までに,株主に対してその通知を発しなければならない。」と規定しているが,この場合の「株主総会の日の二週間前」はいつから数えるのか?
その数え方については,直接の規定はない。
民法138条ないし143条の期間に関する規定は,将来に向かう期間に関する規定だからである。
しかしながら,過去にさかのぼる場合の期間の計算方法についても,これらの規定が類推適用されると解されているので,民法140条の初日不算入の原則が採用されることになる。
また,民法141条の「期間は,その末日の終了をもって満了する。」という規定の適用も受ける。そのため,旧商法の時代の判例ですが,「株総会の招集通知書を発した日の翌日から起算して会日までの間に少なくとも二週間の日数を存することが必要だと判示している(大審院昭和10年7月15日判決)。
すなわち,例えば,平成23年8月31日に株主総会を開く場合は,遅くとも,株主総会会日の前日である8月30日から数えて2週間目である8月16日の前日である8月15日には,株主総会招集通知書を発送しておく必要がある。(29 の○日前に – 弁護士菊池捷男のコラム (securitysite.jp))
6. 税務大学校講本 国税通則法
「~日から」「~日から起算して」
「経過する日」「経過した日」
「以前」「以後」「以内」
「前まで」「後に」
一括ダウンロード 講本(国税通則法)(PDF/3,272KB)